うさぎの健康

ウサギ出血病について その2

「兎出血病」は感染すると怖い病気ですが、みなさんで情報を共有し、予防に務められること(該当が疑われる個体を発見したら通報など)があればするべきかと思います。今回は国内の発生状況についてお知らせいたします。

トウホクノウサギ

第一回(その1)の記事はこちらをご覧ください。

ウサギ出血病について その1 7月発売号で報じた「兎ウイルス性出血病」は今年7月1日、家畜伝染病予防法改正の施行と同時に、法律上の呼称が「兎ウイルス性出血病」から「...

兎出血病とは何なのかー

カリシウイルス科、兎出血病ウイルス(カリシウイルス科ラゴウイルス属兎出血病ウイルス=RHDV)が原因で引き起こされます。急性かつ致死性の疾患で、うさぎの届出伝染病です。原因ウイルスが野生または家畜のうさぎに感染すると、元気消失、食欲廃絶、発熱、ときに神経症状、鼻出血などの臨床症状を示し、全身臓器の出血により数日のうちに死にいたります。

感染経路は口、鼻、粘膜からで、発症は数日の潜伏期間を経て発症します。無症状のまま突然死することもあり、致死率は40~90%と言われています。感染性が強く、4℃で225日、室温では105日も安定しているタフなウイルスです。

ウイルスは1型と2型に分類され、今回分離されたウイルスは2型で、2010年以降、世界的に流行し、国内でも分離されています。(1型は、若齢(5-6週齢以下)では主に不顕性感染(症状を示さない感染様式)であるそうです)。

日本での発症事例

日本では1997年に静岡で2型が確認され、1998年にウサギの届出伝染病に指定されています。1994年に発生したのち、全国各地で散発的に発生しており、届出伝染病に指定された1998年以降は2000年、2002年に発生報告がありました(家畜疾病図鑑より)。今回の2型は、最近では2019年に愛媛県、茨城県、千葉県、今年は岩手県、栃木県の施設で発症が確認されています。日本では今のところ、アメリカのような自然界、飼育ウサギを含む大流行は起きていないと考えられています。

このウイルスは人間やその他の家畜には感染しませんが、ウサギ同士は影響を受けるとみられています。できる対策としては、野生および飼育うさぎの異変に注意、感染を広げないための注意が必要です。発症すると有効な治療法はなく、摘発淘汰が基本だそうです。

ウイルス対策としては、アルコール系消毒剤には抵抗性を示します。エンベロープ膜状の部分構造)がないウイルスにも効果がある、塩素系、ヨウ素系、又はアルデヒド製剤の使用が適しているそうです。

発症が疑われる個体が見られた場合は下記の箇所が対応してくれます。

栃木県県南家畜保健衛生所 防疫課
TEL:0282-27-3611
FAX:0282-27-4144

まだまだ国内では情報不足であり、うさぎの牧草やフードの原料はアメリカからの輸入品が多いため、懸念する方もおられると思います。ウーリーさん、イースターさんのようにうさぎ用品メーカーも見解を発表しておりますので、気になる方はチェックしてみましょう。

このような状況ですので、国内ではどこからウイルスが侵入してくるかわかりません。おうちのうさぎを公園などでうさんぽさせる際はより注意が必要です。うさぎを地面にふれさせない、野うさぎの糞にふれないなど、これまでより細心の注意が必要となるでしょう。

本誌でご執筆いただいている一般社団法人アニマル・リテラシー総研代表理事の山崎恵子先生によれば、アメリカの政府機関APHIS(動植物検疫所の動植物衛生検査部)では個人や繁殖業者などを含むうさぎの飼育者すべてにバイオセキュリティを徹底させるよう呼びかけており、APHISが出した主要なガイドラインを以下にまとめていただきました。

飼育しているうさぎたちを守るためには

  • 他者のペットのうさぎや野生のうさぎとの接触を絶対にさせない
  • 不特定多数の人間に感染に対する防御策なしには接触をさせない(手袋、靴カバー、帽子、やオーバーオールなどの着用)
  • 基本、保護施設やそのほかのところからの新しい個体は受け入れないようにする
  • 新しい個体をどうしても受け入れなければならない場合には30日間の検疫期間を設けてから先住のうさぎと一緒にするようにする
  • キャリー等の飼育用の道具・備品を私有地から外部に出した場合には必ずその後持ち帰る際には消毒を徹底する
  • 自分が飼育している個体が急死したり、不審死を遂げた場合には必ず獣医師に報告することを怠らない
  • 遺骸の処理方法もしかるべきところに相談の上慎重に行うようにする

詳しい情報は英語表記ではありますが、Centerfor Epidemiology and AnimalHealth のサイトを検索してください。