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USAKURA ARTの旅:向坂典子さん(陶芸家)

うさぎのアート作品を紹介していく「USAKURA ARTの旅」。今回は陶芸家の向坂典子さんです。

向坂典子さんの作品

向坂典子

静岡県出身。京都芸術短期大学専攻科卒業。卒業と同時に故・水上勉主宰の福井県にある若洲一滴文庫に移り住む。同内の若洲赤土舎の工房で陶器・張り子・柿渋染めの創作活動に励む。躍動感のあるうさぎ作品にファンが多い。全国各地のうさぎイベントや個展・グループ展でも精力的に活動している。(取材当時)

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うさぎ作品を手掛けるようになったきっかけは?

それまでは自然が主題で、動物でも犬を題材にすることはありましたが、うさぎ作品はうさぎを飼い始めてから徐々に作るようになりました。うさぎとの出会いは、福井に拠点を移した1988年、友人宅から帰ろうとした時に「お土産だよ」と半ば強引に譲り受けた白黒のmixでした。動物好きで一人暮らし、白羽の矢が立ったんですね(笑)。手足の先が白かったので(足袋のように)福助と名付けて可愛がっていましたが、外飼いが災いし、野生動物に襲われるという悲劇に…。つらい経験でした(以来、室内飼いを徹底しています!)。しばらくはうさぎのいない生活でしたが、ある時友人が預かることになったうさぎを見て、そのしぐさに心を打ち抜かれ「またうさぎを飼いたい!」とうさぎ熱が再発。その友人にも探してもらい、学校飼育で増えすぎて困っているうさぎたちと出会い、中でも一番かわいいうさぎを引き取ることにしました。その時引き取ったのがヒマラヤンで、人懐っこく、賢く、スレンダーで、カラーリングが美しい、何といっても野性味に富んでいて、すっかり虜になってしまいました。一般的なうさぎのように丸みを帯びた顔かたちではなく、シュッと突き出た顔のヒマラヤン。あの形にはまってしまい、自然とうさぎ作品を作るようになりました。

うさぎモチーフの作品に対するこだわりは?

マグカップや箸置き、張り子、染物など、私の作品はオリジナルの注文を受け付けています。うさぎのイベントや個展、インターネットで注文を受け付けた場合、必ず依頼主さんから自分のうさぎの一番かわいい写真を送ってもらっています。依頼主さんとしばらくやり取りする中で、ご要望とうさぎの性格や特徴も伺うようにしています。制作に入ったら、依頼主さんの喜ぶ顔、伺ったうさぎの特徴を思い浮かべながら制作しています。うさぎにはそれぞれの子にしかない形があると思っているので、それをできる限り表現してあげれるように努めています。作品を手にした方には、身近に置けるうさぎアートとして長く可愛がっていただけると嬉しいですね。

向坂典子さんの作品

作品でこだわっている点を教えてください。

私が拠点にしている若狭地方の山はおおむね赤土で、工房の裏山も赤土、この山をつるはしで砕き削り、ミキサーで撹拌し原土にしています。一般の陶芸用粘土と比べ収縮率が高く、癖のある土ですが、工房の主宰者であった故・水上勉が好んでいた土でもあるので、遺志を継ぎこの土でなければ表すことのできない風合いを生かした作品作りを目指しています。柿渋染は陶器の作品が映えるように敷物を染めたのがきっかけでした。それからオリジナルの手拭いを作ろうと、ろうけつ染めをしてみたり、絞り染めをしてみたり、試行錯誤いろいろトライしながら型染めに行き着きました。渋液の作り方は、兵庫県の紙すきをされている作家さんから簡単な工程を教えていただき、青い渋柿の採取に始まり、工程をとにかく一から挑戦してみることにしました。水が少なすぎて凝固したり、保管期間や方法を間違えたり、失敗も山ほど経験しました。今でも試行錯誤の連続です。市販の染料を使えば簡単にできますが、一からあつらえた渋液には愛着もあり、染めあがった布はなおさらいとおしく思います。張り子には竹でできた和紙を主に使っています。温かみのある風合いが好きで、自ら紙を漉くこともあります。日々自然との共存、自然を生かした素材選びに重きを置いて制作しています。