うさぎの健康

動物由来感染症(ズーノーシス)を知ろう

動物から人に感染する病気、動物由来感染症。実は家畜や野生動物だけの話だけではなく、ペットうさぎと暮らす私たちにも関わりのあるお話です。ここ数年苦しめられている新型コロナウイルスもコウモリが発生源(自然宿主)と言われていて、別の動物が媒介役(中間宿主)となってヒトに感染したと言われています。また、最近では海外での鳥インフルエンザの人への感染拡大も大きく報じられています。厚生労働省発行の「動物由来感染症ハンドブック2022」をもとに、みなさんと関連しやすい症例をまとめてみました。

「動物由来感染症」とは

動物から人に感染する病気の総称です。人と動物に共通する感染症(Zoonosis:ズーノーシス)は、「人獣共通感染症」や「人と動物の共通感染症」ともいわれますが、厚生労働省は人の健康問題という視点から、「動物由来感染症」という言葉を使っています。世界保健機関(WHO)では、ズーノーシスを「脊椎動物と人の間を自然な条件下で伝播する微生物による病気または感染症(動物等では病気にならない場合もある)」と定義しています。なお、「動物由来感染症」には、人も動物も発症するもの、動物は無症状で人だけが発症するもの等、病原体によって様々なものがあります。

動物由来感染症の伝播(でんぱ)

病原体に暴露され、病原体がうつることを「伝播」といいます。動物由来感染症における伝播とは、病原体が動物から人にうつるまでのすべての途中経過をあらわします。 病原体の伝播は感染源である動物から直接、人にうつる直接伝播と、感染源である動物と人との間に何らかの媒介物が存在する間接伝播の、大きく2つに分けることができます。さらに間接伝播は感染動物体内の病原体を節足動物等(ベクター)が運んで人にうつすもの、動物の体から出た病原体が周囲の環境(水や土等)を介して人にうつるもの、および畜水産物等の食品が病原体で汚染されている場合に分けて考えることができます。

直接伝播

咬み傷や引っ掻き傷からの病原体の侵入が典型的なものです。
口の周りや傷口をなめられてうつる場合もあります。動物の咳やくしゃみを直接受けたりすることで感染する病気もあります。動物の体についている病原体も直接伝播の原因となります。特に子どもでは動物に触って糞などで汚染した手を口に持って行くことで感染するルートもあると考えられています。

間接伝播-ベクター媒介

ダニ、蚊などが感染動物から人間へと吸血などによって病原体を伝播することがあります。これらの外部寄生動物をベクターと呼びます。

屋外のうさんぽは危険も潜んでいます

間接伝播-環境媒介

病原体で汚染された水や土壌と接触したり飲んだりしてうつる動物由来感染症は多数知られています。また排泄された病原体が風で舞い上がって空気を吸い込むことで感染することもあります。この感染ルートの特徴は、環境が病原体で汚染されていることには通常気づかないことです。

動物の各カテゴリーと動物由来感染症との関連

動物を生活環境により分類した場合、それぞれのカテゴリー(群)と動物由来感染症に関連性があります。

(動物由来感染症ハンドブック2022より)
キタキツネ

野生動物は素手での接触は避けましょう。エキノコックス症はキタキツネが主な感染源で、糞虫にエキノコックスの虫卵を排出され、人はその虫卵が手指、食物、水などを介して口から入ることで感染します。

動物由来感染症の病原体

動物由来感染症の原因となる病原体には、大きいものでは数センチ(時には数メートル)もある寄生虫から電子顕微鏡を用いなければ見ることのできないウイルスまで、様々な病原体があります。また、従来の微生物の概念とは異なるプリオンという異常タンパク質も動物由来感染症の原因となることが分かっています。

(動物由来感染症ハンドブック2022より)

動物由来感染症に感染しないためには、どうしたらいいの?

  • 過度な触れ合いは控えましょう
    細菌やウイルス等が動物の口の中にいることがあるので、口移しでエサを与えたり、スプーンや箸を共用するのは止めましょう。また、動物との入浴や布団に入れて寝ることも、濃厚接触となるので止めましょう。
  • 動物にさわったら、必ず手洗いなどをしましょう
    動物は、自身には病気を起こさなくても、ヒトに病気を起こす病原体を持っていたり、毛にカビの菌糸や寄生虫の卵等がついていることがあります。また、動物やその唾液や粘液に触れた手で、知らないうちに自分の目や口、傷口等をさわってしまうこともあるので、動物に触れたら必ず流水で手洗い等をしましょう。
  • 動物の身の回りは清潔にしましょう
    飼っている動物はブラッシング、つめ切り等、こまめに手入れをするとともに寝床も清潔にしておきましょう。小屋や鳥かご等は毎日よく掃除をして清潔に保ちましょう。タオルや敷物、水槽等は細菌が増殖しやすいので、こまめな洗浄が必要です。
  • 糞尿は速やかに処理しましょう
    糞中で病原体が増殖したり、糞尿が乾燥して中の病原体が空気中を漂うことがあります。糞尿に直接ふれたり病原体を吸い込んだりしないよう気をつけ、早くこまめに処理しましょう。

    (動物由来感染症ハンドブック2022より。うさぎに関するもの抜粋)
  • 動物に噛まれたら…とにかく水をかけて洗い流すことが大事です。患部に流水を5分以上かけてください。血が出ている場合も、まずは5分流水をかけます。患部の消毒、圧迫をして、清潔なガーゼやタオルを使って、患部を押さえて止血します。それから病院へ行きましょう。

我が国や外国で実際に発生している主な動物由来感染症(ペット)

(動物由来感染症ハンドブック2022より)

皮膚糸状菌症

感染する主な動物/犬、猫、鳥、ウサギ、ハムスター 

感染経路/動物が使ったタオルやスキンシップでカビが感染 

症状/かゆみや水ぶくれ

パスツレラ症

感染する主な動物/犬、猫、鳥、ウサギ、ハムスター

感染経路/ひっかき傷、かみ傷 

症状/肺炎、皮膚の炎症など。免疫力が落ちている人や糖尿病などの基礎疾患がある人は症状が出て悪化する場合がある。

動物由来感染症ハンドブック2022