うさぎの健康

うさぎとホリスティック医療 その3(おわり)

「ホリスティック医療」という言葉を聞いたことがある方も少なくないでしょう。では、「ホリスティック」とはいったい何でしょうか。うさぎは環境の変化に敏感であり、ストレスなどとして受けやすい動物なので、特にホリスティックを生かしたケアを知っておくと、心身を穏やかにし、より快適な暮らしを提供してあげることができるでしょう。また飼い主さんにとっても同様です。
書籍『うさぎと暮らす ホリスティックケア』(マガジンランド刊/おくだひろこ著)より、ホリスティック医療について抜粋してご紹介します。

ホメオパシー

ホメオパシー

ホメオパシー(homoeopathy)とは、ギリシャ語の「homoios(同種・類似)」と「patheia(病気・苦痛)」の2つの言葉からなる造語です。今から約200年前の1800年代の初め、ホメオパシーの創設者であるドイツ人医師サミュエル・ハーネマンによって確立された「同種の法則」を根本原理とする自然療法です。

ホメオパシーの考え方

ホメオパシーでは、生体が示している症状は、からだの中に入った毒素に対して、自然治癒力が働き、自らの力でからだが病気を治そうとしているしるしととらえます。そこで、例えば熱がある場合、解熱剤で熱を下げるのではなく熱を上げるものを投与したり、ハチに刺された場合、ハチの毒のレメディを投与するなど、症状を抑えるのではなく、人間が本来持っている自然治癒力を高めさせる治療を行います。

このようにからだの中に同じ症状が現れるものを投与することで、からだの中に何が起きているのかを気づかせ、自然治癒力を高め病気を治していくというのが、「同種の法則」と言われるホメオパシーの考え方です。

レメディ

ホメオパシーの薬剤は「レメディ」と呼ばれ、原料は自然界の植物、動物、鉱物の抽出液を、その物の物質が残らないほど薄め(=希釈)、一般的には小さな砂糖玉にその物質の持つ特徴的な性質(エネルギー)を閉じ込めたものです。天文学的数字に薄められた希釈液は、段階希釈とその度に激しく揺り動かす(=振盪しんとう)という作業により、物質の持つ性質が失われることなく、その物質のエネルギーだけが残るということを発見したのが、ドイツのハーネマン医師です。砂糖玉に閉じ込められたエネルギーは、からだの中に潜む病気のエネルギーと共鳴し、自らの力で治そうとする自然治癒力が高められるのです。

現在では植物、動物、鉱物だけでなく、太陽や月の光、X線やヘリウムガス、プルトニウムまで多種多様なものがレメディとして使用されています。

ポテンシー

希釈レベルは「ポテンシー」と呼ばれ、「c」という単位で表記されます。希釈倍率は最大10の200万乗倍まで。一般的に使用されているものは、10の60乗倍希釈(30c)で病気の症状や進行に合わせてポテンシーが使い分けされます。

レメディはこうして作られる!

○原料が植物の場合

  1. 植物をアルコール水にひたしてティンクチャ―(抽出液)を作る
  2. 抽出液をアルコール水で薄める(抽出液1:アルコール水99)
  3. 薄めた液を激しく振盪させる→「1c」の希釈液が完成
  4. 1cの希釈液を、1:99の割合でアルコール水に薄める→振盪→2c

・この作業を繰り返すことで、30c(基本)の希釈液を作る
・希釈液を「ラクトース(ほんのり甘い乳糖の粒)」に染み込ませたものが「レメディ」となる

自然治癒力を引き出すホメオパシー

治療方法

ホメオパシーの治療は、適切なレメディを探し出すための問診から始まります。問診といっても病気の症状を聞くだけでなく、生い立ちから普段の暮らしぶり、性格やクセなど、使用するレメディを決定づける重要な情報をじっくり時間をかけて聞いていきます。

症状については、痛むのはからだの右側か左側か、水を飲む量、食事量、排せつ物の形・大きさ・柔らかさ、病気の症状は天気により左右されるかなど。ここではパートナーが日頃の観察内容をきちんんと獣医師に伝えることが大切になってきます。獣医師は問診内容と症状から適切なレメディを探し出し処方します。

バイタルフォース(自然治癒力)

レメディには副作用はありません。摂取したレメディがからだに合わなくても、物質のパターンがからだを通り過ぎていくだけなので、副作用が起きないのです。しかし、レメディを飲むことで一時的に症状が悪化することがあります。これはそのレメディの持つエネルギーが、からだの症状が発しているエネルギーと同じであるため、レメディが入ることにより症状が強くなったサインです。病気の症状を強くすることにより、自然治癒力を高め、自分の力で病気を押し出していきます。これが「毒をもって毒を制す」と言われるゆえんです。このような自然治癒力のことをホメオパシーでは「バイタルフォース」と言います。

動物は人間と違って余計なことは考えない素直な生き物です。「こんなもので治るわけがない」などと考えたりせず、「甘くておいしいものがもらえる」と薬の時間が楽しい時間となるでしょう。病気だからこそ以前よりもっと意思疎通ができるようになるのです。病気を憎まず、お互い前向きな気持ちを持つことで、自然治癒力を更にアップさせることができるでしょう。

レメディの使用方法

レメディは、見かけは小さな砂糖玉です。しかしその扱いにはある程度の注意が必要です。

  • レメディを飲ませる際の注意
    ・先が丸くなったピンセットを使用
    (レメディはパートナーが素手でふれないように注意しましょう)
     ピンセットにレメディを一粒はさみ、口元に持っていき食べさせる
    ・レメディを飲ませる前後20分間は、水や食事を与えない(牧草も)
    ・数種類のレメディを飲ませる際は、指示された回数、時間、量を守って与える
  • 治療中の様子を観察ノートに記録
    ・レメディを与えた後、どのような反応があるのか、その症状を細かくノートに記載する(トイレに行く回数、水を飲む量、食事量、症状の変化があるか、反応が見られないなど)
    ・観察した内容は次回の検診時に報告する
  • レメディの保管場所の注意
    ・温度:レメディは直射日光を避け、0~40℃の冷暗所に保管する(冷蔵庫に入れてはダメ)
    ・香り:強い香りはレメディに影響を与えるため、香水や食品庫などの近くで保管しない
    ・電磁波:強い電磁波(PC、家電製品)の出ている近くには保管しない

O(オー)リングテスト

O(オー)リングテストとは、親指と人差し指でアルファベットの「O(オー)」を作り、もう片方の手で調べたい部位を触り、別の人がこのOリングを引っ張り、指を開く力の強弱から調べたい部位の状態を知る病気診断法です。
Oリングテストは、健康状態だけでなく、食品をはじめとする様々なものを調べることができるとされ、ホリスティック医療においては、Oリングテストを用いて、薬などの照合テストを行います。
うさぎはこのOリングテストに正直に反応を示します。例えば、苦くてまずい漢方薬も自分のからだに必要と思ったら、容易に受け入れるものですが、逆にからだに必要のない薬には「いらない」という反応を示しましす。ホリスティック医療を実践している獣医師は、このような方法を使ってよりからだにマッチした薬を選択していきます。

Oリングテストの由来

Oリングテストの発明者はニューヨークの心臓病研究ファウンデーション研究所所長、大村恵昭(おおむらよしあき)教授。生体自らをセンサーとして、生体内の情報を指の筋力変化から検出する診断方法を確立しました。すでに欧米各国では、多くのドクターが積極的に臨床に取り入れ、治療に役立てています。Oリングテストは、1993年アメリカ特許庁において知的所有権が認められています。

(注意)Oリングテストは医師によって医療目的に開発・研究されてきたものです。医療資格のない方が他人を診断することは医師法違反行為となります。

Oリングテストのやり方

(出演者)
●診察台の上にうさぎ
●獣医師など検査する人
●Oリングテストを受けるのはうさぎの飼い主であるパートナー(右手が利き手)

  • うさぎのからだの上にパートナーが手を置く
  • 左手とうさぎのからだの間に薬を挟む
  • 右手は、指で「O(オー)」を作る。親指と人差し指を使用
  • Oリングを使った指先に力が入らないように注意
  • 検査をする獣医師が右手の後方に立ち、親指と人差し指の第一関節と第二関節の間に指を挟み、エキスパンダーを左右に引くように水平に引きOリングの強さを確かめる
    (常に一定の力で輪を引くのは意外と難しい。医学的知識も必要のため、正確な判断を求めるのは素人では無理。熟練の技が必要)
  • 薬が適合していれば、指先で作ったOリングはなかなか開かない
  • 薬が適合しない場合は、Oリングは簡単に開いてしまう

(注意点)
Oリングを作る役目のパートナーは、指輪、ネックレス、時計など貴金属はすべて外す
テストを受ける前は、テレビ、冷蔵庫、パソコンなどの電磁波の出ている機器から離れる

Oリングテストイメージ

バッチフラワーレメディ

花のエネルギーが病気を治す手助けをしてくれる

バッチフラワーレメディは、イギリスの医師であり細菌学者であったバッチ博士によって完成された「癒しのシステム」です。
バッチ博士は、精神の不調和がからだのトラブルへと形になって現れる前に治療するという、病気予防の原点とも言える発想にたどり着き、研究を重ねた結果、38種類の花のエネルギー(一つは石清水)が、からだの不調和を招くすべての感情に対応できることを発見しました。この38種類のレメディを「バッチフラワーレメディ」と言います。

レスキューレメディ

マイナスの感情

1930年、バッチ博士は感情の乱れと本来の調和がとれた精神状態を見つめ直すことで、病気の原因となりうる感情は、7つのカテゴリーに分類できるということを発見しました。
これらマイナスの感情を残したままでいると、からだの組織や器官に何らかの影響を与え、っそれが病気となって現れる。しかし、マイナスをプラスの感情に変化させ、精神状態が改善されることにより、本来誰もが持つ自然治癒力が発揮されるという理論を打ち立てました。

病気の原因となる7つのマイナスの感情

  • 恐れ
  • 不確かさに悩む
  • 現実への無関心
  • 淋しさ・孤独を味わう
  • 周囲への過敏さ
  • 失意、失望、落胆
  • 他人の幸福を(神経質に)気にしすぎる

38種類のレメディ

バッチ博士は、どのようにしてマイナスの感情をプラスの感情に変化させていったのでしょうか?その答えは野生の植物が持っている純粋な花のエネルギーを体内に取り込むことでした。まず自然の中にあるもので毒性のないものからレメディを作り出そうと考え、花びらに付く朝露を飲み、感情面の変化を書き留めるという気が遠くなるような作業から始めたそうです。

最初に完成されたレメディは「ミムラス」「インパチェンス」「クレマチス」の3種類。やがてレメディは38種類となり、その内37種類は野の花、1種類だけ石清水より作られています。それぞれのレメディには、どのようなマイナス感情の時に選び出せばいいのか、そしてそのレメディを飲むとどのようなプラス感情が生まれるのかが定められています。

(例)

ホリスティック医療にバッチフラワーレメディ

ホリスティック医療の現場では、病気に打ち勝つ強い力が得られるとし、バッチフラワーレメディを治療の一環として広く取り入れています。主な目的は、動物の抱えるストレス軽減、病気の治療補助。また入院中の動物にも環境の変化によるストレスを減らす目的で使用します。
調合するレメディはその感情の状態に合わせて選び出されますが、最大7種類までのレメディを混ぜ合わせて調合してもよいとされています。

感情を意識する

うさぎの行動は、どのような感情によって左右されているのでしょう。うさぎは個性豊かで感情の赴くままに行動します。外面に現れている行動が攻撃的な行動だからといっても、内面にひそむ感情は怒りだけとは限りません。むしろうさぎがパートナーを独占したい気持ちが強すぎて、構ってくれる時間が短いと抗議の意味も含めてその感情が攻撃的な行動となって現れることもあります。このようにうさぎの行動を単純に怒りからくるもの、不安からくるもの、恐れからくるものと決めつけるのは危険ですが、うさぎの様子を細かく観察することで本来の感情が見えてくることも大いにあります。うさぎの行動を観察する時には、周りの状況も含めてうさぎの感情を意識してみましょう。

専門家と相談する

うさぎのある行動がマイナスの感情からの現れと思われた時には、それに適合しているレメディを選び使ってみましょう。そのうさぎにとって適切なレメディを選ぶにあたっては専門家に相談し指示を仰ぐとよいでしょう。

バッチフラワーレメディの作り方

バッチフラワーレメディの作り方には「太陽法」「煮沸法」の2種類があります。
・「太陽法」早朝摘まれた花をガラスのボウルに入れ、湧き水を入れ3時間太陽に当てる
・「煮沸法」湧き水を入れた鍋に植物の枝などを入れ、約30分間煮る それぞれに抽出された液体は「母液」と呼ばれ、水質保存液(日本ではグリセリン)で希釈した後、ストックボトルにボトリングします。

バッチフラワーレメディの形状

レメディには、主にストックボトルに入ったものと、トリートメントミキシングボトルで調合する2種類の飲ませ方があり、その他にどうしても液体で飲ませることのできない場合には、クリーム状の患部に塗れるタイプと、スプレー式の直接吹きかけるタイプもあります。

バッチフラワーレメディの使い方

レメディは、実際どのように使えばよいのでしょうか。

●1回に与える量
ストックボトルの場合:通常レメディ2滴、レスキューレメディ4滴
トリートメントミキシングボトルの場合:4滴
●与える回数…1日4回以上(朝、昼、晩、寝る前の4回は必ず)。一時的な感情には、それが治まるまで何回か連続して摂る。
●与える期間…獣医師とカウンセリング。観察しながら3週間が1クールで変化の状態により、そのたびにレメディを変えながら継続する。
●与え方
口の中に直接たらす。
口のまわりにつける。
毛づくろいの際になめる場所につける(前足)。
飲み水や、餌に混ぜる(水は交換するたびに入れると効果的)。
マッサージする際に手にとって耳の後ろや、上半身の毛づくろいでなめる場所につける。
(1回に与える量は4滴以上は効果がなく、与える回数を増やした方が効果は早く現れる)
緊急時でレメディが飲めない場合は、口の周りにつけてあげる。

ケーススタディ

ホリスティックの医療現場で、バッチフラワーレメディがどのように使われているのか、ほんの一部ですが具体例を見てみましょう。

観察日誌
□レメディを与えた時間を記載する(きちんと与えられているか目安になる)
□行動の変化を記録する
□感情を1~5までの点数で表し、どのような出来事があったかを記録する
【1:最悪(マイナス)、5:最高(プラス)】

出典/うさぎと暮らす ホリスティックケア。うさぎと健康に暮らすための部位別マッサージなどが紹介された一冊です。現在Kindle版で読めます。アマゾンからご検索ください。

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