うさぎの健康

うさぎとホリスティック医療 その2 中医学

「ホリスティック医療」という言葉を聞いたことがある方も少なくないでしょう。では、「ホリスティック」とはいったい何でしょうか。うさぎは環境の変化に敏感であり、ストレスなどとして受けやすい動物なので、特にホリスティックを生かしたケアを知っておくと、心身を穏やかにし、より快適な暮らしを提供してあげることができるでしょう。また飼い主さんにとっても同様です。
書籍『うさぎと暮らす ホリスティックケア』(マガジンランド刊/おくだひろこ著)より、ホリスティック医療について抜粋してご紹介します。

中医学(東洋医学)

中医学

中医学とは中国伝統医学(Traditional Chinese Medicine)の略称で、西洋医学はこれに対する名称です。日本では昔から日本に伝わる伝統医療があり、中医学と合わせて東洋医学とも言います。
中医学は、二千年以上も前から伝えられており、豊富な臨床経験や中国の伝統に基づいた治療を行うもので、鍼灸・漢方薬などの治療法は動物の治療にも効果を発揮しています。

中医学の考え方

中医学ではからだを一つの有機体としてとらえることが特徴です。一つ一つの臓器や組織が各々独立していると考える西洋医学の考え方と違い、それぞれが相互作用しながら大きな一つの集合体を作っているととらえます。
何らかの症状が現れると、その症状に対してだけの治療を行うのではなく、からだ全体の各部を診断し、陰陽説、五行説などの考え方に基づき、病巣から離れた別の部位や臓器とのつながりを持った部位も診察しています。

陰陽説とは

陰陽説は中医学の基本理念である重要な考えです。
陰陽説とは、すべてのことがらは、陰と陽の2つに分類され、このバランスで世の中が成り立っているとする哲学です。
陽の当たる部分は「陽」、陽の当らない部分は「陰」とし、太陽が「陽」ならば月は「陰」、気候の寒暖、方位、からだの内部にいたるすべてのことがらに対し「陰」と「陽」の二つの相対する存在が互いに対立し、影響し合う関係にあると考えられています。

陽の当たらない部分、冷たい、鎮静、沈静、静止、内向的、暗い
地、月、冬、夜、雨、寒さ、水、女、下
陽の当たらない部分、熱い、興奮、昂進、活動、外交的、明るい
天、太陽、夏、昼、晴、暑さ、火、男、上

陰陽のバランス

陰陽説では、陰陽のバランスが崩れた時に病気が発生すると考えられています。
例えば、陰である「五臓」のバランスが崩れ症状が出始めると、「陽」である「六腑」にも影響が出始め病気が引き起こされます。そのため陰陽の調和を保つことが病気を防ぐ基本となるのです。

下半身、体内、筋肉・骨、お腹側、手足の内側、五臓(肝・心・脾・肺・腎)、血上半身、体表、皮膚、背中側、手足の外側、六腑(胆・胃・大腸・小腸・膀胱・三焦)、気
からだの部位の陰陽

五行説

五行説は、陰陽説と並んで中医学の基本理念である重要な考え方です。
中国では昔から、神羅万象は「木・火・土・金・水(もく・か・ど・ごん・すい)」と呼ばれる五つの要素から成り、その要素は互いに変化し、影響し合うことにより新しい現象が起こると考えられてきました。

木・火・土・金・水が意味するもの

「木・火・土・金・水」が大自然をどのよう構成しているのか、そしてその意味することと、からだとの関係を探りましょう。

木(もく)

●イメージ…大地に根付く木
●サイクル…木が燃え火となり、多くの木は土の栄養分を消耗する
●分類される人体…肝臓・胆嚢・筋肉・目
●支えあう関係…火(心臓・小腸・血・舌)
●痛めあう関係…土(膵臓・胃・筋肉・口)

火(か)

●イメージ…赤く熱く燃える火
●サイクル…火は大地の栄養となり、強い火は金属を溶かす
●分類される人体…心臓・小腸・血・舌
●支えあう関係…土(膵臓・胃・筋肉・口)
●痛めあう関係…金(肺・大腸・皮・鼻)

土(ど)

●イメージ…新しい命を育む土
●サイクル…土は鉱石を生み出す山を造り、大量の土砂は水をせき止める
●分類される人体…膵臓・胃・筋肉・口
●支えあう関係…金(肺・大腸・皮・鼻)
●痛めあう関係…水(腎臓・膀胱・骨・耳)

金(ごん)

●イメージ…光り輝く金(鉱石)
●サイクル…金属の鉱脈から水が湧き出て、鋼鉄は木を切り倒す
●分類される人体…肺・大腸・皮・鼻
●支えあう関係…水(腎臓・膀胱・骨・耳)
●痛めあう関係…木(肝臓・胆嚢・筋肉・目)

水(すい)

●イメージ…小川を流れる水、雨が降るとすべてのものが潤う
●サイクル…水は木々を育て、洪水は火を消す
●分類される人体…腎臓・膀胱・骨・耳
●支えあう関係…木(肝臓・胆嚢・筋肉・目)
●痛めあう関係…火(心臓・小腸・血・舌)

●相生と相剋…五行サイクルの中で、支えあう関係を「相生」、痛めあう関係を「相剋」という

五行サイクルでうさぎの病気を診断すると…
□【金】大腸(盲腸、結腸、直腸)の働きが鈍くなる
 →(相生)【水】腎臓、膀胱、骨の機能を支えられなくなる
 →(相剋)【木】肝臓、胆嚢に影響し、筋力が衰えてくる
□季節:秋よりも冬にかけて発症しやすい(相生)
□感情:悲しみと怒りが交錯する

鍼灸治療

鍼灸治療は、経穴(ツボ)に鍼(はり)やお灸を施し、鍼の刺激によりからだ全体を調整する治療法です。中医学では病は経絡の滞りによって起こるとされ、鍼灸治療はこれを改善して経絡のバランスを取ることによって自然治癒力を高め、病を治します。

実際にうさぎに使用している温灸ホルダー、棒灸など

●鍼灸治療の効果効能

鍼…ツボを刺激することにより、内臓やリンパ節の働きを活性化させる
灸…経絡に沿って温めることにより、エネルギー(=気)の流れをよくする

効果:血行がよくなり、自然治癒力が高まる
効能:生きるためのエネルギーがチャージされ、食欲が増し元気になる

●鍼灸治療向けの疾患(一例)

□慢性疾患のため元気が消失しているケース
□骨格の異常や老齢による変化で血行が滞っているケース
□感染症などで、からだ全体に複合的に症状が出ているケース

(からだの血液の流れをよくし、からだ全体を温めるということが治療の基本。そのためケガなど、患部を冷やす必要がある症状には不向き)

うさぎに温灸をしている様子(「うさぎと暮らすホリスティックケア」より)

漢方治療

植物(草・根・木・皮)や、動物、鉱物など、自然界に存在する天然物をそのまま使う薬を「生薬」と呼びます。よく用いられる生薬は約200種類程度で、これら数種類の生薬を組み合わせたものを「漢方薬」と言います。漢方治療とは、漢方的な診察(望診、舌診、聞診、脈診など)で、体力の強弱や体質を判断し、漢方薬を処方する治療法です。

漢方治療の診断表

●望診:体格、皮膚、毛の状態など外形を観察する
●舌診:舌の形、色などを診る
●聞診:呼吸、咳・大衆などを観察する
●問診:症状、症状の起きる時間、環境の変化を聞く
●脈診:脈の速さ・様子・力を診る
●腹診:腹の状態、排せつの頻度、排せつ物の量・臭い・硬さを診る

●停滞気味の胃腸を動かす力のある漢方薬(一例)

□「安中散(あんちゅうさん)」…食欲喪失で、胃が固くなり、腸に張りがなく柔らかいケース
□「人参湯(にんじんとう)」…食欲不振で、胃の停滞感があるケース
□「四逆散(しぎゃくさん)」
□「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」
など

漢方治療では、飼育環境だけにとどまらず、生体の性格や生活態度など幅広く問診し、その後、診る人の五感を最大限に働かせて病状を診察します。しかし、処方された漢方薬と体質が合わなければ漢方薬の効能は得られず、間違って用いれば害が発生する場合もあります。
漢方は、病名で診断するだけでなく、体質や病気の状態を見きわめながら最適な漢方薬を使い分けていく、いわゆる「オーダーメイド」の治療だと言えるでしょう。

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レーザー照射治療

レーザー照射治療は、その波長により低出力の半導体レーザーと赤色の光のヘリウム・ネオンレーザー(※)を生体に照射する治療です。それにより、生体の皮膚組織からレーザー光線が体内の組織に浸透し、様々な効果をもたらします。
(※)ヘリウム・ネオンレーザー……632.8㎛(マイクロマートル、波長の単位)の波長をもつ低出力のヘリウム・ネオンレーザー。マイルドな赤い光は、細胞の活性化を促す作用をもつ。

●レーザー照射治療の効果・効能

鎮痛作用・組織修復作用。細胞代謝を活発にし、組織を修復させる作用があります。

●レーザー照射治療が効果的な疾患

レーザー照射治療は多くの疾患に幅広く対応しています。
・外傷:咬傷、ケガ
・口腔疾患:口内炎、歯肉炎
・皮膚疾患:真菌性皮膚炎、皮膚潰瘍、脱毛症、ソアホック(足底潰瘍)
・骨格系疾患:骨折の痛み、骨の癒合促進、脊髄損傷、開張肢、脱臼、捻挫
・神経疾患:斜頸、前肢麻痺、下半身麻痺
・レーザー鍼:ツボにレーザー光線を照射することで、内臓疾患に対しても効果を発揮

●レーザー照射治療の効き目

レーザーの効き目は長くても3~4日まで。継続的な治療が必要です。
症状の回復と共にその照射間隔が1週間、2週間と少しずつ長くなり快方に至ります。

●斜頸のレーザー照射治療

首が正常な位置ではなく、左右のどちらかに傾きが見られたらすぐに動物病院へ連れて行きましょう。病院により治療方針は異なりますが、レーザー照射治療で完治するケースも増え、臨床例も報告されています。

・首が傾く症状が見られ3日以内にレーザー照射治療を受けた場合…ほとんどのケースにおいて完治
・1ヶ月以内…完治率80~90%
・1年以上…完治まで至らずとも、ローリングするなどのひどい症状は緩和し、自らの力で食糞できるようになる。食欲も回復する。
(この場合の「完治」とは、首の傾きが元通りになること)

レーザー治療(モデル/ぴょんくん)
治療期間うさぎの経過
治療開始→連日3日間照射首を下から上に持ち上げるようになる。食欲回復。食欲が回復すると排せつもできるようになる。
4日目より→1日おき照射3回首の傾きが少なくなる、眼振がおさまる。旋回するが、直進できるようになる。グルーミングができるようになる。
2週間目→3日おき照射2回首をまっすぐに保つことができるようになる。障害物を避け、走り回れるようになる。
3週間目→1週間おき照射3回(レーザー治療を行いながら、ビタミン剤や、抗生物質の投与、また場合によってステロイド剤も併用する)完治

出典/うさぎと暮らす ホリスティックケア。うさぎと健康に暮らすための部位別マッサージなどが紹介された一冊です。現在Kindle版で読めます。アマゾンからご検索ください。

<うさぎとホリスティック医療③に続く>