うさぎの飼い方

大切なうさぎのために…もしものためのアレルギーチェック(1)

読者さんを取材していて、よく感じること。それはうさぎの毛あるいは牧草に関するアレルギーの方がとても多いということです。うさぎが大好きなのに、一緒の部屋にいられないなんて、とても切ないことであると思うのです。読者のアレルギー保有者の方にお話しを聞くと、夜も眠れぬほど、咳き込んでいたにも関わらず、「まさかうさぎアレルギーだとは思わなかった」と、原因を調べていない方もおられました。
今回はアレルギー保有者でありながら検査まではしたことがない方に向けてアレルゲン検査や保有者の方が行っている対策についてご紹介いたします。(うさぎと暮らすNO.67より改編)

アレルギーの専門ドクターに聞く

なぜアレルギーになるの?

花粉やホコリなどは、私たちの身近にいつも存在しています。アレルギー反応が出る人と、出ない人がいるのはなぜか。その答えは「体質」。アレルギーを起こしやすい体質を持つ人が、ある特定のアレルゲンに対して反応を起こすのです。

アレルギー体質とは、海に隠れた氷山の下の部分のようなもの。体質として持ってはいても、症状が強く出ないために気付かない人もいます。うさぎアレルギーを持っていても、うさぎを飼わなければそれに気付くことはないでしょう。

またうさぎを飼い始めた頃は何ともなかったのに、数年経ってから発症したという人もいます。それは元々持っていたアレルギー体質という素因に加え、毎日大量にアレルゲン(うさぎのフケや牧草の花粉)を体内に取り込むという環境要因が重なったこと、そしてストレスを受けたり、体調が落ちているなど、発症のきっかけがあり、氷山のてっぺんが海面に現れてしまったといえます。

アレルギーは、体質と環境要因(日常生活の中のアレルゲン)が合わさって起こる複雑な病気です。環境要因によって次々にアレルギー反応を引き起こす場合もあります。うさぎアレルギーを発症した人が、花粉症やハウスダストアレルギーなどを次々に発症するといったケースは、その典型的な例と言えるでしょう。

主なアレルギー症状

目がかゆくなる/涙が出る/鼻水・鼻詰まり/咳・く
しゃみ/息がゼイゼイする/じんましん/皮膚炎(か
ゆくなるなど)/低血圧(呼吸困難をアナフィラキシー
と言う)

代表的なアレルゲン

ハウスダスト:家のほこり、ダニ
カビ(真菌):カンジダ、ペニシリウムなど
花粉:スギ、ヒノキ、イネ科植物、雑草など
動物:うさぎ、犬、猫、モルモットなど
食物:卵、牛乳、そば、小麦、大豆など

Q:アレルギーが起こる仕組み

人間には、自分の体を守るための機能が備わっています。その一つが「免疫」です。ウィルスや細菌などの異物(抗原)が体内に入る(感染)と、体内の細胞はその抗原に対する「抗体」(細菌などを中和して、生体を防御する)を作ります。その抗体が2度目に進入する抗原を攻撃し、抗原を撃退・排除しようとします。これが「免疫反応」で、「抗体反応(または抗原抗体反応)」とも言います。「自分と違うもの(異物)」が体内に入ってきた時、それを排除するという、高度な身体の防衛システムです。

ところがこのシステムは、時には防衛の範囲を超えて、外から入ってくる特定の異物(花粉など)に対して敏感になり、過剰に反応して身体に不快で不利な症状を引き起こします。それがアレルギーです。「アレルギー反応を引き起こすもの」は、「アレルゲン」と呼びます。

Q アレルギーが出る人に傾向はあるの?

日本人に出やすいアレルギーや出やすい年代は、特にありません。遺伝はある程度は、関与します。しかし、一卵性の双子でも、二人ともにぜん息である組み合わせは、100組中50~60組なので、必ずしも両親と同じアレルギーが子どもに出るわけではありません。

確かにアレルギー家系では、母親が花粉症、食物アレルギー、いとこが金属アレルギーを発症する場合もありますが、過度に心配する必要はありません。

年齢とアレルギーの関係で言えば、スギ花粉症は高齢になるほど、免疫力は低下するので、症状は軽快する傾向
があります。

Q うさぎと接して引き起こす可能性が高いアレルギーは?

さまざまなアレルゲンがある中で、特にうさぎの飼い主さんに関係があるのが、「イネ科植物の花粉、雑草の花粉」と「動物のアカ、フケ」です。アレルギー専門病院、あるいは内科のアレルギー科などを受診し、症状を説明した上で、アレルゲンに対する血液中の抗体有無を確認するための検査を行います。検査項目の数によって金額が変わります。

イネ科花粉

うさぎの主食となる牧草は、イネ科の植物です。チモシーは「オオアワガエリ」やオーチャードグラス(和名/カモガヤ)であり、その花粉はアレルゲンとなります。

オオアワガエリやカモガヤのアレルギーを持つ人は多くいます。

ただ普通は屋外で草地などから飛散してくる花粉が原因となるため、そういった場所に近寄らない、また特に花粉の飛散時期である5~7月には注意して服薬などの治療を行います。

しかしうさぎの飼い主さんの場合、一年を通して家の中にアレルゲンとなる牧草を置いているため、絶えずアレルギー症状に苦しめられるケースが多いようです。

アレルゲン検査項目

イネ科植物花粉:カモガヤ、オオアワガエリ、スズメノテッポウ、セイバンモロコシ、ホソムギ、スズメノヒエなど。
雑草花粉:ブタクサ、ヨモギ、タンポポ、ヘラオオバコ、ヒメスイバなど

5~8月 イネ科:カモガヤ、スズメノテッポウ、オオアワガエリ
9~11月 ブタクサ、ヨモギ、セイタカアワダチソウ
※ 地域により、繁茂する種類は異なります。例えば、川の近くの河川敷ではイネ科
(注)オオアワガエリがうさぎの主食・チモシーのことです。

左:カモガヤ / 右:セイタカアワダチソウ

動物

悲しいことに、大好きなうさぎがアレルゲンとなることがあります。うさぎのアカやフケ、及びそれらのついた毛などが刺激となり、アレルギー反応を引き起こします。

動物全般がダメという人もいれば、うさぎだけ、猫だけ、といったように特定の動物のみ反応を示す人もいます。

また同じ動物であっても、品種によってアレルギー反応に違いが出る場合もあります。うさぎも品種によって毛の長さや細さが異なるので、多少の違いはあると考えられますが、現時点でそれを調べる方法は確立されていません。

うさぎと接していてアレルギー症状がある場合、血液検査では、「家兎上皮」を選択します。うさぎのアカやフケのたんぱく質に対する抗体を調べます。

アレルゲン検査項目

動物:家兎(上皮)、ネコ(フケ)、イヌ(フケ)、モルモット(上皮)、ハムスター(上皮)、セキセイインコ(羽毛)など

左:インコ / 右:ネコ

Q 動物のアレルゲンの中で「家兎上皮」のアレルギーである方は多いのですか?

そのようなことはありません。ただ、体質によっては、犬のみ、猫のみ、うさぎのみの場合もあれば、複数の動物、または動物全部の場合もあります。

猫アレルギーは肛門の周囲の皮脂腺のたんぱく質が主で唾液中のタンパクも関与しています。犬、うさぎはアカやフケ、モルモット、ハムスター、マウスなどのげっ歯類は尿中のたんぱく質です。種によりアレルゲンは異なります。

Q 免疫療法である、『減感作療法』について教えてください。

『減感作療法』とは、アレルギーの基となるアレルゲンを少しずつ投与することで免疫が過剰に反応しないように慣れさせる治療法です。1920年代からUSAで、花粉症(干し草花粉症)に対して行われました。以後数多くの臨床データが発表され、現在、日本で行われているのはスギ花粉症、ブタクサ花粉症、カモガヤ花粉症などです。またハウスダストによるアレルギー性のぜん息にも行われる場合があります。

残念ながら猫、犬、うさぎ、モルモット、マウスなどに対する減感作療法は行われていません。現在のところ、それ用の注射液もありません。

Q 動物アレルギー、牧草アレルギーの最新治療について教えてください

動物アレルギーには除去療法しかありません。秋のブタクサには、皮下注射による減感作療法が可能です。週1回、3年間の通院が必要です。春のスギ花粉、通年性のハウスダストについては、舌下免疫療法(口の中に1〜2分含む)が3年前から保険適応になりました。

アレルギー治療について

アレルギーの一番の治療法は、アレルゲンを生活環境から遠ざけることです。つまり動物アレルギーの一番の治療法は、動物を手放すということになります。そのため、うさぎアレルギーが判明したら、うさぎを手放すように言ってくる医師もいるかもしれません。

命に関わる症状が出てしまっている時には、それもやむをえない場合もあります。しかし、その選択は身体以上に心を痛めます。「この子と一生一緒にいる!」と決めて飼ったうさぎと離れるのは、本当ならあり得ないこと…。日々の暮らしの中の工夫で、アレルギー症状をうまくコントロールしながらうさぎと暮らしていくことが理想と言えるでしょう。

除去テスト

血液検査で陽性の結果が出たとしても、それだけで今出ているアレルギー症状の全てがうさぎや牧草が原因であるとは言えません。検査していない項目がアレルゲンとなっている可能性もあります。
確定診断をするためには、うさぎのいない環境で数日間生活してみるとよいでしょう。うさぎと離れることでアレルギー症状が大幅に改善されるのかどうか(除去テスト)が一つの決め手になります。

アレルギー治療の流れ

①検査

病院(内科、アレルギー科など)でアレルギー検査を受けます。血液を採取し、「IgE抗体(免疫グロブリンE)」という物質がどれくらいあるかを調べます。検査可能なアレルゲンの項目は100種類以上ありますが、「特異的IgE検査」では、1度の検査で調べられるのは13項目までなので、医師と相談しながら検査項目を決めましょう。検査費用は一項目は自費で300円で、13項目までです。1週間後に結果が出ます。

うさぎは「家兎上皮」、チモシーは「オオアワガエリ」、オーチャードグラスは「カモガヤ」です。他に気になる花粉や身近にいる動物(犬、猫、モルモット等)、ハウスダストなどを調べるとよいでしょう。

②検査結果に基づいて治療方針を決める

血液中の抗体の数値によって、アレルギークラスがわかります。クラス1は疑陽性、クラス2~6は陽性
で、上にいくほど強い症状が出ます。
現在の飼育環境の見直しや投薬など、医師によく相談しましょう。

③治療

主にアレルギー症状を抑えるための薬が処方されます。毎日飲む場合、発作が起きた時だけ服用する場合など、薬の種類や症状の重さによって変わってきます。
アレルギー体質自体を治すことは、残念ながら今の医学ではできません。なるべく症状が出にくい環境作りをしていくしかないのです。また、体調が悪くなると一気にアレルギーがひどくなることが多いので、普段から健康的な生活を心がけましょう。

編集部員がアレルギー検査を体験してみました!

これまで、牧草アレルギー、うさぎのアレルギーを感じることはなかった編集部員S(40代・女性)ですが、念のため検査を受けてみました。
結果は家兎上皮もイネ科雑草も基準値内で、猫と接するとくしゃみが出るので気になっていた「ネコノフケ」も基準値内でした。これからもうさぎのお世話にせっせと務めることができます!

※次回は「大切なうさぎのために…もしものためのアレルギーチェック(2)」に続きます!