講師に中山ますみ先生を招いて、飼い主さんが日ごろうさぎとのコミュニケーションで悩んでいることを少しでも解決するためのヒントを得て、うさぎにもっと寄り添うことができるようにお手伝いする講習会です。
講師/中山ますみ先生
東京都杉並区のうさぎ専門店「らびっとわぁるど」オーナー。海外での動物研究の経験を生かし、うさぎの性格や状態に合わせた飼育相談や預かりのトレーニングを行っている。一般社団法人日本アニマルウェルスネス協会認定ホリスティックカウンセラーの資格を取得。
「オスうさぎのお世話のお悩み」
読者を招いたり、読者の悩みに応じて開催するうさぎについての講習会。今回のテーマは「オスうさぎの日頃のお世話で悩んでいること」についてです。かわいいわが子もお年頃。彼らの主張をどうやって暮らしの中で折り合いをつけていくかを中山ますみさんに相談しました。
室内環境について
うちのうさぎ(オス・2歳)は半月前(7月中旬現在)から、なぜか水をあまり飲まなくなりました。ですからにんじん、セロリの葉、ブロッコリーの葉など生野菜をいっぱいあげて、水分を摂らせるようにしていますが、どうして飲まなくなってしまったのか分かりません。健康状態に変わりはないのですが、このままでよいでしょうか?
エアコンの設定温度は何℃にしていますか?
26℃にしていて、扇風機の風は首振りにして直接あたらないようにして、併用しています。
そうですか、その温度設定は少し気になりますね。エアコンの設定温度イコール室温だと勘違いしがちですが、設定温度よりも実際の室温は4~5℃高くなる場合が多いのです。うさぎは環境が暑すぎると、体がだるくなり、給水ボトルに口を近づけて舌でボールを押し上げるという行動がしんどくなります。夏場はクーラーの設定を25℃以上に設定するのはリスクがあると考えたほうがよいでしょう。特に飼い主さんのおうちのようにアメファジなどの長毛種は毛足が長いので、体温調節がしづらいのです。高齢や闘病中のうさぎに対しても室温を高い状態にするのは絶対に避けましょう。若いうさぎの場合、水を飲まないため、生野菜をたっぷりとあげてしまうことで余計に水を飲まなくなるという悪循環になっているのだと思います。
シニアですと野菜から水分をとってくれるだけでもありがたいのですが、まだ若いので体力維持のためにも水分を摂取することが必要です。
日々の健康管理、チェック
普段どんな風に健康チェックをしていますか?
耳の温度、フンの形、おしっこの量、水を飲む量、ごはんの減る量をチェックしています。ただ、見ているだけなので具体的なことがわからず、フンもどれくらいの量が出ていればいいのでしょうか。
牧草をいっぱい食べていると草色をしていて乾いているフンになり、ペレットが多いと黒いフンになります。飼い主さんが誤解しがちなのが盲腸糞と通常フンの間に切り替わる段階で出るフンのこと。この時小さいフンが出ることがあるのですが、それは異常ではありません。また日常的に小さなフンが出るのは心配ですが、小さいフンでも乾いたフンで、いっぱい出ていれば心配はありません。なお、フンに粘膜(ねばねばしているもの)がついていたりすると軽い腸炎を起こしている可能性があります。いつもと同じ食餌をしているのに、フンに異常が現れたのであれば、季節の変化や環境・換毛などによる体調の変化など、全てにおいて一つの理由だけでなく、複合的な原因から不調が現れる場合があるので、飼い主さんがよく考えてあげる必要があります。私はこれまでの経験上、体調管理に気圧の変化(低気圧)の影響が大きいと感じていて、天気予報をチェックすることは欠かせません。
気になっているのが、最近ペレットを一定量を残すことです。
それは体調不調と言うよりも「におい」の問題かもしれません。うさぎはにおいで全てを判断しているといっても過言ではありません。ずっと一緒の空間に置いてあると、においもなくなりますし、環境として溶け込んでしまうので、うさぎがその存在に興味を抱かなくなってしまいます。こうしたうさぎにはちょこちょこ食べさせるか、「残すんだったら外しちゃうよ」と声をかけて、取り除き、お腹をすかせてあげましょう。
それから耳の温度も体調管理には大切な箇所ですね。夏の時期、恐いのは耳が熱い時、耳の裏を見て、動脈が太く盛り上がっているときは体内のやけどといってもいい熱中症の状態にあります。体がガクガクと震え、ショック状態の症状が出る場合もあります。これは緊急事態ですから、体を外から冷やすよりも、うさぎの舌に氷をなめさせると即効性があります。あるいはうさぎの耳や体をぬらし、逆毛にして扇風機をかけてあげてもよいでしょう。うさぎの手足を水につけてしまうのも一つです。
へやんぽ中の問題行動
へやんぽする時、おしっこをする場所が決まっていてそこにシーツを敷いています。しかし、そのシーツをホリホリして破いてしまってじゅうたんにシミを作っています。ホリホリするのをやめさせたいのですが…。
うさぎの習性からきているのではと…。自然界では掘ることで新しい土が出てきますよね。ですからにおいがついているシーツを新しくしようとしているのか、排除したいのだと思います。
ケージの中はきちんとトイレでするコで、まき散らすこともないんです。へやんぽに出すと2ヶ所の決まった場所におしっこをするんです。
部屋の広さはどれくらいですか?
2部屋分なので20畳です。
それは広いかもしれません。広いと縄張り意識として何ヶ所かトイレが必要になるのです。おしっこの場所が決まっているのであればその位置にトイレを置いてあげるのも一つ。犬猫用の平たいタイプもあるので、試してみて成功すれば縄張り意識もカバーできるかもしれません。縄張りをよく見てみると、フンに水っぽいにおいのある分泌物がついていることがあると思います。においをテリトリーにつけて縄張りを主張しているのです。うさぎの性格を変えるというのはなかなか難しいことですので、飼い主さんがうさぎの行動に合わせた対策をしてあげましょう。
去勢手術後、物音におびえるようになった
スプレー行動がひどかったのと、病気の予防にと4月に去勢手術をしました。スプレー行動は収まったのですが、性格的にびくびくするようになり、人が歩いただけでもびっくりしてケージに戻ってしまいます。元のような元気なコになりますでしょうか。
去勢、避妊手術は確かに恐怖心、トラウマが残ってしまううさぎがいるようです。元通りにするのには時間がかかると思います。また、これは想像でもあるのですが、それまで活発だったホルモン活動・性欲が手術によって押さえられてしまったため、それぞれのうさぎが本来持っていた性質(この場合神経が細やかな面)が現れてきたという可能性もあると思います。
このようなうさぎには、普段の接し方として、話しかける口調は、なるべくゆっくり穏やかにしてあげます。耳が立って警戒している様子の時は、「大丈夫だよ」「なんでもないよ」と優しく話しかけてあげましょう。日常的にラジオやテレビを流しておいて、音に慣れさせておくと、急に大きな音が聞こえたとしても緩和されます。うさぎが病気の時もバラエティ番組などの笑い声を流しておいてあげることで、あるんですよ。笑い声のある明るい環境を作ってあげるとうさぎが安心できるかもしれませんね。
トイレをケージから出るまで我慢している
ケージ内にトイレがあるのですが、そこでは用を足さず、朝と夜のうさんぽ時にケージを開けてリビングに出てきた時にしかしないので、とても心配です。
きっちりとしている性格のようですね。これはもともと持っている性質ではありますが、後付けの環境、つまり飼い主さんの普段の接し方によっておおらかにさせていくことは可能です。例えばケージ内のトイレでおしっこをしてもよいということを教えてあげるのです。荒療治ではありますが、ケージから出さずに我慢ができない状況を作る、ケージでおしっこをしたときには「おしっこしたの?すごいねー、えらいねー」とものすごくほめてあげます。それを根付かせていくとケージ内でするようになるはずです。この子はこの講義で1時間くらい接している中でもこれだけ心を開いてくれてリラックスしてくれる、しっかりしたコだと感じました。そこまで心配しなくてもこのコは大丈夫。うさぎはこちらが思っている以上にしっかりしていて強いのです。うさぎと向き合う時はできるだけ時間をとって、彼らを理解してあげるように努力すること。自分の気持ちを表してくれるまで、何時間でも根気よく待ちましょう。
こんなに中山先生にデレデレになっている姿を見て安心しました。