うさぎの基本

品種クローズアップ「mixウサギ」(1)

統計的に国内にいるうさぎの品種はmixがたくさんいると考えられます。このmixうさぎというのは、どういううさぎを指しているのでしょうか? 名称もショップによってミニウサギ、スーパーミニウサギ、ピーターラビットなど、定まっていません。今回は色・柄・ビジュアルさまざまであるのが魅力のmixうさぎについてご紹介します。(うさぎと暮らすNO.19より改編)

mixウサギのルーツを探る

日本白色種の誕生

日本のうさぎの歴史は、古事記が記された奈良時代の以前より、野うさぎを食用・薬用として推奨していたとされ、現在の飼いうさぎの先祖であるアナウサギが日本にやってきたのは16世紀にオランダから来たのが最初と言われていますが、詳細は不明です。16世紀といえば日本へ鉄砲が伝来し、戦乱のさなか織田信長が天下を取ったという時代です。
日本でうさぎが本格的に飼育されるようになったのは、19世紀の明治以降。明治2年頃中国から、その後アメリカからいずれも愛玩用として輸入されました。
明治4~6年にかけて、うさぎを飼育することがブームとなり(ウサギバブル)、うさぎの輸入と飼育が急増しました。しかし、あまりの白熱ぶりに明治9年兎取締令が発布され、飼育熱は一気に冷めてしまいました。
このブームの最中に輸入されたうさぎの多くが、その後輸入された品種(※)と交雑され、明治末期には日本白色種の祖先となる白色のうさぎにほぼ統一されました。当時は体の大きさから、大型はメリケン、中型はイタリアン、小型は南京と呼ばれていたようです。
うさぎの飼育は、明治後半から昭和初期にかけて、戦争の拡大とともに、毛皮・食肉用としての需要が増し、昭和12年には600万頭を記録しました。戦後、農林水産省により、毛色は純白、体重は生後八カ月で4.8キロ、毛の長さは2.5㎝内、耳の長さは18㎝未満で直立するものという基準が定められ、日本オリジナルの品種として「日本白色種」が誕生したのです。
ところが、当時の日本白色種は、この種にありがちの赤い目は基準に含まれていませんでした。目が赤く見えるのは、目に色素がないためで、これは遺伝子の突然変異によって起こったものなのです。

山本芳翠 「おまちかね」 (1902)


※当時輸入されたと思われる品種(明治初期)は、ロップ、アンゴラ、ヒマラヤン、ダッチ、フレミッシュ・ジャイアント、ベルジャン・ヘア、チンチラ、ニュージーランド・ホワイトなど。

ミニウサギの歴史

「ミニウサギ」と聞くと、皆さんはどんなうさぎを思い浮かべますか? 「ミニ」とついていることで、ミニサイズのうさぎというイメージを持つ人もいるのではないでしょうか? しかし、当時「ミニ」とは小型を意味するのではなく、いわゆる2種以上の異なる品種のうさぎが交配して生まれた、うさぎの総称として付けられたものです。
ミニウサギの名称は、うさぎの繁殖を行う上で便宜上名付けられたもので、国内で繁殖されたうさぎのうち、血統が管理されている純血種以外のうさぎをこの名前で流通し始めたのが始まりと言われています。また、日本のオリジナル品種「日本白色種」と、小型種のうさぎをミックスして産まれてきたうさぎが、それまでの日本白色種から比べてミニサイズだったことから、ミニウサギと名付けられたという説もあります。
日本のうさぎの歴史では、体が大きい日本白色種が誕生し、その需要が失われると、ペットとしての小型のうさぎが求められ、ミニウサギが普及してきました。ところが近年は、アメリカやヨーロッパからミニウサギよりもさらに小さな純血種が輸入・繁殖され、ミニウサギは逆に大きめのうさぎとして扱われることが多くなってきたようです。
参考文献:『ウサギ 生殖生理と実験手技』監修:佐久間勇次、著:遠藤克ほか 近代出版

当時は、パンダのように目の周りと耳、体の半分が黒く、そのほかの部分は白のツートンカラーのうさぎを「パンダうさぎ」と呼ぶこともありました。近年はこのような呼び名はしないですね…。

ダッチ柄と言われることが多く、このカラーのルーツは「ダッチ」という品種で、純血種の場合はカラーの入り方や体重の基準が定められています。

お店によって名前が違う?!
ミニウサギの本名を探ってみよう

さまざまな名前を持つうさぎ

ペットショップでうさぎを見ると、必ず品種を表す名前が付いています。その中でも一番よく見かけるのが「mixウサギ(ミニウサギ)」です。これは、mixウサギが混血種の総称として一般的に使われているためです。
それ以外にも、大きさを区別するために『スーパーミニウサギ』や『スーパーラビット』、『ピーターラビット』などと名付けているペットショップも以前は多くみられました。しかし、実際は大きさの規定があるわけではなく、ペットショップやお店に卸している問屋さんが、各自の基準で名前を決めていたようです。

うさぎとの出会いを求める方は…

まず、うさぎは悪質な繁殖業者、モラルのない飼い主によって、遺棄されてしまううさぎが少なくありません。国内には有志による保護団体さんがいくつもあります。新しい飼い主さんを待っているかわいいうさぎがたくさんいるので、そうしたところでお迎えする検討から始めてみてはいかがでしょうか。

ショップで探す場合は、うさぎの飼育環境やフード・用品について詳しいお店を選びましょう。また展示しているうさぎの健康状態がよい、月齢が若すぎない(生後1ヶ月半以上)(若すぎると性別もわからない)、衛生的に異臭がしない清潔な店内であることも重要です。mixウサギと純血種の違いを聞いてみるなど、何を聞いても丁寧に回答してくれるショップがよいと思います。

そして非常にむずかしい問題かもしれませんが…、ライオン種が入っているうさぎのように、仔うさぎ~成うさぎになるとまるで風貌が変わってしまったり、体が予想より大きくなることもあるので、さらに食い込んだ質問をしてもらうとよいかと思います。例えば仔うさぎの状態から推測される成長後の体格、体長やルーツ・血統に入っている品種、そしてついている価格(どういう評価なのか)についてです。

店員さんに「しつこいお客さんだ」と思われてもよいと思います。命を譲っていただくのですから。

mixウサギの確立

下記のデータは2006年当時のものなので、ご参考程度にご覧ください。

総合ペットショップにアンケートをお願いしたところ、(表1)のようにほとんどのショップが、混血種には「ミニウサギ」と付けている、という回答を得られました。これは、ネザーランドドワーフやホーランドロップ、ミニレッキスなど、小型の純血種が人気を博していく中で、うさぎの品種に関する認知度が高まり、ミニウサギは、純血種と区別した日本独特の品種として扱われるようになったからだと思われます。
また、ネザーランドドワーフ系のミックスを『ドワーフラビット』、ホーランドロップ系のミックスを『ロップイヤー』と名付け、純血種やmixウサギと区別しているショップも見られました。
このように、純血種が主流になりつつある状況が、逆に今まであいまいだったmixウサギの定義を確かなものにしてきているようです。

名称理由
A店ミニウサギ
mixラビット
ミニウサギはなじみが深いので。ロップイヤー、ライオンなどの
特徴を持つものはmixとしています。
B店ミニウサギうさぎのサイズで。
C店ミニウサギ一般的なため。
D店ミニウサギ
ドワーフロップ
雑種という意味からミックスラビットと表記しているが、ミニウサギという呼称も
定着しており、お客様に分かりやすいようカッコ付けでミニウサギと表記。
E店ミニウサギ
ロップイヤー
本部で統一されているため
F店ミニウサギ昔からその名で呼ばれていたから
G店ミニウサギ特になし
H店ミニウサギ
ドワーフラビット
ロップイヤー
特になし
I店ミニウサギ一般的であると考えています。問屋でもその名称のため。
(表1)うさぎの雑種の名称は、何とつけていますか?
品種
ネザーホーランドライオンアメファジMレッキスジャージー雑種
A店
B店
C店
D店
E店
F店
G店
H店
I店
(表2)取り扱っているうさぎの品種

mixウサギの人気は…

表3のように人気のうさぎの品種では、堂々の2位に入っているミニウサギ(mixウサギ)。今回のアンケートでも全店がミニウサギを扱っていることが分かりました。
さまざまな柄や毛色のかわいさ、昔からなじみが深いことや、純血種と比較すると手ごろなその値段などが人気の秘密のようです。

1位ネザーランドドワーフ
2位ミニウサギ
3位ホーランドロップ
4位ライオン
5位ミニレッキス
(表3)人気のうさぎの品種

mixウサギ 色・柄図鑑

mixウサギは、もともと日本白色種とダッチを交配させたのが始まりといわれることから、なじみが深いのがダッチ柄。また近年は、数多くの品種のうさぎが輸入されたことによって、たれ耳に出会うこともあります。トライカラーや模様の入り方(ハート柄)など自分好みの子を探すことができるかもしれません。一例をご紹介します。

●単色―ホワイト

日本白色種の血統が強く残っているうさぎ。真っ白の毛に赤目が特徴です。

●単色-チェスナット

アナウサギと同じ毛色ですが、大きさも小型~中型までさまざまです。性質的に野性味が残る場合もあります。

●単色―ブラック

ミニウサギの中でもネザーランドドワーフの血統が強く出ているうさぎ。個体によってさまざまな色が現れます。

●ダッチ柄

最もポピュラーなダッチ柄。グレーのほかにブラックやブラウンの子もいます。

●ブロークン

色、模様がさまざまなのがチャームポイントです。

●混色―トライカラ―

三毛カラーです。個体によってさまざまな模様が現れます。

●ライオンmix

ライオン種が入ったミックス。特徴はたてがみのような長めの毛。

●アンゴラmix

アンゴラ種が入ると毛足がふわふわに長くなります。

●ロップmix

ロップにおいてもさまざまな色、模様、体格のうさぎがおり、バラエティ豊かです。

mixウサギの体重

日本白色種の体重は3~5㎏と言われています。この日本白色種を元に小型のうさぎと交配されてできたmixウサギは、年々小さくなる傾向はあるようですが、1.5~2.5㎏くらいのうさぎが多く、やはり純血種の小型種の理想体重に比べると重くなるようです。
グラフからも分かるように、mixウサギといっても、全てが同じくらいの大きさになるとは限りません。1㎏のネザーのように小さい子もいれば、3㎏近い子もいます。どのくらい大きくなるが分からない…そこがまたmixウサギの楽しみであり、魅力でもあるのです。

mixウサギの性格

十人十色というように、うさぎも十兎十色。mixウサギは、さまざまな血統が混ざっているため、性格も色々。おとなしいこもいれば、好奇心旺盛で好きなことには目がないというこも多いようです。また読者モデルの中では、60.4%のうさぎが人見知りをしないと答えており、飼い主さんにはとてもなつく子が多くみられました。

順位性格%
甘えん坊36.5
マイペース34.6
好奇心旺盛28.8
臆病23.1
わがまま21.2
おとなしい19.2
食いしん坊11.5
寂しがりや7.7
暴れん坊5.8
10クール3.8
mixウサギの性格Best10(読者モデル52匹の集計)

考察

うさくらの読者さんの中には「ショップにいる状態がかわいそうで見ていられず」あるいは「成長していてこのままでは飼い主さんが見つからないと思って…」mixうさぎをお迎えしたという方がたくさんいらっしゃいます。幸せに暮らしている方ばかりなのでよいお話しなのですが・・・。

やはり根本の部分として、ペットショップでは若くかわいいうちに販売を…と、早い月齢で販売しているところが少なからずあります。仔うさぎのうちは母乳を飲んでしっかりとした体を作る時期が必要なので、未熟な段階での販売は問題があり、お迎えする側も注意が必要です。

そしてmixウサギは成長過程でお耳が長くなる・お顔が長くなる、体も大きくなることもありますが、うさぎのルーツを思えば当たり前の話しで、誰彼と比較することなく、出会えた幸せ、その子のオリジナリティを大切にしてほしいと思います。

※mixウサギのお話(2)に続きます!