スタッフコラム

事故・災害からうさぎを守るために――『ペットセーバー』の資格を知る

先日、トンガ沖の大規模噴火があり、約8000㎞離れた日本においても海に面したエリアでは深夜に携帯電話に警報が何度も通知されました。うさ飼いさんからは「うさぎがのんびりしている時間だったが、びっくりして逃げまどっていた」というお声がありました。こうした自然災害だけでなく、おうちの中で電気コードをかむ、誤飲などの事故が起きてしまったら、飼い主さん自身がレスキューの仕方、対処を知っておくことで、冷静な判断をし、自信を持って行動することができます。今回は「ペットセーバー」の資格を取得し、うさぎの飼い主でもある寺村万紀さん(東洋医学アドバイザー、日本アニマルフィトセラピープラクティショナー、愛玩動物管理士2級)にその内容についてご紹介いただきます。

ペットセーバーの種類

アメリカの資格『ペットセーバー』では、アメリカ獣医師学会のガイドライン、FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)、Ready.gov(アメリカ合衆国国土安全保障省)のエビデンスベースド(統計データに基づく)で作成されていて、多くの命を助けてきたプロが監修しています。

■ペットセーバーベイシック&アドヴァンス講習
日常生活におけるペットの救急法、ペットの事故防止、手当の基本、人工呼吸や心臓マッサージの方法、止血の仕方、包帯の使い方、骨折などの場合の固定、搬送、災害時の心得などについての知識と技術を習得。

■ペットセーバーEMR(Emergency Medical Rescue救急救助員)
ペットの倒壊家屋、生き埋め、壁に挟まった状態、川に流されたペットの救助法、マンホール等からの救助法、災害時に使えるロープの結び方各種を習得。ただし、犬猫をベースにして習います。

資格の紹介

ペットの救急法とペットの防災

ペットセーバープログラム代表理事・サニーカミヤさん
ペットセーバーの救急救助員資格修了証

日本と海外との違い

日本は『人命救助優先』という意識が根強いと思われます。洪水で屋根の上で愛犬と救助を待っていた方を助ける際に、自衛隊が犬も一緒に助けた事で賛否両論がありました。日本では、アニマルレスキューに関してルールが確立されていないのが現状です。
小さな命を助けるのが当たり前という日が来るには、飼い主の協力が必要不可欠だと思います。海外では、レスキューに携わる人たち(レスキュー隊員、医療従事者、民間ボランティア)が一丸となり救助にあたります。
普段から活動している者同士が日々、さまざまな情報交換などで相互に成長しています。
そのため、災害時には『その時にするべき事が状況を見て各々が動けるよう』に調和を取りながら、協同しながら救命救助を行っています。

シミュレーション

いつ、どこで災害が起きるか分からないため、日頃からハザードマップなどで確認しておく必要があります。自宅から同行避難できる場所を確認し、実際に歩いてみます。
実際に歩き、周りの建物など見ることで安全に移動するにはどのルートが1番よいか確認できます。
シミュレーションしておく事で、いざという時に落ち着いて行動ができます。あらゆる災害時を想定し、シミュレーションしておく事がよいと思います。
※近所の避難所が同行避難できるとは限らないので、各自治体に問い合わせしてもよいでしょう。

シミュレーション内容

  • 職場(もしくは外出先)から家までのルートを確認
  • 自宅から避難所までのルート確認
  • 自宅以外の場所の場合、「何を持って移動するか(なるべく荷物を減らす)、家族との連絡手段や待ち合わせ場所」など
  • 地震体験ができる施設などを利用し、地震の揺れを体感する事でどう動けるか、どう行動すればよいかなど具体的に考えておく

避難所

同行避難が可能な避難所へ行きます。
避難所には、動物が苦手な人・アレルギーがある人がいます。その事を考慮し、被災者同士でコミニュケーションを取ることで同行避難もスムーズにできます。
物資は、エキゾチックアニマルに関しては配給があるかは分かりません。流通もストップする可能性があるので最低1週間分のフード類を準備しておくことをお勧めします。
仮に配給があったとしてもペレットが普段与えてるメーカーではないと下痢を起こす可能性があります(腸内バランスが崩れる)。うさぎによっては、牧草もロットが変わっただけでも食べなくなるほど、食には保守的で好みがはっきりしているコも少なくないので、準備は大切です。

洪水や土砂災害、津波のリスクが地域ごとに分かるハザードマップ(https://disaportal.gsi.go.jp)

常備しておくもの(うさぎ用)

  • 牧草、ペレット、水、薬(服用ある場合)、1週間分
  • 金網やプラスチックのキャリー
  • ハーネス&リード
  • ご飯入れ、給水ボトルなど
  • ペットシーツ
  • 爪切り、ブラシ(避難になった場合を想定したら定期的にグルーミングできないと病気になる可能性ある)
  • 愛兎の記録ノート
    《まとめておくとよい内容=かかりつけの病院の連絡先、愛兎と飼い主の2ショット写真(自分のコだという証明になるため)、愛兎のプロフィール(避妊、去勢の有無や性格を記述しておくとよい)、食事内容(1日のペレットや牧草の与えている分量、ペレットのメーカー、特定のショップの牧草しか食べない場合はそのメーカーや販売店名、牧草の種類、普段あげているおやつ類など)、既往歴(治療中の場合は、病名やいつから治療しているか、服用している薬名など)》
    ※ノートを持ち出すことが出来ない場合も考えられます。スマホやモバイルPCなどにデータ化しておくと安心です。
愛兎の記録ノート。写真も大切!

避難時にあった方がよい物

  • 包帯、ガーゼ(応急手当ができる)
  • ブランケット(寒さ対策、視界を暗くするなど)
  • ゴミ袋
  • 使い捨て手袋
  • 生理用ナプキン(止血に役立つ)
  • 酸素スプレー

緊急時、うさぎの呼吸が苦しそうな時の応急処置として携帯酸素スプレーを活用

日常生活での対応

抱っこできるように日頃から練習しておく必要があります。災害時は、1秒を争う事になりますので早急に抱っこしてキャリーに入れる必要があります。うさぎ自身にキャリーに入る練習をさせる事で「キャリーの中が安心できる場所」と認識させられれば迅速な対応ができます。
避難した場合、ケージよりも狭い所に長時間いることになります。人と同様に普段よりも狭い所にいるのは、とてもストレスになります。
うさぎは、耳で体温調節するので耳が熱過ぎないか、冷た過ぎないかなど確認して下さい。人間よりも体温が高いので、通常の耳の温かさを飼い主自身が体感で覚えるとよいかと思います。
携帯電話にはかかりつけ医やタクシー会社(ペットの同乗が可能か要確認)をワンプッシュコールできるよう設定しておくとよいでしょう。

生活環境の見直し

《ケージ飼育の場合…》
多頭飼いの場合、ラックを使って高い位置にケージを置いているケースもあると思います。地震が起きてもケージが落ちないように固定して下さい。ケージの中にトンネルやロフトを設置している場合、うさぎがパニックを起こしケガする可能性があります。ケージ内が安全か確認しておく事が必要です。

《放し飼い飼育の場合…》
うさぎ自身が好きな場所、怖い事があったら隠れる場所など…。どこにいるか把握しておく必要があります。恐怖心で隙間に入って出てこない!という事もあると思います。早く愛兎を見つけられるように家具の配置を見直したり、転倒しやすい家具がないか点検しましょう。

熱中症

氷や保冷剤をタオルに包んで身体を冷やしてあげて下さい。人と違い重症度は分からないため、水は飲ませないようにして下さい。身体を冷やしながら早急に病院で適切な処置をしてもらって下さい。

やけど

うさぎが携帯の充電コードや電気コードをかじり、感電してしまって口の周りや口の中など内側のやけどをした可能性がある場合、早急に病院で診察&処置してもらって下さい。対策として、ケーブルをかじらないように保護カバーをしておきましょう。

車での移動時

車で移動する際は、必ずキャリーに入れてキャリーをシートベルトで固定して下さい。うさぎの場合は、含気骨なので骨折したら複雑骨折になる確率は高いです。

※体調不良のうさぎの場合、飼い主さんが家から病院へ行くまでの間に応急処置をして、獣医さんにうまくバトンタッチできるのが理想です。