それは一羽のうさぎさんとの出会いから始まりました。家族の一員として我が家にやってきた白い小さなうさぎの女の子、千十「せんと」。
最初は緊張からか隅にうずくまって動きませんでしたが、にんじんの葉っぱを差し出すと、「シャカ♪シャカ♪シャカ♪」。私たちに心地よい音を聞かせながら、みるみるうちにおいしそうに全部食べてくれました。
ほかのうさぎさんたちもにんじんの葉っぱを必要としているのではないだろうか?もし新鮮な葉っぱを届けることができたら、喜んでくれるのではないだろうか?
これが、うさぎ畑の原点です。(うさぎと暮らすNO69.うさぎ畑・広告から引用)
愛するうさぎさんのためのにんじんの葉っぱ農園
高知県は、南は太平洋に面し、北は四国山脈に挟まれ、穏やかな気候と豊かな自然が魅力です。特産物はかつおやしょうが、トマトなどが知られています。この地で生まれ育った小島(おじま)学さんは、脱サラして2012年からうさぎ専用のにんじん葉農家を始めました。
「高知県や高知市では農業を目指す人を後押ししてくれる制度があるんです。県内はしょうが農家や兼業農家が多く、にんじんだけという農家はいなかったので、あえてにんじんの専業農家を目指すことにしました。県が推進している農業研修や県外のにんじん農家に研修へ行って指導を受け、基礎を身につけました。」と小島さん。
肝心なのは畑探しで、空いている土地の情報入手がしづらく、容易ではなかったそうですが、つてをたどり、聞き込みを重ねて、現在は高知市春野町、いの町、土佐市に水はけのよい5つの畑を所有しています。いくつかの畑のそばを流れる仁淀川(によどがわ)は全国の一級河川の水質ランキングで連年1位を記録し、透き通ったコバルトブルーの美しさから近年は「NIYODO BLUE」と呼ばれ、脚光を浴びています。
小島さんがにんじんの栽培をスタートした当初はヒト用のにんじんを生産するつもりだったそうです。ところが2年後、ご家族からペットが飼いたいと言われ、うさぎ(せんとちゃん・メス)をお迎えします。すると知人から「『にんじんの葉はうさぎの好物である』と聞いたんです。最初は半信半疑でしたが与えてみたところ、とてもよく食べました。もともと誰かと同じことはしたくなかった、誰もやっていないことをやる、それが自分の役割・意義であると思っていたので、『うさぎ専用にんじん葉』でやってみようと考えました」。
早速、うさぎ専門店に問い合わせてみると、「うさぎはにんじん葉が大好きなのでニーズがありますよ」と太鼓判を押してもらえたのだとか。2014年の暮れには首都圏のうさぎ専門店への出荷を始めたそうです。
小島農園では、向陽(こうよう)という品種のにんじんを栽培して、無農薬栽培で作っています。にんじんの葉は虫がつきにくいのだそうです。水をまかずに、雨水だけで育てる畑もありますが、にんじん葉はまるで野草のように生い茂っています。
「当農園のにんじん葉は通年うさぎにお届けできるように心がけています。冬は多少生育が悪いこともありますが、一定のクオリティは保てています。通年収穫が途切れないように、畑によって種まき時期をずらしたり、チモシーのように、2番刈り、3番刈りのように一つのにんじんから何度か一定の草丈になると刈り取り、という収穫をしています。これまで運営してきて、うれしいことに、にんじん葉を食べなかったといううさぎさんはおりませんでした。どのうさぎさんも喜んで食べてくれているそうです」と小島さん。
基本的に畑の運営は小島さん一人ですが、にんじん葉の仕分けや包装、発送はパートの方にもお願いしているそうです。にんじん葉はうさぎ専門店へ出荷し、根は地元の直売所などに出荷しています。しかし、小島農園の利益はあくまでもうさぎ用のにんじん葉です。小島さんは誰も手がけていない、オンリーワンであるうさぎ用のにんじん葉を生産し、黒字経営をしていることに誇りを持っています。
高知県の真夏は35℃近くなり、畑の一人作業は厳しい時期となります。しかし、小島さんはあくまでもマイペース。「畑仕事は早朝の涼しい時間帯に作業を始めて10時くらいには終わらせています。そのほかの時間も有効に生かしています。農業は自分のペースでうまくやれば決してきついばかりではない。自分が培ってきた経験をこれから農業経営を志す人にモデルケースとして、紹介していきたいという思いもあるんです」。
最後に「うちのにんじん葉をより多くのうさぎに食べてもらって高知県の恵み、『畑』を感じてほしいです」と小島さん。小島農園のにんじん葉、「うさぎ畑」というブランド名です。
ご興味を持った方は一度ぜひゲットしてみてください!
にんじん葉の栄養
羽状に細かく切れ込みが入った繊細な形状をしており、食欲が落ちたときでもうさぎにとって食べやすいようです。栄養成分はβ-カロテン(体内でビタミンA)、ビタミンEが含まれ、抗酸化作用(老化防止)、肝臓・腎臓機能の働きを高める効能があります。
にんじん葉をおいしく保存する方法
数箇所空気穴を開けたビニールに袋に入れ(水分をためないため)、5~10℃で保存し、冷やしすぎないこと。冷蔵庫では野菜室に入れておくのがおすすめだそうです。一度に食べきれない場合は乾燥させてドライフードにしてうさぎのペレットなどにふりかけてあげてもよいでしょう。
お問い合わせは…
「うさぎ畑」では新鮮なにんじん葉をほぼ一年中提供することが可能です。栽培期間中無農薬栽培。肥料をほとんど使わない自然な育ち方が一番なのだそう。一本一本手刈りで収穫しています。