うさぎの健康

意外と知らない うさぎの生理学②

いつも一緒にいるうさぎの体のことを、生理学的に見てみましょう。なんとなくこんなものかと思っていたうさぎの体のしくみも、また違った視点から意識してみることで、うさぎという生体を深く知ることができ、これまでと違った魅力を感じたりするかもしれません。

このページの目次
  1. 口まわり
  2. 消化管

大きな目が頭蓋骨の側面についているので視野が広く、片眼あたりの視野は約170~190度。左右の両目の視野は約360度で、自分の背後までほぼ見えていますが、真後ろは見えていません。ちなみに人間は両目で180~200度といわれています。
被捕食動物であるうさぎはこの視野の広さを生かし、外敵から素早く逃げることができます。ただし、視力としては0.05~0.1くらいと、あまり良くはありません。
また、両眼を使って見える範囲は狭く、約10度ほどしかないので、近くの物はよく見えません。口の下など近距離の物も見えにくいので、落ちている食べ物を探す時なども感覚毛(ヒゲ)に頼っている部分が大きいでしょう。
光への感度は高く、人間の約8倍ほどといわれています。このため薄暗いところでも活動することができ、薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)と言われるように夕暮れ時や明け方に元気に過ごしているのですね。

うさぎは優れた嗅覚をもち、多くのにおいをかぎ分けられます。尿の匂いで他のうさぎのマーキングを識別できるほどです。そのためこげたにおいや強い香りの香水や洗剤・柔軟剤などの強いにおいは苦手なので、配慮してあげるとよいでしょう。
ピクピクとよく動く鼻は1分間に20~120回も動くことがあるそうです。リラックスしている時や寝ている時はゆっくりとピクピク、興奮している時や緊張している時は周囲のにおいを嗅ぎ取るため、高速でピクピクします。欧米ではこの動きを「鼻でウィンクする」と呼ぶこともあるようです。
基本的にうさぎは鼻呼吸をする動物ですが、熱中症や鼻づまりなどでも激しくヒクヒクすることがあるので、普段からの体調観察は大切です。逆に口で呼吸をするような状態は相当に体調が悪いといえ、急いで病院に行く必要があります。

口まわり

上唇裂といって上の唇が縦に裂けているため、犬や猫などに比べて自由に開いたり、閉じたりすることができます。また、人間の倍ともいわれる味蕾(みらい)をもつ舌で細かく味を感じているのだそうです。草ばかり食べていると思われがちなうさぎも実は、味覚が発達したグルメな生き物なのです。ペレットや牧草を買い替えたら食べなくなるとか、嫌いなものは絶対に食べない、といううさぎあるあるも、そういった事情があるのですね。

以前はうさぎはネズミなどと同じ齧歯目(げっしもく)に分類されており、切歯の特徴からは重歯亜目と呼ばれていましたが、切歯が重なって生えるという特徴は他になく、現在はウサギ目として独立しています。
その切歯は1年でなんと10~12㎝も伸びますが、牧草などをかじる際に上と下の切歯をかみ合わせてすり減らすことで一定の長さを保っています。
上顎の切歯は4本で、大きな切歯の裏に小切歯が並んで生えています。切歯のエナメル質は前面は非常に厚く、後面はほとんどありません。硬いエナメル質がある前面は摩耗が遅く、エナメル質がなく削れやすい後面とのバランスによって、鋭くとがった切歯を維持できるのです。
また、うさぎは切歯を身づくろいにも使います。皮膚や被毛の汚れを取ったり毛並みを整える際も切歯が活躍するので、歯を悪くすると不衛生にもつながります。

胎生期にはすでに乳歯がありますが、切歯は出生前に吸収され、生後40日齢までには乳臼歯も永久歯に生え替わります。歯は全部で28本あります。また切歯も臼歯も根尖が開いており一生成長を続ける「常生歯」であるため、歯の伸び過ぎで起こるさまざまな疾患を防ぐためにも、牧草などの繊維の多い食餌でよく咀嚼させることは大切です。
切歯の主な役割は物を噛み切ることで、下顎(かがく・下あご)が左右に動きます。食べていない時もこの動きはみられます。臼歯の役割は食べ物をすりつぶすことで、食べた物をすりつぶすのに適した形状になっています。すりつぶす時も下顎を左右に動かし、下顎臼歯と上顎臼歯の咬合面がこすれ合います。下顎は1分間に最高120回も動くため、このおかげで伸び続ける歯を削ることができます。硬い植物などを食べながらも丈夫な歯を維持するための仕組みなのですね。

消化管

うさぎは基本的に吐くことができません。猫のように毛玉を吐き出したりすることができないため、毛球が胃につまった場合手術で取り除くことしかできません。日頃からブラッシングをしたり繊維質の多い食餌を心掛ける必要があります。

草食動物であるうさぎは消化管の面積が大きく、中でも盲腸はとても大きく胃の10倍もあります。
うさぎの糞には硬く乾いてコロコロ丸い硬便と、柔らかく湿った粘液に包まれ、ぶどうの房のような形をした盲腸便(軟便)の2種類があり、これらは見た目だけではなく成分も違います。硬便は粗く大きな繊維が排出されたもので、盲腸便は盲腸内で発酵した栄養価の高いもの。その盲腸便を再び食べて胃腸で消化する仕組みを食糞といいます。草などの低栄養・高繊維の食餌から栄養を取り込むための仕組みで、後腸発酵動物と言われます。
盲腸便はたんぱく質やビタミンが豊富で、うさぎには必須の栄養源。ドイツ語では盲腸便のことをビタミン便とも呼ぶそうです。食糞は夜中や早朝にかけてが多いことや、肛門から直接食べることなどから、あまり飼い主さんが盲腸便を目にすることはありませんが、肥満や老化、ケガなどで肛門に口をつけることが難しくなっている時や、栄養過多の時などに残すことがあります。盲腸便だけでなく硬便を食べることもありますが、問題はありません。

盲腸便

※奥が深い盲腸便について詳しくはこちらの記事もご覧ください

(参考文献:エキゾチックアニマルの診療指針、うさぎの内科と外科マニュアル、animal specialist)