7月発売号で報じた「兎ウイルス性出血病」は今年7月1日、家畜伝染病予防法改正の施行と同時に、法律上の呼称が「兎ウイルス性出血病」から「兎出血病」に変更になりました。
以下はうさぎと暮らす8月発売号で山崎恵子先生がご執筆くださった兎出血病の情報です。雑誌掲載から日が浅いので本来は雑誌を読んでいただきたいところですが、うさぎと暮らす方々には情報共有が必要かと思いますので、こちらでも紹介させていただきます。
うさぎ出血病は、感染すると怖い病気ですが、より多くの人で情報を共有し、予防に務められることがあればするべきかと思います。まずはアメリカでどのような発生状況だったかをお伝えいたします。
ワールドラビットストーリー ーうさぎと暮らすNo.77 よりー
山崎恵子さん
心配なニュース ウサギ版の新型コロナが米国で発生
「兎出血病」
NYで起きた事例
今年の2月にニューヨーク市内でうさぎの診療をしている最も有名な獣医科病院、マンハッタンにあるCenter for Avian and Exotic Medicine(鳥類/エキゾチックペット医療センター)で預かり中のペットのうさぎが突然死しました。たった一泊の預かりでしたが高齢であったために大きな騒動にはなりませんでした。私たちもよく知っているように小鳥やうさぎなどの小動物は限界に達するまで症状を示さず、いざそれが出た時には手遅れ、という場合が非常に多いので仕方がない、と受け止められてしまったのでしょう。
しかしその夜に立て続けに瀕死の状態にあったわけではない若いうさぎも2匹死んでしまったのです。これは何かおかしいとフードや備品などをすべて廃棄するなどの対策が取られ始めたのですが、結局同センターでは2月中にさらに8匹ものうさぎが死んでしまったのです。その原因がようやく判明したのですがそれは俗に「うさぎのエボラ」とまで言われたウイルス性の病気だったのです。うさぎの出血性の疾患、兎出血病[Rabbit Hemorrhagic Disease(RHD)]が病院内で発生していました。この疾患の診断は非常に難しく、倦怠感、発熱、呼吸困難などの症状がある場合もありますが全く症状がなく突然死んでしまうこともあるのです。さらに治療方法もなく、死亡率はほぼ100%であるということです。
ワクチンの普及はどうなる?
またこの疾患を引き起こすウィルスは極めて強く、乾いた布のような表面についたものが100日間活性を失わなかったという例もあるほどです。冷凍しても死滅せず、冷凍のうさぎ肉をレストランなどで扱った後にそれと接触した野菜くずなどをうさぎに与えるだけで感染を引き起こしてしまうようです。またうさぎの毛皮やアンゴラうさぎの毛糸などに付着し生き続けていることもあります。
米国では外来の疾病とされておりどこから国内に入ったのかは不明です。第一感染者、いわゆるラビット・ゼロ、を探そうとしたニューヨークの専門家たちが調べてみるとすでにワシントン、アリゾナ、テキサス等々いくつもの州で発生していたことが判明しました。
ワクチンはあるのですが米国内の病気ではないことからワクチンを輸入・販売する許可を取っているところが国内にはなく、国は慌てて緊急輸入の許可をするという措置を講じました。しかしそこに人間のコロナで世の中が混乱に陥り、予防接種を行うにもクリニックに飼い主に来てもらうことさえ難しくなっていったのです。さてこの先どうなっていくのか…。非常に心配です。
参考:6月29日/The New Yorker誌/Susan Orlearn記者の記事から一部転載
次回は国内での発生状況について取り上げます。ぜひご覧ください。