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USAKURA ARTの旅:土井朋子さん(ガラス作家)

うさぎのアート作品を紹介していく「USAKURA ARTの旅」。今回はガラス作家の土井朋子さんです。

土井朋子

茨城県在住。童話から抜け出したような動物などのファンタジーあふれるガラス作品で人気を集めている。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科・工芸デザイン専攻陶磁コース卒業後、東京ガラス工芸研究所を経て、atelier朋〈Kiln work Glass Studio〉設立。個展を中心に制作活動をおこない。国内のみならず、海外でも展覧会やワークショップを開催している。(取材当時)

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うさぎを題材にした作品が多いのは?

うさぎを飼育した経験はないのですが、卯年、卯月生まれというのもあって、「動物をモチーフに」と頼まれると、自然とうさぎを描くことが多いです。子供の頃、夜中に野うさぎ3匹が敷地内に自生していたシロツメクサを食べに来たことがありました。野うさぎに気がついた父が、寝ていた私を起こしてくれて、灯りを付けたら驚いて逃げてしまうと思い、真っ暗な室内から遠巻きにそっと眺めました。翌朝、うさぎがいた場所へ行ってみると、3匹分のコロコロのフンが残されていて、ほほえましく思った記憶があります。子供の頃と比べると野うさぎに遭遇することは少なくなりましたが、今でもアトリエの近くではたまに見かけることがあります。私は児童文学が好きなのですが、物語の中のうさぎは、かわいいのにちょっと意地悪だったり、少しずるく描かれたりするところに惹かれます。展覧会での作品販売が仕事の中心なので、自分自身で作品を手元に置いておくことはなかなかできませんが、作品を手に取り、購入してくださった方に、長くかわいがってもらえることが嬉しく感じています。

ガラス作品の魅力を教えてください。

子供の頃から、絵を描くことより工作や粘土遊びのほうが好きだったこともあり、美大では陶芸を専攻しました。サークルでガラス工芸に接する機会があり、すぐにガラスの虜になりました。透明で存在できるガラスは、その中に封じ込められた世界をのぞき見ることができるのが面白いと感じたので、美大卒業後、本格的にガラスを学ぶためガラスの専門学校に通い、ガラスの様々な技法を身に付けました。絵付けの授業の時にガラスに絵を描くことの面白さに目覚め、主な制作手法の1つとして取り入れるようになりました。ガラスに描く面白さは、絵の上に丸い固まりのガラスを付けたり、絵をガラスの中に入れ込むと、レンズ効果や屈折で絵がゆがんで見えたり、思わぬところに反射していたり、計算しきれないところです。ある時期から、絵の中に描いていた動物を立体として描いてみたい。と考えて作ったのが、リスをモチーフにした「リスコップ」でした。うさ小鉢やうさコップは、その派生作品です。この手法は絵付けをしてから再加熱してガラスを軟らかくしてから形を作り上げるので、絵を変形させることができるのですが、無意識なところでの違いなのか、作るたびに表情が異なります。

ガラスの絵付けはどのようにしているのですか?

陶芸やガラス用の絵付けの顔料は高温にも耐えられる特殊なものです。基本5~6色あって、おおよそ絵の具と同じように混色することができます。でも、同じ絵の具でも熱の加え方によって、うまく発色しなかったり、化学反応で変色してしまうこともあり、案外、物理や化学の知識も必要です。絵付けをするときは、常温で冷めているガラスに筆などでザックリと描いてから、竹串などを使って顔料をそぎ落としていきます。ガラスに絵付け顔料は染み込まないので、容易にそぎ落とすことができるのです。うさぎを描くときは、細かな毛並みにもこだわっています。絵付けをするガラス素地の形になじむ顔を描くようにしています。顔も太めだったり、細めだったり、可愛いだけじゃない、甘すぎない感じに仕上げるのも自分流だと思っています。