うさぎの健康

素敵な老後を味わわせたい 食生活編【2】

前回に続き、本誌『うさぎと暮らす』で掲載した『中山ますみのラビコミ・カレッジ』から、「素敵な老後を味わわせたい」をテーマにした講義、特に食事に関する部分を抜粋してご紹介します(うさぎと暮らすNO.65より)。

<参加者>
5歳・オス&7歳・オス&6歳・メス&メス・9歳&オス・8歳&メス・8歳の飼い主さん

介護期の食事、シニアになる前の食事

ビックリ!? 16歳のうさぎの食生活

中山ますみさん

中山さん「私が見てきたうさぎの中に、16歳まで生きたうさぎがいます。10歳過ぎてからシニア期のサインが見えてきて、13歳くらいで寝たきりになりました。この状態になって、通常は強制給餌用のフードになりますよね。飼い主さんは3時間置きに、寝る間も惜しんで介護をしていらっしゃいました。でも大変な思いをしているというより、介護生活に慣れてしまっていて生活サイクルの一つになっていたようでした。
介護生活に入ったからといって、一日中付き添っていることはないですし、働いている方も朝と晩の食事とお世話というようにサイクルを作れば、十分に対応できます。うさぎも飼い主さんが外出するときは『出かけてくるねー』と声をかけることで理解してくれます。
ただし、介護のお世話が慣習化しているからといって、飼い主さんにとって、介護が先が見えないという悩みはあると思うのです。こうした時こそうさぎ専門店や同様の経験を持つうさ飼いさんを頼りにして、悩みを打ち明けてもらったり、情報交換することが大事です。気持ちを落ち込ませてほしくないですね」。

看板うさぎの桃ちゃん


中山さん「話は戻りますが、この16歳のうさぎは、みんなが思いもよらない食生活で生命力を維持していました。植物性・動物性たんぱく質を好んで食べたそうです」

参加者「えーっ! 動物性のたんぱく質もですか?」

中山さん「そうなんです。シニアになって飲み込む力が弱くなると、食べづらい乾燥牧草を食べるより、好きなものを食べる方が生きることが楽しいですよね。体はどんどんやせていきますので、たんぱく質を欲するということは理にかなっています。寝たきりとはいえ、首から上は動くので、食べたくないものは顔をそらします。このくらいの年齢になると、食べることが喜びとなり、命をつなぐのです。
このうさぎの場合、それらの食事が合っていて、食欲を取り戻すために有効な食事だったのです。寝たきりになってもそのおかげで16歳まで生きたと言えるわけです。
うさぎは『草食動物』ではなくて『草食性動物』であり、100%草だけの食生活というわけではありません。母うさぎは出産時、自分の胎盤を栄養として摂取します。これは動物性のものですよね。
なお、このうさぎは、夏は家族が食べているマンゴーアイスも食べたがったそうで、それを聞いた獣医さんは驚愕していたそうです(笑)
年をとったら体調は日々変化します。けだるい、暑い、寒いなど、その時の体調によって食べやすいもの、本能的に欲しているものをうさぎは選択していきます。ですから飼い主さんのそれまでの『これを与えなくてはならない』という固定観念は取り去って『うさぎが喜ぶ食べ物』というスタンスでいることも大事なんです」
※注意:このエピソードは介護中のうさぎの実例であり、若い健康なうさぎにすすめるものではありません。

粗食のすゝめ…シニア期に入る前に

ペレットの与え方を工夫してみる…

編集「うさぎの健康長寿を考えたときに中山さんのご経験の中から、お勧めする食事の与え方はありますか?」

中山さん「まだ自分の中で完璧な答えは出ていませんが、若い時に粗食であればあるほど体のコンディションはよい状態がキープできると思っています。特に胃腸の健康に関しては言えますね。過剰にいろんなものを食べていると臓器がオーバーヒートして負担がかかります。
うさぎの体のリズムと『薄明薄暮性※』という部分で、ペレット、牧草、生野菜の通過時間から考えると、ペレットは体内に存在している時間が長いので負担がかかります。ですから与え方に工夫をするようにしたんです」。

※薄明(明け方)と薄暮の時間帯に、活発に活動する生き物の性質

ヨーロッパのアナウサギ。明け方に活発に活動する

中山さん「朝やうたたねしている昼間は牧草を与え、夜はペレットと牧草(好みのフルーツ、生野菜少々)というスタイルです。その結果うっ滞がほぼなくなり、牧草を食べる量が増えました。例え具合が悪くなっても回復が早いのです。
ある高齢のうさぎのケースですが、生野菜ばかり食べていてうんちはあまりよい状態にありませんでした。でも飼い主さんはうさぎが好むため、かわいそうでやめられません。そこでうちのホテルに泊まりに来るタイミングで、食生活を切り替えてみたんです。安定したら帰す、体力が落ちると泊まりに来るというルーティンにしたところ、昨年まで元気に頑張ってくれました」

らびっとわぁるどお泊り中イメージ
ご飯の与え方もうさぎの体質に合わせる工夫を…


中山さん「水分は生野菜から摂取しようと思っても水溶性の繊維質なので、うんちと一緒に水分が出てしまいます。あくまでも水を飲んでくれないと脱水状態になってしまうんです。脱水状態のうさぎはけだるい状態になります。水を撮る必要があるのです。脱水症状を改善すると、牧草を食べることにつながります。
うさぎの食生活はなるべく粗食にしてあげる。与えるフードの種類によって与えるタイミングを考える、みなさんのおうちで活用するヒントになったらうれしいですね」

粉末のバランスウォーター

中山さん「あまり積極的に水を飲まない子には、水に溶かして飲ませるハイポトニック飲料がおすすめ。普通の水よりも素早く体に吸収されるように浸透圧を調整されています。薄めて使うこともできます。」

スポイトや給水ボトルで飲んでくれるといいですね!
元気なシニアを目指そう!