うさぎも人間と同じように、年齢を重ねるほどに視力や聴力が衰えたり足腰が弱くなったりします。こうした身体に起こる変化が老化と呼ばれ、老化に伴って身体の不調は増えてゆきます。以前の記事で「うさぎに多い病気」として、消化管うっ滞、スナッフル、膿瘍、斜頸を紹介しました。これらの病気は一生注意が必要ですが、今回は高齢うさぎがかかりやすい病気を紹介します。気を付けて観察・ケアすることで健康ご長寿うさぎを目指しましょう。
白内障
水晶体が白く濁り、視覚障害を起こす白内障。遺伝性のものや他の病気、ケガなどが原因で若いうさぎに発症することもありますが、やはり高齢うさぎに多くみられる病気です。一度白濁した目はもとには戻りませんが、目薬などで進行を遅らせることができるので、毎日の健康チェックと健康診断を受けることは大切です。
また、うさぎはもとより視力があまり良くなく嗅覚や触覚を活かして暮らしているため、視力を失ってもあまり問題なく暮らせるコが多いようです。シニア期を前に生活空間から段差をなくすなど過ごしやすい環境を整え、急なレイアウト変更が必要ないようにしましょう。
目の感染症
免疫力が落ちているシニア期は結膜炎、角膜炎、角膜損傷なども悪化しやすい傾向にあります。不衛生な環境が原因になることもあるのでトイレなどの掃除はこまめにしましょう。ウッドチップや消毒剤などが原因のこともあるので、目薬などの治療で改善しない場合は飼育用品などの見直しも必要な場合があります。
うさぎも年をとると足もとがおぼつかなくなり、反射神経も鈍くなります。ふらふらと歩いて転んだり毛づくろい中に体勢をくずすようなことも増えるので、眼を傷つけてしまいそうな鋭利なものはうさぎの周りに置かないようにしたり、牧草が目に刺さらないように工夫しましょう。
眼窩(がんか)膿瘍
頭蓋骨の中で眼が収まっている眼窩というくぼみに広がる膿瘍です。上顎の歯根と眼窩は隣接しているため、不正咬合によって上顎の歯根部に炎症を起こすと、眼窩に膿瘍ができます。それが眼球を押し出すため、眼球が突出する、白い膿状の目やにがみられる、まぶたが閉じられなくなるなどの症状が起こります。進行すると元気や食欲がなくなったり突然死することもあります。
抗生物質や手術による排膿などの治療が行われますが、ひどい場合は眼球摘出が必要になる場合もあります。この膿瘍も多くの場合不正咬合が原因なので、その予防や治療が必要です。
免疫力の低下が関与していることもあるので、シニア期のうさぎは発症しやすく、より注意が必要です。日頃の健康管理と定期的な健康診断を心がけましょう。
呼吸器疾患
うさぎの呼吸器疾患は、さまざまな病原体によって、それぞれ特徴的な症状もみられますが、主な症状は、鼻汁、くしゃみ、目やに、呼吸困難などがあります。またそれに伴って食欲不振、下痢や軟便、体重減少なども起こります。全身感染症の場合は、呼吸器だけでなく、その他の臓器に障害を伴うこともあります。
肺炎や気管支炎はパスツレラ菌、黄色ブドウ球菌などさまざまな細菌が肺に感染して起こります。初期は無症状であることが多いですが、次第に発熱、呼吸困難、体重減少、元気器や食欲の低下、濁った鼻水や目やになどがみられるようになります。
元気な状態であれば病原菌に感染しても肺炎まで進行しないことも多いですが、免疫力の落ちるシニア期は注意が必要です。飼育環境を清潔に保ち、適温と適湿度を心掛け、栄養管理にも注意しましょう。ストレスも大きな発症要因になるので、ストレスのない環境づくりに気をつけましょう。また、シニアは強制給餌が増え、誤嚥も肺炎の原因となるため注意が必要です。
慢性腎不全
慢性腎不全も加齢と共に増加する老齢性疾患です。老化などのさまざまな原因で腎臓の機能が衰えると血液の濾過がうまくいかなくなり、老廃物が排出されなくなったり、体内の水分量の調整や電解質の調整も十分にできなくなり、元気喪失、食欲不振、多飲多尿、血尿、体重減少、重度では貧血などさまざまな症状が出てきます。進行性の病気であるため、治療は主に輸液や食事指導などの対症療法になります。
水分補給が大切なので、水をきちんと飲めているか給水器などを確認し、常にきれいな水を欠かさないようにしましょう。またカルシウムを多く摂取しないように、牧草はマメ科でなくイネ科をメインにする、カルシウムの多い野菜は与えないなど食生活に注意してください。
初期は無症状であることも多く、定期的な健康診断で血液検査を受けることがおすすめです。
●うさぎにNGの野菜・食品
●うさぎのための「水」その1
●うさぎのための「水」その2
●うさぎのための「水」その3
(参考資料:よくわかるウサギの病気と健康、うさぎの医学&動物病院ガイド、うさぎと一生暮らす本)