うさぎの健康

うさぎの医療を考える ー新病院紹介「うめやしきアニマルクリニック」ー

うさぎを熱心に診てくれる動物病院をご紹介する本誌の企画から、今年の6月に東京都大田区に開業したばかりの動物病院をサイト版でご紹介いたします。

うめやしきアニマルクリニック

西洋医学と東洋医学のよい面を取り入れる

「うめやしきアニマルクリニック」は、今年の6月30日、京急線「梅屋敷駅」から程近い場所に開業した病院です。緑川久美院長は獣医師として東京生活が長くなる中、昔ながらの生き生きとした商店街があるこの町に惹かれて開業したそうです。

緑川院長のルーツをたどると、小さな頃から猫と一緒に暮らしており、高校3年生の時に獣医を志したそうです。育った環境が地方であったため、獣医療が充実しておらず、猫が病気にかかったときに十分な治療を行ってあげられなかったことが理由の一つでした。

やがて獣医師になって研鑽を積む中、エキゾチック部門を学ぼうと神奈川県川崎市の「わたりだ動物病院」で勤務医になってからうさぎをよく診るようになったそうです。当時、副院長が鍼を行っていたことがきっかけで自らも中医学を学んでみたいと「国際中獣医学院日本校」に通われたそうです。

現在までに国際中獣医鍼灸師資格、動物経絡温灸取扱者資格、中医漢方獣医師資格の資格を取得し、国際中獣医学院日本校の役員やアシスタント講師を務め、日本ペット中医学研究会学会の会員でもあります。

「私が中医学を学ぼうと思ったのは、病気になってから薬を使って治すのではなく、不調の原因を探り、漢方などで体質改善をし、病気になりにくい体にしていくことが大切だと思ったからです。特にうさぎは病気にさせない体にするために鍼灸や漢方、オイルなどそのこに適したものを処方がいろいろとあります。ただベースは西洋医学であり、中医学だけに偏ることはしません。西洋医学では『病気』にフォーカスし、中医学では『病気になった個々本体』にフォーカスするからです。どちらの良い面を取り入れ、動物にとって最適な治療を選択できるように考えています」と緑川院長。

温灸の道具
『塗る漢方』オイル
明るいお人柄の緑川院長

健脾利湿=湿(水分)を利して脾(胃)を健康に

健脾利湿(けんぴりしつ)

「うさぎは被捕食動物であり、常に気が張っている状態で全身をこわばらせています。体に『湿』を溜め込むと気の巡りが悪くなり、「脾=胃」に影響が出て、うっ滞になりやすいのです。湿をためないようケアが必要です」。

病院では日ごとの免疫力を高めるための食養生(旬を取り入れる、体を温める・冷やす食材の活用)や漢方、漢方オイルなど、おうちでも取り入れられるトータル的なアドバイスを行っています。

初診の際には(急患でない場合)、問診に時間をかけています。

「飼い主さんとはまず今現在の症状やどんな治療をしているのか、これからどんな治療を行っていきたいのかをお話ししたいですね。これには症状や治療方法の確認だけではなく、動物たちに私の声や環境に慣れてもらう意味もあります。また病気として治療できない症状…高齢で足腰が弱ってしまい、後ろ足を引きずるような動作の子やお尻周りが汚れてしまう子などには鍼灸や漢方を用いて気や筋肉、血流の滞りをうながし、改善をしていくという治療もあります。当院をセカンドオピニオンとしてもご利用いただけたらうれしいです」と緑川院長。

温灸・鍼灸治療

温灸と鍼灸は診察した上で必要なこに施術しています。温灸は温灸ホルダーによもぎ(葉)の棒灸を入れ、びわの葉エキスを含んだガーゼを患部にあてて使用します。腰にある百会(ひゃくえ)などのツボに当ててじんわりと温めながら成分が浸透します。熱いように感じる人もおられるかもしれませんが、うさぎにとっては適温です。

鍼はうさぎには犬猫に普段使っている針ではなく、足先などに用いる細い短い針を使用しています。犬猫用の針は筒がついているため、うさぎに使うと針をさす前に筒を患部に当てる動作でビクッとしてしまい、体が強張ってしまうからだそうです。

うさぎには細い針を使用

病院には愛うさぎ

病院には院長の愛うさぎ、快活なまつこちゃん(ブロークンオレンジ)と控えめなトミーくん(チェスナット=ともに1歳)の姉弟が暮らしています。定期的に鍼治療や漢方療法にも親しみ、健康状態も良好で、診察時間外は院内を上手におさんぽしています。

まつこちゃん
トミーくん

病院紹介「うめやしきアニマルクリニック」

東京都大田区大森中2-3-14
TEL/03-6436-8951
アクセス/京急本線梅屋敷駅1番出口より徒歩5分
診療時間/9:00~12:00、14:00~16:00(鍼灸)、16:00~19:00
休診日/日曜日 ※要相談、基本的には予約診療
予約/要予約
診療対象動物/犬・猫・ウサギ・ハムスター・鳥・フェレット・デグー・モルモット

※この記事の拡大版は2022年2月19日発売の本誌でも掲載予定です。