うさぎの健康

手のかからない?仔うさぎの育て方②

うさぎとの暮らしは、うさぎと出会った瞬間から始まります。しかし仔うさぎの愛くるしい仕草に魅了され、どんなわがままでもつい許してしまう飼い主になっていませんか? これでは抱っこはおろか、トイレのしつけや爪切りすらできなくなってしまうかもしれません。そこで仔うさぎのうちに『あること』をすることで、手のかからないうさぎへと成長する可能性があるのです。仔うさぎの育て方で気を付けることを紹介します。(『うさぎと暮らす』17号より改編)

育て方にヒントあり。なで方・抱っこのコツ

環境を整える

最初に仔うさぎを迎えた時は、まず新しい環境に慣れさせるところから始めなければなりません。仔うさぎによっても反応は違いますが、3日~7日はびくびくと怯えて過ごします。
まずは快適に過ごせるよう環境を整えましょう。うさぎの環境作りで何よりも大切なことは、清潔さを保つことです。常に新鮮な牧草、ペレット、水を用意しましょう。最初の3~5日ほどは、ケージの床に牧草を敷き詰めて過ごさせてあげると、環境が変わったことのストレスを軽減させられます。

また話しかけてあげることは大事ですが、うさぎがびっくりするような声や音を出したり、無理やりさわろうとする、といった行為はNG。

気持ちを落ち着かせてあげる一例として購入先のショップでかかっていた聞き慣れた音楽をかけてあげたりするとよいかもしれません。
仔うさぎが新しい環境に慣れてきたら、少しずつ段階的にアイテムを増やしていきましょう。それが、飼い主とのコミュニーケーションを取るきっかけになります。

ペットショップからお迎え直後のうさぎ(イメージ)

抱っこは嫌い…?

なぜうさぎは抱っこを嫌がるのでしょう? 捕食される動物であるうさぎは、抱っこされることにより捕らえられたと思い込み、その場を逃げ出そうとするからです。また、足が宙に浮いた宙ぶらりんの姿勢が苦手な場合もあります。
うさぎは安心できる場所でくつろぎます。抱っこされている人間の腕の中が安心できると思ったら、逃げたりせずおとなしくじっと抱っこされています。
またうさぎは広い場所を駆け回ることが大好きです。そのため、最初の1ヶ月間の育て方が重要になってきます。ケージの出入りは抱っこのみで行い、それ以上の行動は我慢してもらいましょう。「抱っこ=安心」「ケージ=安全な住処」と思ってもらえることができれば、徐々に行動範囲を広げましょう。

慣れれば抱っこ好きになるコも

ケージへの戻し方

ケージに戻す時は、サッカーボールを両手で持つかのごとく、うさぎの身体を横から支え持ち、うさぎのお尻側から(うさぎと向かい合った状態で)ケージにスムーズに戻しましょう。ケージの扉の入り口が狭いと、背中を扉上部に引っ掛けることもあるため注意しましょう。
この際、怪我をさせては大変、と飼い主が緊張してしまうと、うさぎにもその気持ちが伝わりかえって危険です。うさぎの後ろ足は想像する以上に力が強く、宙ぶらりんの姿勢で後ろ足をばたつかせると、両手でしっかりと身体を支えていても支えきれないほどです。落ち着いてしっかりとうさぎの身体を支え持ち、スピーディにケージに戻せるようにしましょう。

抱っこの仕方

①ケージ内にいるうさぎを持ち上げる時は、うさぎの足がばたつかないように、特に扉をくぐらせる時は後ろ足がケージに引っ掛からないように気をつける。
②ケージから無事にうさぎの身体を持ち上げることができたら、そのまま素早く人間の身体と向き合ようにする。この時、うさぎが暴れて床に落下するのを防ぐため、できるだけ座った姿勢で練習する。
③うさぎのお腹を人間の身体にくっつけた状態で、お尻を持つ手を利き手と入れ替え、利き手でうさぎの背中を優しくなでる。うさぎを身体にくっつけ、お尻をしっかりと支えていればうさぎは安心できる。

仔うさぎへの接し方

毎日接していると、仔うさぎがかまってほしいと思う時は、飼い主がケージに近づくだけでそばに寄ってくるようになります。そんな時は仔うさぎが気持ち良くなるように身体をなでてあげましょう。
仔うさぎの身体は小さいため、手のひらを真上から振り下ろすだけでびっくりして、怯える場合もあります。まず声をかけた後、仔うさぎと同じ目線になって、ゆっくりと身体をなでてあげましょう。

●ポイント

○抱っこができるようになる育て方
家にお迎えしてからの最初の1ヶ月間は、ケージ内で過ごさせる。うさぎとの交流は抱っこのみにする
…1ヶ月間ケージ内で過ごさせることで、トイレの場所をきちんと覚えることができます。また同じ場所で長く過ごすことで、そこが最もくつろげる場所となります。その間の飼い主との交流を抱っこで行えば、飼い主とふれあい、なでてもらえると覚え、抱っこしてもらうのが楽しいと思うようになります。

○うさぎの身体の抱き方
・利き手でお尻側から後ろ足がぶらぶらしないように手のひらで包み込むように持ち、お尻を支える  ・反対側の手をうさぎの前足と後ろ足の間に入れ、前足を補助する
…飼い主が上手に抱っこできれば、うさぎは飼い主を信頼してくれるでしょう。うさぎが手の中で暴れたとしても、すぐに手を離さないでください。暴れた時に手を離すことにより、うさぎは暴れたら抱っこから逃げられると学習します。うさぎが安定するように、身体をしっかり支え持ちましょう。

抱っこがポイント!うさぎのお手入れ

爪切り

うさぎの爪は定期的に切りましょう。月に1度は爪の長さをチェックすると良いでしょう。爪が伸びてくると、抱っこした時に人間の腕に痛く食い込んできますので、それを爪切りの目安にするといいかもしれません。
うさぎの爪には血管が通っているため、切りすぎると出血することもあります。出血させた場合は、ただちにペット専用の止血剤を使用します。爪を切る箇所は、血管が通っている1~2ミリ手前を切りますが、爪の色によっては血管がまったく見えません。その場合は、足の下からライトを当てたり、日の光の下で血管の位置を確認してから行うようにしましょう。
爪切りを嫌がり暴れてしまうコには、なわばり以外の場所で行うと効果的です。うさぎの爪切りは飼い主がしてあげるのが一番。小さい頃から抱っこに慣れさせ、仰向け抱っこを習慣づけていれば、仰向け抱っこするだけで爪切りも楽にできてしまいます。終わった後には頑張ったご褒美(大好物)をあげてもいいかも…。

①抱っこの手順でうさぎを抱っこした後、うさぎの身体を仰向けにする。うさぎが身動きできないように、脇の下を締めて、腕全体とお腹でうさぎの身体を支える。うさぎが小さいうちは、膝も立てて支えると良い。
②うさぎの身体を支えている方の手で前足、後ろ足の指をそれぞれ広げて持ち、うさぎ用爪切りで切る。

ブラッシング

うさぎの毛は、夏の暑さ、冬の寒さの気温変化に対応するために、身体全体の毛が入れ替わり(換毛)ます。換毛する時期はうさぎが暮らしている環境によりさまざまですが、気温の変化を感じ始めると始まります。
仔うさぎの身体は、大人うさぎとは違う「ベビーファー」と呼ばれる、羽毛のように柔らかい毛で覆われています。これは、小さな身体から体温が奪われないようにするためで、成長するにつれ大人の毛(アダルトファー)へと換毛します。新しい毛が生えやすいように、毎日ブラッシングしてあげましょう。
小さいうちからブラッシングを習慣づければ、ブラッシングがストレスと感じることなく、飼い主とのコミュニケーションのひとつとなり、ご褒美がもらえる楽しい時間となるでしょう。
お尻の肛門付近や、後ろ足の裏は特に汚れやすい部分です。うさぎの皮膚は湿気に弱く、尿で汚れたまま気づかないでいると、皮膚病につながることもあります。しっぽの付け根付近は、周りの毛をふわっと立ち上げながらブラッシングすると、空気が送り込まれて湿気を防ぎます。

①首から背中への部分のブラッシングは、首の付け根から開始。毛の根元にコームをセットしたら、毛を真上に立ち上げるようにし、毛の流れにそってとかす。  
長毛種の場合は、毛先が細かいフェルト状(被毛が固まって縮れる)になりやすいので、はさみでカットして取り除くようにする。短毛種は、抜け替わり部分で色が変化しているので、抜け変わり部分を中心に行う。たくさん抜けるからといってやりすぎると、はげてしまうこともあるので注意。
②ブラッシングする時は、うさぎの足が滑らないよう敷物(裏に滑り止め加工を施しているなど)を用意。
背中からお尻にかけては、しっぽの付け根よりブラッシングを始める。コームで根本より、毛を上に立ち上げ、手で毛の根本を押さえ、しっぽの方向に毛の流れにそってとかしつける。毛の根本から浮いてきた毛がブラシで取りきれずに、そのままにしておくと、仔うさぎが飲み込んで危険なので、必ず手でつまんで取り除く。
●ポイント

○爪切り
・抱っこができること
・支える方の脇を締め、手とお腹でうさぎが身動きできないように支える

○ブラッシング
・ベビーファーが落ちるまでは毎日行う
・換毛期は特に念入りに

ストレスに強くなる 仔うさぎの育て方

快適温度を保つ

うさぎは環境の変化に敏感なため、ケージの設置場所は、部屋の隅などうさぎが落ち着ける場所に設置しましょう。通気性が悪い場所や、冷風や温風が直接当たる場所は避けましょう。
成長期(生後6ヶ月、体重増加が緩やかになる頃まで)は、暑さ、寒さなどの突然の気温の変化に対応できず、体調を崩すことがあります。

うさぎが快適に暮らせる温度は、20℃前後とされていますが、うさぎの種類によっても多少違いがあります。耳が垂れている種類は、暑さに弱く熱中症になりやすいため20℃前後に保つ必要があります。耳が立っている種類は、比較的暑さにも強いと言われていますが、耐えられる温度は個体差があります。人間が暑くて不快と感じるほどの温度は、うさぎにとっては耐えることができないほど辛いもの。うさぎに合わせて、快適温度を保つようにしましょう。
急激な温度変化、湿度の上昇は、ストレスとなり、皮膚の状態を悪化させたり、食欲不振につながります。快適な気温と湿度が保てるように、温湿度計を設置して管理しましょう。また仔うさぎは寒さに弱いため、突然の気温低下にも対応できるように、早めに寒さ対策のヒーターを設置しておきましょう。

ストレスに強くなる秘訣

うさぎは生後半年で大人へと成熟します。家に仔うさぎを迎えたら、母うさぎが仔うさぎにしつけるように、時には厳しく、またある時は優しく、仔うさぎをしつける母うさぎのように、飼い主がその役目を果たしましょう。
うさぎにとってどんなに嫌なことをされても、飼い主との信頼関係ができていれば嫌われることはありません。信頼関係を築くには、うさぎが安心できる環境と、神経質にかまいすぎない、かといってずぼらにならない関係がちょうどよいのです。
うさぎは、大人になると新しいことを受け入れるのが難しくなります。好き嫌いが激しく、頑固になるうさぎもいます。生後半年までの成長期は、仔うさぎにとって色々なことを学習し、吸収することができる大切な時期です。小さい時からの習慣づけによって、ストレスに感じる原因を少なくし、ストレスに強くなってもらいましょう。

ストレスの原因と対策
原因対策
移動病院に行くなど外に連れ出す機会は必ずあります。成長期に外出するようにして、移動手段に慣れさせましょう。
初めての場所なわばり以外の場所は緊張し、極度の疲労とストレスをともないます。安心して過ごせる場所を確保してあげることで緊張感は和らぎます。初めての場所に連れ出す時に困らないように普段からキャリーに慣れさせておきましょう。
音に対して非常に敏感な仔うさぎもいますので、日常の生活音に少しずつ慣れさせることで、音への反応が減少しさせましょう。
レイアウトケージでは足を伸ばしてリラックスできるスペースを確保しましょう。
飼い主かわいいからといって見つめすぎたり、かまいすぎると、うさぎは身体を休めてリラックスできなくなります。一緒に遊ぶ時は遊ぶ、寝ている時は放っておくというメリハリをつけてふれあいましょう。
薬の服用ケガや病気により、薬を飲まなければいけない状況になった時に困らないように、小さい頃からジュースなどの好物をシリンジやスポイトで与えて慣れさせておきましょう。

キャリー内にうさぎを入れる場合は、うさぎの後ろ足がばたつかないようにしっかりと後ろ足を支えて持ち、うさぎと向かい合わせになる。うさぎが、キャリーを意識することないように、お尻を向けてキャリーが見えないようにするのがポイント。

●ポイント
  • 1日の中の温度差をできるだけ少なくする
  • 仔うさぎのうちにストレスを習慣づける

※仔うさぎの育て方③に続く