うさぎの基本

手のかからない?仔うさぎの育て方③

うさぎとの暮らしは、うさぎと出会った瞬間から始まります。しかし仔うさぎの愛くるしい仕草に魅了され、どんなわがままでもつい許してしまう飼い主になっていませんか? これでは抱っこはおろか、トイレのしつけや爪切りすらできなくなってしまうかもしれません。そこで仔うさぎのうちに『あること』をすることで、手のかからないうさぎへと成長する可能性があるのです。仔うさぎの育て方で気を付けることを紹介します。(『うさぎと暮らす』17号より改編)

おうちでできる健康チェック

身体の成長

うさぎの歯は成長に従い顎が形成され、前歯(切歯)と奥歯(臼歯)の間の隙間、歯隙(しげき)が作られていきます。生後3ヶ月頃から一時、顔が縦長に伸びて見えますが、顎は縦に伸びた後、横に伸びてバランスの取れた顔立ちに戻ります。
また、成長の過程で上顎よりも下顎の方が早く大きくなる時期があります。この時、切歯の上下の歯が当たってしまう「バッティング」が起こり、一見不正咬合と疑われることがありますが、成長に伴い、自然に完治することが多いようです。これは、顔のつぶれたように丸くなっている種類(ネザーランド・ドワーフ、ホーランド・ロップ等)に多く見られます。稀に削らないと治らないケースもありますので、成長に伴って改善されていかないようであれば、うさぎの歯に詳しい獣医師の検診を受けた方が良いでしょう。
身体全体の骨の成長は、生後6ヶ月~8ヶ月くらいで止まり、大人うさぎと変わらない体型になります。

検便のすすめ

うさぎを迎える前に、うさぎを診ることのできる動物病院を探しておくことが大切です。本誌で紹介している動物病院や、インターネットでうさぎを診られる動物病院が家の近くにあるかどうか調べることのできる検索サイトもあります。うさぎを迎えたらフンだけを持参し、糞便検査を受けましょう。フンを検査することで、仔うさぎがかかりやすいコクシジウム、寄生虫その他の細菌のバランスがわかります。また仔うさぎは、ちょっとした環境変化やストレスで体調を崩した場合、軟便や下痢を起こしやすいので、異常があったらすぐにフンを持って、うさぎを動物病院へ連れて行きましょう。

犬猫以外は診ない動物病院もあるので要注意

毎日健康チェック

毎日の行動観察とともに、健康チェックをかねたマッサージも大切です。毎日身体にふれることで、健康な状態の身体がどのようなものかが分かり、悪い箇所にすぐに気づいてあげることができるでしょう。いざという時にあわてないためにも、日頃から健康チェックをして、一つでも心当たりのある時は動物病院へ行きましょう。

健康チェックポイント

・あごの下がぼこぼこしている(歯)  
・あごの下の毛がべとつく(歯)  
目・鼻・目やに、鼻水、よだれが出ている(歯)(感)  
・涙がでる(歯)(感)
・くしゃみをする(呼)(感)  
・呼吸時に変な音がする(循)
・耳をかく仕草が目立つ(神)(感)  
・耳がくさい(感)  
身体全体・背骨の感触がゴツゴツする(消)  
・身体にしこりがある(他)(感)
・ぐったりとしていて、身体や耳が熱っぽい(消)(泌)(循)(他)
・触らせてくれない箇所、触ると痛がる箇所がある(消)(泌)(骨)(神)  
・毛が根本よりしっかり立たない(消)
・毛がバサバサする(消)
皮膚・皮膚が赤くなっている(皮)(感)
・ふけがでている(皮)(感)
・毛の一部が禿げる(感)  
お腹・お腹の弾力が軟式テニスボールより硬いあるいは柔らかい(消)
尻、尿、フン・フンの量が少ない(消)(感)
・フンの大きさが極端に小さい(消)
・下痢便(軟便)をする(消)(感)
・肛門が汚れている(消)(泌)(感)
・血尿が出る(消)(泌)(感)
・前足の毛が濡れている(歯)(感)
・足裏に脱毛、タコが見られる(皮)(感)
【疑われる疾病】(消)…消化器系 (泌)…泌尿器系 (骨)…骨・関節 (歯)…口腔 (感)…感染症 (神)…神経系 (皮)…皮膚 (循)…循環器系 (呼)…呼吸器系 (他)…その他

●ポイント
  • うさぎを迎えたら動物病院で検便してもらう
  • 健康チェックをかねてマッサージをする

(監修/おくだ動物病院 越久田活子)

メッセージをキャッチ うさぎからのサイン

病気を隠すがんばりやさん

うさぎが具合の悪さを表に出さないようにするのは、うさぎがもともと肉食獣に食べられてしまう動物のため、敵に弱ったところを気づかれないようにしようという気持ちが働くからです。そのため、具合の悪さを表に出した時には手遅れとなることがあります。病気を早期発見するためにも、普段から食欲、元気があるかどうか、体重、フン、尿などをよく観察して、微妙な変化にも気づいてあげられるようにしてあげることが大切です。
病気などで痛みを感じているうさぎからは、「病気のサイン」が発せられています。そのわずかなSOSを見逃さないためにも、普段のうさぎの行動との違いを見分けられるようにしましょう。

うっ滞を起こしているうさぎ。平気なふりをしようとするが、いつもと様子が違う

行動から見る病気のサイン

疑われる病気サイン
口腔疾患後ろ足で頻繁に皮膚をかく動作をする・毛づくろいを熱心に行わなくなる(途中で止めてしまう)・頭をしきりに振る
消化器系疾患食べ物の嗜好が変わる・食べ物を口からこぼす・よだれがよく出る・歯ぎしりをする・口周りを前足でこする
泌尿器系疾患食欲不振・背中を丸めてうずくまる・前後の足を投げ出して寝そべる・うずくまった状態で顎を上に向ける・変に身体をくねらせる・大好物を与えた時に反応がいつもと違う・歯ぎしりをする
神経系疾患排尿時に尿が出ない・排尿時にいきむ・歯ぎしりをする・水を大量に飲む・少量の尿を頻繁にする・トイレ以外の場所排尿を繰り返す
骨・関節系疾患飛び跳ねないで歩いて移動する・特定の足に体重をかけずに、足を持ち上げて移動する・身体を丸めた姿勢時に、足の位置が身体の横にずれる
循環器系疾患毛づくろいする回数が減る(元気喪失)・食欲不振・歯ぎしりをする
呼吸器系疾患呼吸の仕方がおかしい・くしゃみを頻発する・目やにが出て目の周りを気にする
●ポイント
  • 普段と違う行動がないか毎日観察する
  • 病気のサインを見つけたら、すぐうさぎを診てくれる病院へ
毛づくろいをするうさぎ

仔うさぎに多い病気・ケガ

くしゃみ・鼻水

ウイルス感染やパスツレラなどの細菌感染によって起こる症状です。感染している母うさぎから仔うさぎに移る垂直感染や、飛沫感染で広がります。大人でも治りにくい病気ですが、仔うさぎでは死に至るケースもあります。

下痢

家に迎えた当初は、ショップからの移動や環境の変化がストレスとなり、下痢を引き起こす場合があります。
離乳期の仔うさぎの腸内は、それまで母乳から得ていた抗細菌作用の脂肪酸により、微生物感染を防いでいます。離乳前後は徐々に母乳量が減り、母乳以外のものを摂取することで胃酸の分泌量が増加し、細菌感染を防ぐ胃へと発達します。
このようなことから、離乳期が早すぎた場合、胃酸の分泌が整っておらず、細菌感染やコクシジウム症に感染する危険が高くなります。コクシジウムは、大人うさぎでは、ほとんど症状が出ませんが、仔うさぎの場合は、これが原因で下痢を起こし、体力低下で亡くなってしまうこともあるので注意が必要です。

ケガ・骨折

新しい環境に慣れるまでは見るもの、聞くものに対して過敏になり、パニック状態になることがあります。パニックになると壁に激突したり、高いところから飛び降りたりして、ケガをすることも。パニック状態が極限に達すると、ショックで死んでしまうこともあります。
小さい頃はやんちゃ盛り。飼い主が考えもおよばない隙間にもぐりこんでしまうことも。また、足が細いため、すのこや金網などの床材に足が挟まり骨折することのないように、安心して過ごせる環境を用意しましょう。

●ポイント
  • くしゃみ、鼻水、下痢はすぐうさぎを診てくれる病院へ
  • 不慮の事故でケガをしないよう、危険な物は事前に取り除く

繁殖について

仔うさぎから性成熟を迎えるまでは、個体差がありますが、メスは生後7~8ヶ月、またオスは生後4ヶ月過ぎた頃です。
母うさぎにとって妊娠、出産、母乳を与える行為は、かなりの体力が必要となります。若すぎる、または身体の弱いうさぎでは、流産や早産、死産になる可能性も高く、また無事に生まれたとしても子育てをしなければいけない母うさぎにかかる負担は大きく、ストレスになります。
うさぎの身体が成長し続ける成長期に、オスとメスのうさぎが一緒になる状況は絶対に避けるようにしてください。
オス同士だから、メス同士だからといって安心しないでください。うさぎの性別が間違えられることもあり、オスと思っていたのに実はメスでいつの間にか妊娠・出産したということはよくあることです。1匹以上のうさぎ(兄弟同士も)がいる場合は、生後3ヶ月を過ぎたら、ケージを分けましょう。また一緒に遊ばせる際は、常にそばで見ているようにしましょう。
うさぎは交尾した後に排卵するため、一度の交尾で妊娠する確率も非常に高くなります。また母うさぎの身体が小さいこと(ドワーフ種など)が原因で、難産や死産となるケースもあります。その他にも陣痛が微弱で産むことができなかったり、母うさぎと父うさぎの体格や大きさが相違することが原因で、お腹にいる赤ちゃんうさぎの身体が大きすぎ、出産が困難になり、母うさぎの身体が危険な状態になるといったケースもあります。
うさぎは1回の出産で6~8匹も生まれることもあります。飼い主さんを見つけるのも容易ではありません。繁殖を考える時、何よりも大切なのは、生まれてくるうさぎたちがすべて幸せになれることです。 生まれてきたうさぎ達がみんな幸せになれる環境をまず作ってあげることが飼い主の務めでしょう。

もっと仲良しになるために うさぎの感情表現

うさぎのココロ

うさぎは、言葉をしゃべることができません。また犬猫のように鳴き声で何かを伝えることも難しいでしょう。でも私たちはうさぎの行動・しぐさ・姿勢からうさぎのココロを読み取ることができます。今何を思ってる? 何を伝えようとしているの? うさぎの気持ちを知ることで、きっと気持ちがふれあえるはずです。
うさぎとのコミュニケーションは、多ければ多い方が良いと思いがちです。でも何事も程ほどが肝心。その加減を覚えるためにも、うさぎの感情表現を知り、うさぎの喜ぶコミュニケーションを取れるようにしましょう。

うさぎの感情表現

しぐさうさぎのココロ
8の字にグルグル回るあなたが大好き
ツンツンつつく遊ぼう、かまって
プウプウ鳴く興奮しているよ
垂直ジャンプ楽しい、嬉しい!
身体をクネクネするルンルン♪
キィーッと鳴く怖いよー、やだよー
後足でダンと床をたたく頭にくるー、怒ったぞ
物を放り投げる何よ、これ。ポイッ
立ち上がる何かあるのかな?
急にバタンと倒れる超リラックス
頭を前に出して座るなでて~
あごをすりつけるここは私の陣地よ
※ここに挙げたしぐさは、ほんの一例です。
●ポイント
  • うさぎのしぐさからうさぎの気持ちを読み取る
  • ほどほどのコミュニケーションを目指す
(おわり)