うさぎの基本

うさぎの体

今回は、犬や猫のオーナーさんにはあまり知られていない、うさぎの寿命や性別の違いについてご紹介します。今日からあなたもうさぎ通になれるでしょうか?!

うさぎの寿命

近年ペットとしての人気が高いウサギ
近年ペットとしての人気が高いウサギ

小動物の平均寿命は、ハムスターで2~3年、モルモットで6~7年と言われていますが、うさぎはかつて(10年くらい前)は、平均寿命は3~5歳でしたが、現在は7~8歳に伸びています。本誌の読者に10歳を超えて元気なうさぎも少なくなく、最高齢で14歳のうさぎもおります。人間に置き換えると、うさぎの5歳は45歳くらい、うさぎの10歳は75歳くらい、14歳は100歳くらいに相当します。

寿命が長くなった理由として、近年うさぎが犬・猫と同様にコンパニオンアニマル(伴侶動物)として迎えられるようになったことが大きな理由です。積極的にうさぎ診療に携わる獣医師の治療や研究発表が共有され、うさぎの健康維持のための食事がメーカーによって開発され、うさぎ専門店が健康的な食事や適切な環境を提案され、そして『うさ飼いさん(うさぎの飼い主さん)』同志の情報交換や、うさ飼いさんがうさぎに体調不良が見られるとすぐに病院へ連れて行き、初期治療を受けてきたこと、などがあげられます。

しかし、地方のうさ飼いさんになると、状況は異なります。うさぎの診察が可能で信頼できる動物病院が格段に少ないという現状があり、車で数時間もかけて、診療が可能な病院まで行かなくてはなりません。うさ飼いさんから夜間は救急病院がないため、具合の悪いうさぎを抱っこしたまま、朝を迎えたという話しもよく聞きます。うさぎは被捕食動物であるため、体調が悪くてもその状態を隠します。ですから体調が急変した時は、重篤な状態に陥っている場合が多いのです。

これはうさ飼いさんのみならず、小動物やエキゾチックアニマル全般の飼い主さんが望んでいるだと思いますが、地方の動物医療における課題を解決できれば、よりうさぎの寿命は延びていくのではないかと考えられます。

性別の見分け方

生まれたばかりのうさぎの赤ちゃん
生まれたばかりのうさぎの赤ちゃん

うさぎは繁殖能力が高い動物です。人から譲り受ける場合でも、ショップからお迎えする場合でも、飼い主さんは『性別』を知っておくべきです。性別が分からずにお迎えした場合、飼い主さんが目を離したすきに、うさぎ同士が接触してしまい、気づいたらメスが子どもをたくさん生んでいたというケースも少なからずあります。動物の里親探しは、大変です…。

実はうさぎの性別は扱いに慣れている人でも間違えてしまう場合があります。うさぎの生殖器は生後3ヶ月以降にならないと違いがありません。写真のように、3ヶ月くらいのオスの生殖器は肛門と位置が離れていますが、メスは位置が近いという点から判断します。6ヶ月以上になれば、オスは睾丸が成長してくるので、その有無で判断することができます。毛におおわれていてわかりにくかったり、1匹で確認してもわかりづらいので、動物病院で確認してもらうとよいでしょう。

生後6ヶ月を過ぎたうさぎのオスの睾丸
生後6ヶ月を過ぎたうさぎのオスの睾丸
うさぎのメスの生殖器
うさぎのメスの生殖器

性別で変わってくること

 うさぎは見ためのかわいらしさとは対照的に、飼い主さんを困らせる行動をとることがあります。一般的に生後6ヶ月くらいを過ぎて思春期に入ると、オスは縄張り意識が強いため、自己主張が強くなり、おしっこをまき散らすスプレー行為や、順位づけのためにマウンティングをすることがあります。メスは子どもを生み育てる本能から、オスよりも独立心が強く、マイペースなコが多いと言われ、ホルモンのバランスを崩すと、気が荒くなったり、自分の毛をむしって巣作りをしたり、牧草を口にくわえてケージ内をせわしなく動いたりする『偽妊娠』の症状が現れます。

思春期にオス、メスに共通して見られる問題としては、攻撃性の増加、ケージかじりなどがあります。あまりにもひどくなり悩んでいる方には、問題行動を軽減してもらうための一つの選択肢として、オス・メスともに不妊手術(避妊・去勢)を施す場合もあります。しかし、手術を行ってもマウンティング行為などは慣習として残ってしまうコもいるので、一概に対策になるとは言えない場合もあります。

オスの子ウサギ
オスの子ウサギ

オスはスプレー行為やシニアになって精巣腫瘍にならないための予防として、去勢手術を行うケースが多いようです。

特にメスをお迎えした方が、避けて通れないのが子宮の病気です。メスは子宮系の疾患率(子宮ガンなど)が高いことが研究発表されており、5歳を過ぎて高齢になるにつれ、その確率は高くなります。飼いうさぎは、野生のうさぎのように何度も出産をしないため、ホルモンバランスの乱れから発症しやすいと言われています。獣医学上は、予防として体の負担が少ない、1歳未満の早い時期に、子宮の摘出手術をするよう推奨しています。しかしながら、神経が細く、ストレスに弱い動物うさぎは動物病院へ行くと、緊張感から診察台の上で暴れて保定が困難なコもおります。病院を受診した後は、大きなストレスを受け、自宅に帰ってから食事拒否になるコも多いのです。

それを防ぐため、うさ飼いさんはうさぎが健康な時から、せっせと病院の環境に慣れさせることが必要です。また、うさぎの麻酔手術は気管挿管が困難でリスクが高いことから、手術が可能な動物病院も限られます。

飼い主さんにとっても、信頼できる病院がないと、なかなか決断に踏み切れないことでしょう。大切なパートナーに元気でいてもらうためにどうすべきか、できるだけ複数の獣医さんやうさぎ専門店の意見、経験があるうさ飼いさんの体験談を聞くなどして、熟考することが必要です。

お月さまへ帰るうさぎ

 本誌「うさぎと暮らす」では、記事中で特有の言い表しがあります。それはうさぎに対する想いが詰まっています。お月さまからうさぎが飼い主さんの元へやってきて、任務を果たすと(天命を全うすると)『お月さまへ帰っていく』という表現です。うさぎが元気にお月さまで暮らしていることをイメージすることは、『うさ飼いさん』が悲しみを乗り越えていくモチベーションにもなります。

お月さまに帰ったうさぎさん
お月さまに帰ったうさぎさん

 本誌には9年前から『お月さまへ帰ったうさぎ』という読者さんの投稿による連載コーナーがあります。うさ飼いさんは愛うさぎを失った悲しみと、過ごした時間の喜びをつづってくださるのですが、それは私たちも編集していて辛いページでもあります。大切なパートナーを失った飼い主さんにとって、このコーナーを見るのが辛いという声もあるにはあるのですが、飼い主さんがうさぎと生きた証を手紙に綴り、誌面に掲載することで、掲載ページをご家族でご覧になって心を軽くしてくださっているという方もおられます。うさぎが大切な家族の一員であるからこそ、このような連載企画が長く続いているのです。

機会がございましたら、ぜひ書店などで本誌のこのコーナーをご一読ください。動物を愛する当サイトをごらんの方にも共感していただけると思います。