犬、猫を販売するペットショップやブリーダーに対し、この6月1日よりマイクロチップの装着が義務付けられます(改正動物愛護管理法)。災害時や何らかのハプニングによっておうちからペットが逃げ出してしまった場合、マイクロチップに個体識別番号をデータベースに照会することで、飼い主さんの情報があきらかになります。うさぎは法改正に対象ではありませんが、飼い主さんが希望すれば装着することができます。今回はマイクロチップについてご紹介します。
法改正で変更になること
災害時など、想定外の事柄が起きた場合、大切なペットと離れ離れになってしまうことがあります。そんな時に役立つのが、マイクロチップです。
法改正によってこれからお迎えする犬、猫。あるいはすでにマイクロチップが装着されているペットをお迎えした場合、30日以内に指定登録機関に飼い主さんの情報を登録しなくてはなりません。
改正前から飼育している一般の犬、猫に関しては飼い主さんができる限り装着するよう努力する必要がある(努力義務)、とのことです。
マイクロチップとは
動物の安全で確実な個体識別(身元証明)として欧米をはじめ世界中で広く使用されています。マイクロチップは直径2mm、長さ12mm程度の円筒形の中にアンテナ、IC部が内蔵されています。外側は生体適合ガラスを使用した電子標識器具です。
体内に埋め込むことで、迷子札や首輪のように外れてしまう事がない点でも安心です。
参考/AIPO事務局
マイクロチップを利用した犬・猫等の家庭動物の個体識別を普及推進しているのがAIPOです。(財)日本動物愛護協会(社)日本動物福祉協会(社)日本愛玩動物協会(社)日本獣医師会の4団体によって平成14年度から構成された組織です。
装着されたペットにマイクロチップリーダーをあてると、画面に個体識別番号が表示されます。国コード、動物種コード、メーカーコード、個体番号等が組み合わされた世界でただ一つの番号です。番号から即座にマイクロチップを装着した動物と飼育者の電話番号等の検索が可能です。そのデータは日本獣医師会のデータベースで管理されています。
装着方法
動物病院などで、獣医師さんが、注射器より太い専用の注射器を使って皮下に埋め込みます。皮下に打つので、通常の注射と痛みはほとんど変わらないと言われています。
装着後は、獣医師さんからデータ登録完了通知書がもらえます。こちらにID番号が記載されています。
装着可能な年齢
犬は生後2週齢、猫は生後4週齢から埋込みができると言われていますが、個体差がありますのでかかりつけの動物病院の獣医さんに相談してみましょう。
装着部位は?
犬、猫の場合は背側頚部(正中線よりやや左側)の皮下深部とされています。
副作用は?
マイクロチップのガラス表面には副作用がない材質が使われており、獣医さんなどが正しく装着すれば動物の体に負担をかけることはありません。不安がある方は獣医さんとよく相談するとよいでしょう。
日本獣医師会の下記のページでは安全性について詳しく述べられており、参考にしてみてください。
費用は?
動物の種類や動物病院によって異なりますが、数千円~1万円くらいが一般的です。
また、埋め込まれたマイクロチップ番号等を登録し、動物の逸走時等に備えるための登録料は別に1,050円かかります。
茨城県、町田市、横浜市などでは、マイクロチップ推進事業を行っていて費用の一部を負担してくれる制度もあります(期間限定)。
飼い主さんの声
日本トレンドリサーチさんの今年1月の統計によると(犬・猫の飼い主さん2000名にアンケート)、55.9%の方が「かわいそうだからマイクロチップを装着させたくない」という回答だったそうです。
一方で、26.5%の方が「逃げてしまったときにどこの飼い主かわかる」「飼育放棄をなくすため」といった理由からマイクロチップの装着を悩んでいるという声がありました。
ペット保険「PS保険」さんが4月、契約者約2000名に調査したところ、実際に装着している犬猫の内訳は犬が6割、猫が3割だったそうです。
飼い主さんそれぞれのお考えがあることと思いますが、ペットのオーナーとしてたくさんの情報を得ていく必要があると思います。
すでに実績も…
ペットの多くが迷子などになって、野外での生活を味わうと、おうちにいた時とは一変、表情が変わってしまうことがあります。つまり見つかったとしてもよくいるタイプの場合だと「うちのこ」だという確信が持ちにくい場合があります。こうした時もマイクロチップは役立ちます。
実際に保護されて動物病院に連れてこられた迷子のペットに獣医さんがリーダーをあててみたところ、飼い主さんが判明したという実績も上がっているそうです。
マイクロチップのペット動物への埋込みは、ここ数年世界的に大きく普及してきています。ヨーロッパでは早くからマイクロチップが採用されており、EU全域では2千5百万頭くらい埋込まれていると言われています。また、アメリカでも1千万頭近く埋め込まれているとされています。近年、ヨーロッパやオセアニア、アジアの一部では、行政機関によるマイクロチップの埋込みの義務化が急速に進んでいます。特に、生態系に特殊性のある島国や、狂犬病予防に力を入れている国などでの義務化が多く見られます。
うさぎの場合…
うさぎは声帯がないので(鼻はならします)鳴き声がないことから「飼いやすいペット」とされており、人知れず飼育している方が多いです。また、繁殖力が強い動物であることから雄雌の少々の接触で妊娠し、子が増えてしまいます。結果として飼い主側の勝手な都合で、遺棄されてしまう事例も少なくありません。※遺棄・虐待は動物愛護法で厳しく罰せられています。
うさぎがマイクロチップを装着していることで防災時や迷子になった時にプロフィールがあきらかになるだけでなく、日ごろの飼い主さん自身の飼育責任が高まり、飼育放棄の抑止力になるでしょう。
シニアになって体力がない時や闘病しているうさぎには装着することはできませんので、健康な時にご家族やうさ友さん同士で「マイクロチップは必要か」という議題で話し合ってみてはいかがでしょうか。
なお、うさぎに装着をお考えの方は、避妊・去勢手術や歯科処置の麻酔使用時に行うことをおすすめします。適応年齢、挿入部位はかかりつけの獣医さんご相談ください。
我が家のうさぎの場合…
我が家のこだま(5歳・メス)は、2年前より避妊手術をする際にマイクロチップを装着しております。先代のホッピーから装着していて、その時も避妊手術時に麻酔をかけている状態でお願いしています。費用は1万円弱かかりました。毎度、信頼できる動物病院で行いました。挿入箇所は首です。
こだまは普段マイクロチップを装着しているということも忘れるほど、健康に過ごしています。
装着理由としては、現在、筆者は50代で横浜の1軒家に暮らしていますが、不在の時間が長いのでうさぎが1匹になってしまうこと。筆者が子供の頃と比べてあきらかに地震や大雨(水害)、停電などになることが増えていることなどから「いつも一緒にいられるわけではない」「つけておこうかな」と考えました。
またたくさんの読者さんから東北大震災や熊本地震などでうさぎとどのように避難したかといったというリアルな声をいただいており、自分は率先して装着すべきと感じました。
ただし、筆者自身が取材している中で、マイクロチップを装着しているといううさぎに遭遇する機会は少ないのが現状です。今後はもっと関心を寄せる方も増えていくでしょうし、かかりつけの動物病院の推奨の塩梅にもよるのかもしれません。
今後マイクロチップに対するいろんな情報を得た上で、それぞれのご家族の飼育環境、うさぎの月齢、健康状態など、多角的に見てどうすべきか判断していきましょう。