うさぎがかかりやすい病気をご紹介します。今回は『消化管うっ滞』『スナッフル』です。
うさぎの病気は見つかりにくい
まずうさぎは体調不良を隠す動物であることは常に頭に置いておくようにしましょう。自然下においてうさぎは被捕食動物であり、地上ではヘビ、キツネ、テン、イタチなどの肉食獣、空からは鷹やフクロウなどの猛禽類に常に狙われています。緊張が続く環境の中で必死に生きており、昼間のんびりと食事をとったり、眠り込んだり、けがや病気をしたりすると、あっという間に食べられてしまいます。うさぎは弱みを表に出さない動物であり、それがDNAに刻まれています。
ですからうさぎが体調不良のサインを表に出した時には、時としてあっという間に悪化していくことがあることを一番恐れなくてはなりません。
私たちができることは、わずかなサイン(食欲が落ちた、うんちが小さいといった変化)を見抜き、早期段階で動物病院へ行くことが悪化を防ぐ最大の予防策になります。特に飼い主さんが仕事から帰ったとき、うさぎの不調を発見した場合は体調不良に陥った時間が不明であるため、すぐに病院へ行くようにしましょう。夜間の場合は救急動物病院へまず電話して症状を説明して指示を仰ぎましょう。
消化管うっ滞
うさぎを飼育した方がよく耳にする症状の一つに「うっ滞」があります。うっ滞と言われても病気?症状?何なのかさっぱりわからない方もおられるかもしれません。しかしうさぎをお迎えしたならば知っておかなくてはならない「症状」です。
消化器官(胃腸)の動きが衰え、食べ物や飲み込んだ毛、ガスがたまりおなかがパンパンに張って食事をとらなくなっている状態のことをさします。うんちも出ていない、黒くて小さい、大きさが不ぞろいといったケースになります。緊急で対処をしないと命にかかわることもあるので、放っておかずに早めに動物病院へ行かなくてはなりません。
こうした例はうっ滞の症状が表れている可能性が高い状態です。不安になって何か対策はないものかとインターネットで検索してしまう方も多いことでしょう。しかし飼い主さんが自分の都合のいい様に解釈して病院へ行かなくても平気かも…と判断するのは危険です。
なぜならばその原因は飼い主さんが思いつく範囲のこと、例えば偏食(牧草を食べないことによる繊維質不足)や自分の毛を大量に飲み込んでしまったという場合だけではないからです。おなかに関係することだけではなく、体のどこかに異常(歯痛や結石、腫瘍がある、骨折、腫れやケガなど)があって、痛みがあって引き起こされていることもあるからです。獣医さんも第一段階としては胃腸の動きを促す治療(点滴、胃腸の運動を促進する薬剤投与、強制給餌など)をした上で、本筋の原因を見極める検査を複数行った上で治療をしていきます。
一度うっ滞を経験している飼い主さんは二度とかかってほしくないと、傾向をつかむため、日記(天気、室温、気温、うんち・おしっこの状態)をつけたり、獣医さんに相談して常備薬やサプリメントを備えておいたり、いろいろと努力をされているようです。
筆者も経験がありますが、病院で処置を受け、回復傾向になり…うさぎがご飯を食べはじめる、ゼリー状のうんちが出始めたときは心からうれしく思いました。
病院へ行くまでにおうちでできる応急処置としては、ハイポトニック飲料(糖質や塩分が低めのもの)やぬるま湯を飲ませたり(給餌が苦手な人は誤嚥が心配なのでスポイトがおすすめ)、お耳のマッサージ(根元から耳先へ)、体をブランケットなどで温めるといった対処をします。おなかは硬く張っていてもマッサージはしないようにしてください。
日ごろのうっ滞の予防として小誌の連載、病気学でおなじみのうさぎ博士・つるのしんきち先生は下記のように紹介しています。
- ブラッシングをする
- 繊維質の高いエサを与える(牧草を主食にする)
- グルテンフリーのペレットを与える
- 一気食いをさせない
- 水をしっかりと与える
- 毛球予防・除去剤を与える
- タンパク分解酵素を与える
- 部屋の中で放す時に異物を口に入れさせない
- ストレスがたまらないように運動させる
なお、毛球の形成には水分が少ないことも関与していますので、水をしっかりと飲んでいるか確認してください。
そして運動あるいは遊ぶ時間を設けるとストレスの減少になり、毛づくろいが減る上に胃腸の動きが活発になります。
さらに編集部よりもう一つ。病気にならずともかかりつけの動物病院を2件程度探しておくこと。ファースト、セカンド(通いやすい場所にある、うさぎ診察に手厚い病院)があるとよいと思います。
スナッフル
うさぎが呼吸器疾患にかかり、くしゃみや鼻水が出ること。人間でいうところの風邪のような症状をさします。うさぎは生理的にくしゃみをすることはあまりありません。牧草やラビットフードの粉を吸い込んだ時や水を飲んでむせたときなどには時々くしゃみをすることがあるかもしれませんが…。
スナッフルはひどくなるとくしゃみが連続したり、グズグズと鼻が詰まった音を出したり、白や黄色っぽい色の粘性のある鼻水で鼻の周りを汚していたりします。
その症状を引き起こした原因として、環境の変化(引っ越しや工事など)で過度にストレスが加わった、不衛生な生活環境、病中病後の免疫力が低下しているときなどに、パスツレラ菌などの細菌によって発症します。
粘性のある鼻水が出ると前足の内側が汚れるので、くしゃみをしていなくても普段から前足の内側を確認することで軽い症状の時に気が付くことができます。
重症になると、結膜炎になり涙目になることもあります。慢性化しないように病院で検査を受け、抗菌薬などで早期治療をすることが大切です。
抵抗力が弱まっている仔うさぎやシニア世代のうさぎ(8歳以上)は、スナッフルにかかると命に関わることもあり、伝染力も強いため、多頭飼いのおうちの場合は感染を防ぐために他のうさぎと離して過ごさせましょう。
次回は斜頸や膿瘍を紹介します。