うさぎの健康

今さら聞けない うさぎのソボクなお悩みQ&A(1)

うさぎの体・抱っこ・爪切り・問題行動・食生活etc.――さまざまなジャンル別に、本誌『うさぎと暮らす』でみなさんから寄せていただいたお悩みの中からピックアップして、専門家にご回答いただきました!(うさぎと暮らすNO.56より改編)

No.56
イラスト/雨宮菜々子

<回答者:Q1~Q15>
清水 邦一 獣医師/宏子 獣医師

1976年、神奈川県横浜市に開業。診療動物は犬、猫、ウサギ、ハムスター、モルモット、フェレットなど。「やさしいエキゾ学(インターズー)」「まるごとウサギ(スタジオエス)」「ペットの秘密(東京堂出版)」など著書多数。ペットのイベントなどでのトークショーにも参加している。お家でもうさぎと暮らしている。

Q1:メスのうさぎがプゥやブゥのほか、クルプープーと長く話す。調子の悪い時によくしています(北海道・ますいさん)

A1:うさぎは犬や猫のようによく鳴いたりはしませんが、怒っていたり、不満があるとブゥブゥ言ったり、歯ぎしりをします。具合が悪いと、ため息混じりのような声も出します。中にはブゥブゥというのが呼吸音で鼻腔の異常(慢性の鼻炎)、軟口蓋側頭蓋の異常、胸部の異常のこともあります。


Q2:トイレに行ったうさぎからプスーッと音が出ますが、おならでしょうか?(愛知県・なつさん)

A2:どの動物も人が気づかないだけでおならはします。うさぎも例外ではなく、小さなおならをします。腸にガスがたまりすぎていないか、そっとお腹全体をさわって、軽くマッサージをしてあげましょう。胃停滞など、胃腸の機能低下があると、ガスがたまりやすくなるので、牧草中心の食餌にしましょう。お腹の前方(胃)や後方(腸)が張っている時は念のため動物病院で診てもらいましょう。


Q3:うさぎの睡眠時間は何時間くらいですか?(福岡県・ハマチャンさん)

A3:明け方5時ごろから起き始めて、6~10時ごろまでは起きていて、10時頃から夕方4時頃まで眠り、人と12時間ほどずれた活動をしていると言われています(薄明薄暮性)。短くて浅い眠りですが、その家の生活のリズムに合わせて寝ているうさぎもいます。そのことから野菜などは夜与えて朝まで残らないような量にすると、腐ったりする心配がなくて、よいでしょう。また、夜起きて遊ぶので、共働きの家庭や塾から戻った子供たちとも接する時間がとれるため、今人気のペットとして注目されています。


Q4:マウンティングはやらせたほうが良いのでしょうか。紙やダンボールをかじっても体に影響はありませんか?(福島県・Kさん)

A4:
マウンティング=うちの病院では去勢の手術をおすすめしています。マウンティングをすれば、気がすんでそれでやらなくなるわけでもないこと、去勢によってマウンティングや尿のスプレーが減る可能性、睾丸や前立腺の病気の予防につながること、オス特有の攻撃的な行動(かみつく、おそってくる、けんかをするなど)が減る、などが理由です。
去勢の手術の時期は生後6ヶ月くらいがベストです。手術をしないで減らす方法は、マウンティングをしようとしても、交わしたり、続けさせない、人が去るようにします。
紙や段ボール=かじらない方が安心です。たくさん食べると異物なので、胃がふくらんで満腹感が出て、牧草やペレットを食べなくなる可能性があるからです。ティッシュを引っ張り出して食べたり、米袋をかじってしまったり、うさぎにとってはかじることが特技なのと、生活の中に普通に存在するものを人はさわって確認しますが、うさぎはかじって確かめます。そのため思いがけないアクシデントにつながります。うさぎを遊ばせるときは部屋はかじられて困るものは置かないようにしましょう。


Q5:うさぎの臭腺についてケア方法、役割について知りたいです。(埼玉県・ちーちゃんみーちゃん母さん)

A5:陰部の肛門の脇の左右に臭腺があります。きれい好きのうさぎは、お掃除しているのか、汚れていないこともありますが、たいていのうさぎは、ここに柿の種みたいな形で黒、またはこげ茶色の分泌物がへばりついています。ガリッと引っ張って取りたくなりますが、くっついて取れにくいので、ふやかしてから取ってあげることをおすすめします。あまりたまると刺激になって炎症を起こすことがあります。
高齢のうさぎで足が不自由だと、ここがさらにただれて、ハエが卵を生み、ウジがわくこともあります。うちの病院では2~3ヶ月ごとの定期健診で爪、耳、歯、目などととともに臭腺も必ずチェックするようにしています。
(編集部より)うさぎの臭腺はあごの下にもあります。ここから分泌物を出して、うさぎ同士の個体識別やマーキングを行っています)


Q6:うさぎが言うことを聞かないのですが、しつけをすることができますか?(福島県・Kさん)

A6:うさぎは優先順位をつける動物なので、家に来たその日からしつけのスタートです。人のペースに合わせてうさぎに接します。小さい頃からがベストですが、大きくなってからでも、いつからでもできます。
ケージをかじって「出せ出せうさぎ」になったり、食器をひっくり返して「クレクレうさぎ」になったり、ブラッシングが嫌だったり、思い通りにならないと噛んでくる「カミカミうさぎ」になったりしないようにします。ケージから出してお散歩させるのも、食餌の時間もきちんと決めないで、飼い主さんのペースでアトランダムでOKです。そうしないと、その時間になると自分から催促するうさぎになり、人がしつけられて暮らすことになります。


Q7:かじり木をかじらないから歯が伸びないか心配です。かじらせる方法を知りたいです(福岡県・Nさん)

A7:かじり木で歯が伸びるのを防ぐ効果はありません。うさぎは草を食べる時にあごを水平方向(左右)に動かして、食物をすりつぶします。その時に歯が少しずつ削られます。硬いものをかじるときは歯を垂直方向(上下)に動かすため、歯の根元(歯根部)に負担(不自然な力)がかかり、歯の歯根がやられたり、歯の伸びる方向が傾いたりすることが知られています。そのような理由からかじり木を歯のために与えることはおすすめしていません。
歯が変な方向に伸びる不正咬合を予防する方法は、牧草を十分に与え、ペレットは1㎏のうさぎで毎回10g(1/8カップ)を1日2回を目安にしています。また、ペレットもハードタイプではなく、ソフトタイプの方が歯に負担が少ないかもしれません。特にペレット中心のうさぎでは気を付けます。


Q8:うさぎはどのくらい視力があるのか。また、聴力について、名前を呼んで認識しているのでしょうか(東京都・Sさん)

A8:うさぎの視野は広くて360度に近いパノラマで、全展開です。草食動物の目は横についていて、敵に狙われた時にすぐ逃げられるような仕組みになっています。でも視力は低く、近視で0.05~0.1くらいと言われていますが、動くものには敏感に反応します。野生のうさぎは、穴の中で生活し、暗い所で光で感じる能力は高く、人の8倍くらいですが、色はあまりわからず、青と緑はよく見えますが、赤はみえないそうです。立体的に物が見えるのは、正面の10度くらいで、両目で見ていますが、あとの350度は片目のみで平面的に見ているたけです。左右に動かしたものは見えやすいのですが、上下の動きには気付きにくいと言われています。その代わり、耳の聴力は犬の次くらいに優れ、人の200倍くらいに聞こえるので、名前に反応するし、わかっていると思われます。
うちに来る飼い主さんで、いつも「かわいいね!」と言っていたら、自分の名前はシロなのに『かわいい』が自分の名前と勘違いして、よその人が「あら、かわいい」と言うと、大喜びしてその方についていきそうになるうさぎがいます。


Q9:足ダンをしてきたり、かみつこうとしたりでとても困っています。よい解決方法を教えてほしいです(茨城県・ゆうちゃんさん)

A9:ゆうちゃんさんのうさぎはオスですか?メスですか?去勢や避妊の手術は済んでいますか? 足ダンのことをスタッピングと呼びますが、うさぎは面白くないことがあったり、危険を感じたりすると、床をけってドンドンと足を鳴らします。オスもメスも手術をしておくと、少し穏やかな生活になります。咬みつこうとしたり、向かってきたりする攻撃的な性格が取れて、優しくなることが多いです。病気(オスは睾丸の腫瘍や前立腺炎、メスは子宮がん、卵巣がん、乳がんなどの病気)の予防にもつながります。
足ダンや咬みついてきたとき「うるさい!」「ダメよ!」「やめて!」「痛いでしょ!」としかっても、優しい人の怒り方はうさぎにしてみると、遊んでもらったり、かまってもらったりしたと勘違いします。強くしかると嫌われます。退屈すると足ダンや咬みつくことで注目してもらおうとします。その時は自分がその部屋からスーッと出ていくことが、うさぎには都合が悪く、効果的です。
あきらめないで、コツコツしつけをして、うまくいかないときはうさぎ専門医または動物行動学の専門医に相談してくださいね。


Q10:食糞行動をしない、スプレー行為、耳のそうじについて教えてください(神奈川県・森のくまさん)

A10:
食糞=食糞をしないと、心配する方も多いのですが、普通は人がまだ寝ている明け方に食糞をしています。太りすぎていると、口が肛門に届かず、食糞できなくなったり、できにくくなるので、肥満にならないようにすることは大切です。盲腸糞と言われる黒くつやつやした柔らかい便の中には栄養として必要なビタミンB12などが含まれています。
もし食糞ができないときは栄養が不足することになります。盲腸糞を上手に食べられないときは口元に持っていってあげましょう。お尻が汚れていても食糞がしにくくなるので、よく観察していつもきれいにしておくと、安心です。
スプレー行動=オスでも多く見られますが、メスでもすることがあります。生後6ヶ月頃に去勢や避妊の出術をしてあげると防げることが多いです。自分の縄張りを作りたかったり、安心したかったり、好きなものに向かっておしっこをひっかけたりします。スプレー行為をしない方が飼いやすいのと、しからないですむので、うさぎとの生活がさらに楽しくなり、穏やかに暮らせます。
耳そうじ=森のくまさんのうさぎの種類はなんですか? ネザーランドドワーフに比べると、ロップイヤーのように垂れ下がって大きい耳のうさぎは、耳あか(分泌物)がたまりやすいので、まめに耳そうじをしましょう。耳の中にカサカサした黒い分泌物がある場合は、耳ダニという寄生虫がいないかどうかを検査をしてもらうと安心です。ぱっと見てきれいでもうさぎの耳の穴は複雑なので、2~3ヶ月に一回、動物病院で耳掃除をしてもらうとよいでしょう。頸が傾いていたり、首を左右に振ったり、足で耳をよくかいたり、汚れがひどい時は外耳炎のことが多いので早めに調べて治療しましょう。


Q11:ソアホックはミニレッキスはなりやすいのですか?主な原因、ケアの方法を教えてください(大阪府・Mさん)

A11:足の裏にできるソアホックは、飛節びらんとも言われ、足底部にできる皮膚炎です。進行すると潰瘍や化のうを引き起こします。うさぎに多い病気です。高齢や肥満のうさぎがなりやすく、ケージの床材がメッシュだったり、ザラザラしたスノコでも起きやすくなります。肥満を防いだり、床材を敷きわらにしたり、新聞紙を集めに敷くとよいでしょう。治療は消毒薬のほか、組織の再生を促す薬をつけたり、表面を外科用の接着剤で薄くコーティングして、足の裏を保護したりします。
(編集部より)うさぎは品種に関わらず、足裏に肉球がなく皮膚が薄いので、毛が薄くなるとソアホックを起こしやすい動物です。特にミニレッキスは足裏の被毛が短く、体格もがっしりしているので、足裏に負担がかかりやすく、気を付けた方がよいと言われています。


Q12:白内障になり、目薬を処方されましたが、目薬は続けた方がよいのでしょうか(埼玉県・プイさん)

A12:一度白内障になると、治る薬はないのですが、白内障の進行を穏やかにする目的で薬を使います。目薬をさすことができなかったり、大変なときは飲み薬をお渡しすることもあります。もし視力が失われても人が考えるほど不自由ではありませんが、部屋の模様替えなどをしない方が障害物などを体で覚えているので、ぶつかったりしないで、普通の生活ができることが多いです。


Q13:眼科を得意とする病院へ行ったので、待合室は犬だらけでした。それがストレスになっていないでしょうか(埼玉県・プイさん)

A13:普通は慣れてくると思うので、たくましいうさぎにすることも、これから先のことを考えると安心です。ストレスになりそうだったらそのことを相談して、イヌがたてこむ前の朝早めの時間や昼休みの前後や終了間際の犬が少ない時間に連れていく方法をお願いしましょう。


Q14:鼻の頭にある『ぽっち』はなんでしょうか?(東京都・Nさん)
イメージ。これは毛穴?

A14:写真のような毛穴のようなものが目立つのではなく、鼻にできたぽっちができものやかさぶたのようである場合は、それが何であるかを病院で見分けてもらう必要があります。生まれつきの形、腫瘍、皮膚や鼻の炎症の他、うさぎ梅毒などが考えられます。鼻の頭がプチっとしたり、カサッとしたりする病気があります。うさぎ梅毒と言ってトリポネーマという病原体がついて、皮膚炎をおこします。陰部もカサカサで赤くなっていることがあるので、鼻に病変があるうさぎは必ず陰部もチェックしましょう。もしうさぎ梅毒の場合は普通の抗生剤や消毒薬ではよくなりません。鼻のぽっちをちょっと採って顕微鏡でどんなものかをチェックしてもらうと安心です。よく「けんかして傷がある」とか「ケージに鼻をこすりつけてすりむけたらしい」と言ってこられるケースの中に、梅毒のこともあるので、診察を受けると安心です。


Q15:一時的だけど、左右の耳で温度差がありました(片方が温かく、片方が冷たい)どうしてですか?(栃木県・うさんこさん)

A15:うさぎの耳はメガホンの役目と温度調節の働きをします。暑いと耳に血液を多く送って冷やし、体に戻すので冷却装置の仕組みをしています。ですから通常は左右の耳が同じような温度です。たとえば耳が横になっていて下にふれていたところが温かかったり、冷たかったり、温風や冷風の出るエアコンが体の横にあってその影響を受けていたり、片方の耳が何かで曲がっていて血行が悪かったりしていなかったか、確かめてみましょう。冬に時々あるのは、暖房器具の真横にいてじっと動かずに低温やけどをすることです。このように耳は大切なので耳をつかんで持ち上げたり、ひっぱったりするのはやめましょう。

※今さら聞けない うさぎのソボクなお悩みQ&A(2)に続きます!