みなさん、はじめまして。有田みかんで有名な和歌山県有田市でうさぎ専門店「キャロットハウス」を経営しています店長の松本(きゃろたま)です。
うさぎをオスメスで飼っている場合、へやんぽする時間やスペースを別々にしておかないと、予期せぬ妊娠や出産につながります。
飼い主さんの繁殖に対する意識も高くなってきているので、安易な気持ちで繁殖をする人はすごく少ない反面、出産についての正しいネット情報が少ないのが現状です。
「うっかり目を離しちゃったすきに交尾しちゃいました」とか「なんかお布団の中で赤ちゃんが動いているんですけど!!」と相談をされる方もいらっしゃいました。
この記事では、8年間で約80回の出産に立ち会った経験から、出産や子育てのことについてお話しします。
書き手/松本崇秀(和歌山県・キャロットハウス)
うさぎ専門店キャロットハウスは、ペットうさぎの飼育に関する相談や用品の販売をしているペットショップです。キャロットハウスでは、うさぎ用フードをはじめ、良質の牧草やさまざまな用品ををお取り扱いしています。みなさんの愛兎が健康で快適に暮らせるようにお手伝いいたします。
※編集部より:ここで取り上げる内容は家庭でのうさぎの妊娠と出産を推奨する目的ではなく、正しい知識を広めてもらうことを目的として取り上げております。
うさぎの交尾
うさぎの交尾は早ければ10秒もあれば終わってしまいます。
のんびりと時間をかけて交尾していると、野生界だと肉食動物の餌食になってしまうため、早急に交尾を終えなくてはいけません。
メスうさぎは、お尻を高く上げてオスうさぎを迎え入れます。
一方、オスうさぎは交尾の終わりに声を上げて横に倒れこみ、足ダンを繰り返します。
うさぎには人間のように生理がなく、交尾した後に排卵する動物なので、十中八九というくらい妊娠する確率は非常に高いです。
生理がないから、おしりから出血することがありません。
トイレやケージ内にティースプーン1杯程度の血が見られた場合は、子宮の病気か泌尿器の病気であることが多いので、すぐにかかりつけの獣医先生の診察を受けてください。
うさぎの妊娠と出産準備
うさぎの妊娠期間は1ヶ月(31日)です。妊娠期間中、お母さんうさぎには外見上ほとんど変化が見られません。
出産予定日5日くらい前に、「あれ、最近うちの子太った?」という程度。
胎動も目を凝らしてじっくり観察してみないとわかりません。
計画的に出産させる場合、交尾があった日から、25日目に巣箱を用意します。
キャロットハウスでは、100均で売られているプラスチック製の四角いざるを加工して使うことが多いです。
巣箱の中には、バミューダグラスを敷き詰めます。
チモシーよりもバミューダグラスの方が通水性にすぐれているので、出産後赤ちゃんうさぎの尿で汚れることを防げます。
なお、妊娠していたことに気づかず、部屋のどこかで出産した場合、そこがお母さんうさぎにとって一番落ち着ける場所なので、できる限りそのままの環境を維持することが望ましいのですが、どうしてもこの場所だと飼い主さんの生活に支障が出る場合は、やはり巣箱を用意して、バミューダグラスを敷き詰めて、赤ちゃんうさぎを入れてあげた方がいいです。
うさぎの出産
出産の直前に、お母さんうさぎは自分の毛をむしり始めます。
自分の毛と牧草が産床(うぶどこ)になります。
出産時間は、数時間であることが多いですが、ときには日をまたぐこともあります。基本的には飼い主さんが手伝うことはありません。
偶然出産しているところを見かけた場合、大きな声を出さずにそっと見守ってください。出産にまつわるトラブルも想定されます。
逆子である場合は、出てくるまでに時間がかかります。また、出産に時間がかかりすぎると赤ちゃんうさぎが窒息死する可能性もあります(逆子で過去に2例、わずかに出てきた後ろ足を手でゆっくり引っ張って取り出したことがあります)。
出産の最後に、お母さんは胎盤を食べます。これを「子食い」と勘違いする飼い主さんもいますが、最後の出産のお仕事なので温かく見守ってください。
また、妊娠直後から母うさぎはもう次の妊娠のための準備ができているので、オスうさぎと鉢合わせにならないように気をつけてあげてください。
赤ちゃんが生まれてから確認すること
小型品種ですと、赤ちゃんは1~5匹くらい生まれます。
まず、確認してほしいのが「赤ちゃんが動いているか」ということ。死産になることも多く、すでにお月様に帰った赤ちゃんは、巣箱から出さなくてはいけません。「お母さんが育児放棄をしているようなんですが」と相談される方も多くいらっしゃいます。
うさぎの子育ては、非常に放任的です。
1日のうち10分くらい母乳を飲ませに来る程度で、そのほかの時間は、巣箱の外で普段どおりの生活をしています。
赤ちゃんうさぎを素手でさわると育児放棄につながるというお話もよく聞きますが、キャロットハウスでは、わたしが素手で触って育児放棄につながったということはなかったので、そのあたりは過度に怖がらなくても大丈夫です。どうしても気になる方は、布軍手や調理のときに使うナイロン手袋を使ってください。
お母さんうさぎが、巣箱の外にいるときに飼い主さんが確認してほしいことは、「赤ちゃんのお腹がぷくっと膨れているか」です。
お腹がふくれている場合は、きちんと母乳が飲めている証拠。
逆に赤ちゃんがしわしわになっている場合は、何らかの原因で母乳が飲めていない状態です。母乳が飲めていないと判断した場合は、強制授乳や人工乳の給餌が必要です。
また妊娠・子育てをしている母うさぎは、通常よりも多くの栄養量が必要となるので、グロース用フードを与えます。
生後42日程度で親離れ
無事に赤ちゃんが成長すると、2週間ほどで目が開き、活発に動き始めます。また、生後20日くらいからは、牧草やペレットも食べ始めます。
ただ、牧草やペレットを食べ始めたからといってもまだまだ母乳が必要です。最低でも生後30日までは母乳を必要とします。
生後30日くらいになると、そろそろ母うさぎも育児の疲れも見え始めますし、順調に牧草もペレットも食べるようになるので、親離れの時期を迎えます。
ただし、いきなり1羽ずつ離してしまうと、ストレスを感じる赤ちゃんうさぎもいるので、最初は兄弟姉妹のみで、それから1週間後ぐらいに、1羽ずつケージに分けていきます。
望まない妊娠を避けるために
今回、うさぎの出産と育児に関して一般的なことをお話ししました。
男の子と女の子を飼っている場合、突発的な交尾と出産の可能性があることをご理解いただければと思います。また、望まない妊娠を避けるために、もう子どもを生まさないと飼い主さんが決断したとき、避妊手術を検討してみてください。麻酔や術後の予後不良といった越えなければならない問題もありますが、避妊手術をすることで、将来の子宮疾患の予防にもなります。
親うさぎや生まれてきた赤ちゃんに切歯不正咬合や開帳肢がみられる、親うさぎの鼻や陰部にかさぶたができた経験がある(うさぎ梅毒の可能性がある)場合、今後の出産でも障害や病気がうつる可能性が非常に高いので、妊娠・出産は避けるべきです。
最後に
今回、出産についてお話しましたが、出産は想定外のことも起こりやすく、毎回ひやひやどきどきしながら、わたしも対応しました。
キャロットハウスも開店から10周年を迎えて、お母さんとして頑張ってくれていたうさちゃんも引退し、静かに当店で余生を送っていることもあり、現在は仔うさぎの販売をほとんど行っておりませんが、少しでも皆さんのお役に立てればと、和歌山の片隅で祈っております。