うさぎの健康

骨格・毛質に合わせた品種別ケア①

うさぎは品種がバラエティ豊かなことが魅力ですが、品種によって骨格、肉付き、毛質が異なるため、ブラッシングやケアをハウツー本で学ぼうとしてもなかなかおうちで反映しにくいと思います。そこで今回は数あるうさぎの品種に分けて、ケアの仕方をご紹介します。

監修/NIPPON RABBIT CLUB 宮崎優子、城幸一(『うさぎと暮らす』83号より改編)

はじめに…

うさぎ専門店のプロの技はおうちでは当然ながらできません。でも飼い主さんがその技を真似てみて、やれるだけのことはおうちでできるようになると、ケアのたびにお出かけといううさぎへの負担が負担が軽くなります。シニアになった時は特におうちのケアが望ましいでしょう。
プロの方にケアをしてもらう機会がある場合は、できるだけじっくりと観察したり、お願いして動画を撮らせてもらいましょう。わからないところは施術が終わったら聞くようにしましょう。記憶が新しいうちに復習です。

「当店(うさぎの都)の場合で言うと、うさぎのケアは、お店へ来る方とおうちでやっている方と半分・半分の割合です。平均でひと月に1回みえる方が多いでしょうか。私がケアをしているところを見て『おうちで実践できるように学びたいとかアドバイスがほしい』という方はあまりいらっしゃらないですね。やはりお店に来る方はケアはやってもらう、という意識が強いかもしれません。でも私自身は移動やシニアになったことも考えるとおうちでできるようになっていただくのは大歓迎なんですよ。ですから今回はできるだけよい方法をご紹介いたします」と城さん。
ただし、飼い主さんは自覚していないまま、ダニや梅毒などを保有しているうさぎが来店することもあるそうですから、定期的に病院や専門店の手でチェックしてもらうことは大切です。

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仔うさぎ時代に大切なこと

ホーランドロップやネザーランドドワーフは、適正体重であってもぽっちゃりと見えやすい品種です。けれども食事制限をしすぎては美しい体を保てません。特に体を作るための生後3~4ヶ月くらいまでしっかりとラビットフードを与えた方がよいと考えています。大人になってから骨格が華奢で肉付きが不十分だったりするのです。

よくさわっておく・遊ばせておく

どんなうさぎも本来抱っこが好きなわけではありません。ケアがしやすいうさぎは、たいてい小さい時から常にさわられることに慣れています。時にうさぎが嫌がることもヒトと生活する以上、必要なことですから覚えてもらわなくてはなりません。
またケージから頻繁に出して運動させておき、筋量を維持すること、遊びから得る楽しみを味わってもらうことが大切です。

すべての品種に共通するからだの話し

毛の構造

お尻から頭に向かって毛を逆なでるとゆっくり戻る「ロールバック」、すぐに戻るアンダーコートが薄い「フライバック」のタイプがいる。
避妊・去勢をするとホルモンバランスが乱れ、一年中抜けていたり、毛質が変わることがあります。

ロールバックの場合

抜け毛の順番

後頭部→首回り→顔や頭上→背中やお腹→お尻
※しっぽ・お尻周りは抜け毛がたまりやすい。

爪の色

前足と後足で爪の色が違う、右前足でも1本だけ濃い色の爪があるといったように爪の色には個性があります。これは被毛の色と関係があります。有色の被毛のうさぎは濃い爪色に、ホワイトの子は透明色になります。
ラビットショーでは、1本でも被毛と爪の色が違うと、失格や減点になります。

プライムライン

うさぎの被毛や肉付きのコンディションがよいときに出る背中の中央から腰にかけて出来るラインのこと。まるで着ぐるみのチャックのようです。飼い主さんの食事管理やブラッシングが行き届いている証でもあるでしょう。

涙が出るうさぎ

涙に悩んでいる飼い主さんは獣医さんの診察が必要です。不正咬合(歯のかみ合わせが悪い)が原因である可能性もあります。不正咬合は小型の骨格であごが小さいタイプのオスに発症しやすいようです。不正咬合があると歯根が鼻涙管を圧迫し、常に目ヤニや涙が出るため、涙ケアが欠かせなくなります。

道具

宮崎さん、城さんがケアのために愛用している両目クシ、スリッカーブラシ、コーム、爪切りをご紹介します。犬や猫用の用品も取り入れています。宮崎さんは長毛種のからみやすい毛や毛玉に対し、アメリカで購入したブラシ(H)を、爪切りは(E)を使用しているそうです。(H)は国内では「犬用毛玉取りブラシ」で同様の商品があります。

A・B=スリッカーブラシ(Aは犬用、Bはうさぎ用)、C・D=両目クシ(猫用。粗目と細目が1セット)、E=爪切り(ギロチンタイプ)、F=爪切り(はさみタイプ)、G=コーム(目元など用)、H=犬用毛玉取りブラシ

ネザーランドドワーフ

特徴/ARBAの基準はオス、メスともに1.13㎏未満、理想体重は906gとされています(6ヶ月以上の場合)。同品種でも1.5~2㎏近くになることもあります。国内ではオレンジが人気ですが、アメリカではブラックオターやチェスナットの方が評価が高いので国による好みの違いはあるかもしれません。
体型/コンパクトタイプ。体が全体が短く、足も短く、コンパクトな丸みのある体をしています。肩からお尻まで均等な幅をしています。ペットにされやすい型です。
/大きな丸い顔、ほっぺふっくら、鼻ペチャ(短頭種)、短い立ち耳です。
毛質/短毛。密集して生えている。ノーマルファー。お尻から頭に向かって毛を逆なでるとゆっくり戻る「ロールバック」。
性質/神経質で抱っこを嫌がる傾向がある。

ネザーランドドワーフ

ネザーランドドワーフのケア

<ケアする上での注意点>
保定に気をつけましょう。体が小さく、抱っこに抵抗するコもいるので、パタパタと暴れた際にぎゅっとつかんだり、落下に注意しましょう(骨折)。椅子などに座る場合は低いものに。

<保定>
仰向け姿勢には賛否ありますが、確実におとなしくなってくれる方法で手短に行うことが大切です。お膝にブランケットを敷き、膝の間のくぼみに体を沈ませます。
この姿勢で前歯をチェックしてみましょう。

<ハンドグルーミング(共通)>
うさぎの体を横にし、手にブラッシング用スプレーをつけ、手のひらを使って頭からお尻までなでます。次にお尻から頭まで戻します(逆毛)。
「アメリカでは、短毛種はブラシ類を使わずにグルーミングスプレーを手に取って、手だけのハンドグルーミングで仕上げているブリーダーも多いです。普段、抜け毛を取り除いたりする意味合いでのブラッシングはその程度であまり一生懸命やりすぎなくていいかも、と思っています」と宮崎さん。

<ブラッシング>
両目クシの細かい方を使って部位ごとにブラシをかける(少々強めに引っ張るようにかけてOK)。腰元・お尻周りは毛がたまりやすいのでしっぽやたるみがある場合は、お肉をめくってよくかけましょう。
「おなかの側ができないというご意見がよくあります。写真のように仰向けのままブラシをかけられればよいですが(お腹の毛は強く引っ張らない)、難しい場合はハンドグルーミングで十分です」。

<爪切り>
爪切りは自分の手に合ったものを選びましょう(ハサミ・ギロチン・ニッパータイプなどがある)。
まずは指一つをつかんで毛をかきわけて爪の状態を観察してみましょう。この状態でうさぎが激しく動いたり、起き上がってくる場合は、ご家族におでこをなでてもらったり、目を隠したり、介助してもらいます。心臓から遠いところから、おうちでは血管まで見極めるのは難しい場合、爪先から2㎜くらい、もしくは白いところのみを切りましょう。

爪は根元を持つこと。光にかざすと血管の位置が分かる
爪の白いところをカットします。誤って出血してしまったら根元をぎゅっと押さえましょう。すぐに止まります

<臭腺>
デリケートゾーンなので無理にやらなくてよいスポットです。肛門の脇に対になっている鼠経腺(そけいせん)に汚れ(分泌物)がある場合は綿棒で優しく取り除きます。(粘着している場合は、グルーミングスプレーやベビーオイルを綿棒につけて行う)。

臭腺の汚れがとれました!

<肛門チェック>
仰向けのまま肛門チェックをします。写真は男の子です。睾丸が二つともピンク色であるか、傷・かさぶたや腫れはないか確認しましょう。まれに睾丸が下りてきていないコもいます(停留精巣=この場合は病院で診察を受けましょう)。女の子の場合も同様に肛門の色味や傷・かさぶたや腫れがないかを確認します。

睾丸チェック

<お耳ケア>
正常姿勢でOKです。中がのぞきにくいので動物病院や専門店でおまかせするのもOK。白や黄色の垢が見えたら綿棒で届く場所(耳介)まで取り除きましょう。

監修/Nippon Rabbit Club
宮崎優子さん(ロップロップランド)、城幸一さん(うさぎの都)

※骨格・毛質に合わせた品種別ケア②に続く