うさぎの基本

アナウサギを知る Part1

皆さんは、私たちと一緒に暮らしているうさぎ(カイウサギ)たちのルーツをご存じですか。全てイベリア半島のスペイン・ポルトガルに生息していた『ヨーロッパアナウサギ』がそれで、一番古い記録では、紀元前1100年頃フェニキア人がスペインを発見し、そこにたくさんのアナウサギがいたことが残っています。アナウサギの特徴を知ることで、おうちのうさぎの行動について考察してみましょう。

アナウサギの変化の歴史

イベリア半島に生息していたアナウサギは、どのようにしてカイウサギに変わってきたのでしょうか。アナウサギが家畜化されたのは、6世紀頃ヨーロッパの修道院で始まりました。修道僧は庭でアナウサギを飼育し、うさぎの肉を食用として供給していたのです。その後、ヨーロッパ中の修道院に急速に広まっていったと言われています。家畜化されたアナウサギは、人間に馴れやすい性格だったため、フランスの修道僧によって体の大きさなど人為的に選抜され、品種改良が始められたとされています。

12世紀には、十字軍によりイギリスに持ち帰られ、後に上流階級の庭で壁に囲われた「ワーレン」と呼ばれる飼育場で飼われるようになりました。その子孫が皆さんも知っているビクトリア・ポターのピーターラビットとして絵本になっています。

野ウサギとの違い

生物は、遺伝的特性および系統発生的特性に基き、界・門・綱・目・科・属・種のカテゴリーに分類されます。アナウサギと野ウサギの大きな違いは「属名」が異なることです。生まれ持っての特徴も異なります。

アナウサギ、カイウサギ

哺乳綱 兎形目(ウサギ目) ウサギ科 アナウサギ
学名/Oryctolagus cuniculus 英語/rabbit
自然分布/ヨーロッパ西部とアフリカ北部の地中海沿岸など
体つき/体長35~45cm、尾長4~7cm、耳長6~8cm、体重1.4~2.3kg
出産/繁殖期:春から夏 妊娠期間30日 産仔数:4〜9子 年間出産回数3~5回

生態的特性/地下に複雑に張り巡らされた巣穴(ワーレン)を住まいにする。数頭のメスと1頭の優位オス、周辺部の劣位オスのコロニーを単位になわばりを防衛。
食性/多くの植物の葉、芽、枝、樹皮を採食。

野ウサギ

哺乳綱 兎形目(ウサギ目) ウサギ科 ノウサギ属
学名/Lepus 英語/hare
自然分布/世界中
体つき/二ホンノウサギの場合:本州・四国・九州に分布する日本固有種。体長50 cm前後、尾長3cm前後、体重2.0 kg~
出産/繁殖は交尾が2~7月、妊娠44日前後、出産4~9月。子は1~4頭。寿命は野生で1~2年、飼育下で約10年と言われている。
生態的特性/アナウサギに比べるとすらっとしていて手足が長い。出産は草むらで行い、巣穴は作らない。子は生まれた時から毛で覆われ、目が開いている。秋から冬にかけて体毛が茶色から白色に変わることで知られています。メスは天敵に子が襲われないように、子を草むらに残して離れて過ごし、授乳の時だけ子の所へ戻って授乳する。夜行性で警戒心が強く、瞬発力・跳躍力が優れる。また野ウサギの中には季節に合わせて毛色を大きく換毛する品種がある。夏毛から冬毛に生え変わる際、耳以外の毛の色を白く変化させる(トウホクノウサギ、。雪景色に溶け込み、天敵から狙われにくくなる。

衣替え中。北アメリカに生息するカンジキウサギ

アナウサギと野ウサギの解説

野生のうさぎには、アナウサギと野ウサギがいます。アナウサギは、その名の通り、縄張りの中に複数の巣穴を掘り、1匹のリーダーのオスを中心としたグループで暮らしています。巣穴は、迷路のような複雑な構造をしていて、寝床の部屋や子育てをする部屋、敵に襲われた時に使う逃げ道の穴まで完備しています。

またアナウサギの体は、穴を掘るのに適した短い足と小さな体、短い耳が特徴です。アナウサギは、妊娠期間が短く産まれた子どもは、目も見えず毛もうっすらと生えているだけなので母親が自分の毛と草で作った温かい巣が必要です。


一方、野ウサギは、繁殖期以外は、単独で生活し巣穴を持たず、草原に浅いくぼみを掘った巣で身を隠しています。野ウサギの体は、アナウサギより大きく、草原を走るための長い手足と長い耳が特徴です。そして、野ウサギはアナウサギのように敵から襲われた時に隠れる巣穴を持たないため、草原を早く長く走るため、アナウサギと比べて大きな心臓を持っています。子育ても、アナウサギと違い浅いくぼみを掘り、子供を産みます。妊娠期間の長い野ウサギの子供は、体温を維持するのに十分な毛が生えて、目も見え、自分で歩くこともできる大きさで産まれてきます。

また、二つのうさぎは呼び名でも違います。英語では、アナウサギはラビット、野うさぎはヘアと呼ばれ、区別されています。

後にアナウサギは、人によって家畜化され、品種改良が進み、現在のカイウサギへと変身してきましたが、野うさぎは野生のまま、人に飼われることはありませんでした。どちらのうさぎも元々は、食料やハンティングのための動物ではありましたが、その生態の違いによって大きく違う道を歩んできました。アナウサギは、グループでお互いに助け合う生活をしていたため、人から与えられ囲われた土地で容易に繁殖し、人に馴れることができました。野ウサギは、単独行動を好んだため人に慣れず、野生にとどまる生活になったのです。

アナウサギ
アナウサギのひなたぼっこ?
野ウサギ
野ウサギ(ジャックウサギ) Pexels Steffi Wacker

次回はアナウサギの習性についてご紹介します。

参考文献:晶文社刊『ウサギの不思議な生活』アン・マクブライト 齋藤慎一郎訳