本誌No.75の特集より簡易版でご紹介します。
うさぎにとって必要不可欠な「水」。かつてはうさぎに水を与えてはいけないという説がありましたが、実際はうさぎの命を左右するほど重要なものです。野生下の野ウサギやアナウサギも水たまりや葉についた露を飲んでいますね。今回より3回にわたり、うさぎにとても大切な「水」についてご紹介いたします。
取材協力・資料提供/中山ますみ(らびっとわぁるど)
監修/沖田将人院長(富山県・アレス動物医療センター)
うさぎは犬、猫より水分が必要
哺乳動物は、体重の約60%が水です。私たち人間とうさぎも同様です。例えば体重1kgのうさぎであれば、約0.6kgが水分ということになります(年齢・性別による脂肪の量で多少前後する)。動物細胞を構成する成分で最も多いものは水であり、続いてタンパク質、脂質、糖質などです。水は生命を支えているといっても過言ではありません。
体内の水分は血液などの姿で体中を循環しながら各細胞に栄養分や酸素を供給しています。また、代謝老廃物を排泄したり、体温・phの調節など、健康を維持するために重要な役割も果たしています。医学・生理学ではこれまで水と酸素は栄養素には含まれていませんでしたが、最近は栄養素とされています。
うさぎに必要な1日の水分量は、犬や猫より多く、1kgのうさぎでは120mlの水分が必要とされています。その理由はうさぎの食事は乾燥牧草や少量の野草など水分が少ないものが中心であることがあげられます。
排出した水分を摂取する
体内の水分は尿、ウンチ、呼吸から蒸発する水分によって排出されます。その分、必要量を補わなければ、脱水状態に陥ります。
うさぎ専門店らびっとわぁるどの中山ますみさんによれば「お客さまのうさぎの皮膚をさわっていると、時々あきらかに水分不足の子がおります。皮膚に張りがなくたるんでいて、元気もないように思います。シニアになった子に多いので、新陳代謝が悪くなったり、給水ボトルから飲むのがおっくうになって水の摂取量が減っているからではないでしょうか」と話します。
これには意外と飼い主さんも気づいていないのだそうです。飼い主さんがおうちのうさぎの水分量を意識して観察してみると、一日の平均摂取量よりも少ない場合があるかもしれません。
生野菜の水分
前述の中山ますみさんはこれまでうさぎの水分について独自で調査をしてきたそうです。そんな中で特に気になっていたのが『生野菜から摂る水分について』でした。
「水をあまり飲まずに、生野菜をメインにしているうさぎのウンチは黒っぽくて小さく湿り気があり、においもあって、おなかにガスもたまりやすいんです。飲み水と生野菜の水分、生野菜の繊維と一番刈りの繊維がどう違うのか気になって調べました。まず生野菜からうさぎの水分の1日必要量を摂取しようと思うと、相当な量がいることになります。また、たとえその大部分が水分とはいえ、たくさんの野菜を採りすぎると、その分おなかはふくれ、結果牧草の摂取量の低下につながりますい」。
ちなみに生野菜は水溶性の食物繊維(水に溶ける食物繊維)であり、小腸での栄養素の消化吸収を抑えて遅らせます。水分保能力が強く、ウンチを湿った粘りのある状態にします。
一方、乾燥牧草は「不溶性食物繊維」であり、水に溶けにくい性質を持っています。腸の蠕動(ぜんどう)運動を盛んにし、消化管を通過する時間を短縮させます。
生野菜を与えるときは量の加減に気をつけましょう。
次回は水を飲むための環境や給水ボトルなどについてご紹介します。