うさぎが体調を崩してしまった時、すぐに病院へ電話してパッと出かけたいのは山々ですが、そうもいかない場合もあります。コロナ禍で感染者が多かった時もそうでしたが、外出が制限されるようなことが今後もおこりうることもあるでしょう。また飼い主さん個々のさまざまな理由、「真夏や真冬など、うさぎの移動が心配」「かかりつけ病院が遠い」「仕事が休めない」「自分の体調が悪い」「薬だけ取りに行きたい」など、ネックになることもあると思います。
そこで最近は「オンライン診療」が一部の動物病院で導入されていたり、総合的に病院を紹介するシステムを運営する企業サイトが誕生しています。ビデオ通話によって相談、または診療、処方を受けることが可能となります。利用には条件があったり、現状は実施病院数は少なく、トライアルの段階であるといえますが、どのような状況であるのかをご紹介いたします。
コロナ禍によって議論が進んだオンライン診療
ヒトの医療では、2018年厚生労働省によって「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が策定され、これによって、臨床の現場でのオンライン診療の活用の基準が明確になりました。また、新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン診療に関する議論が進み、今年のガイドラインと診療報酬の改訂では、初診の恒久化や報酬体系の整備がされました。
ペットにおいても当然ながら法令を遵守する中での適切な遠隔診療について運用ルールの整備が求められていることから、2022年7月に公益社団法人日本獣医師会より「愛玩動物における遠隔診療の適切な実施に関する指針」が発行されました。
日本獣医師会の遠隔診療に対する指針
愛玩動物における遠隔診療の適切な実施に関する指針〈一部抜粋〉
情報通信機器を用いた診療は、遠隔地や離島のみならず、獣医師や動物病院が不足する地域や日中に来院できない飼育者などにとっても有用で、愛玩動物の治療の選択肢を広げることになります。
また、情報通信技術の進展に伴い、情報通信機器を用いた診療が一層進んでいき、適切な情報を愛玩動物の飼育者に届けるという動物病院の機能を強化する可能性もあります。同時に、動物病院にとっても、遠隔診療を活用することで、診療効率が上がり、かつ対面診療と組み合わせた多様な診療方法を採用することが可能となります。
遠隔診療
遠隔獣医療のうち、獣医師-飼育者-飼育動物間において、情報通信機器を通じて、飼育動物の診察及び診断を行い、診断結果の伝達、処方等の診療行為をリアルタイムに行う行為。
離島、へき地等の遠隔地に所在する場合、通信環境が整っておらずリアルタイムで遠隔診療を実施できない場合及び夜間救急時には、録画動画、写真、文字等による情報のやり取りにより実施することも認められる。
ただし、文字、写真録画動画等のみのやり取りで完結してはならず、必ずその後にリアルタイムによる情報のやり取りを行い、情報を補完する必要がある。遠隔診療によって適切な診断をするために必要な情報が得られないと獣医師が判断した場合は、獣医師は飼育者に、直接対面による診察を受けるように指示しなければならない。
遠隔診療の限界などの正確な情報の提供
遠隔診療においては、対面診療に比べて得られる飼育動物の状態に関する情報が限定される。獣医師は、こうした遠隔診療による診療行為の限界等を正しく理解した上で、飼育者及びその家族等に対して、遠隔診療の利点や不利益等について、事前に説明を行わなければならない。
最低限遵守すべき事項
a 直接の対面診察と同等ではないが、代替し得る程度の飼育動物についての有用な情報を得るよう努める必要がある。
b 原則として、初診は、直接の対面による診療を行うべきである。ただし、飼育動物が直ちに適切な獣医療を受けられない状況にある場合であって、「かかりつけ獣医師」が飼育動物のために速やかに遠隔診療による診療を行う必要があると認めるときは、遠隔診療を行う必要性、有効性及びそのリスクを踏まえた上で、獣医師の判断と飼育者の同意の下、初診であっても遠隔診療は許容される。なお、この場合であっても、原則として遠隔診療の後に、直接の対面診療により経過の確認を行うべきである。
c 「かかりつけ獣医師」が飼育者といる場合の遠隔診療において、情報通信機器を通じて診療を行う獣医師は、飼育者といる獣医師から十分な情報が提供されている場合は、初診であっても遠隔診療を行うことが可能である。
オンラインで可能な診療・相談
かかりつけの獣医師に対して、対面で受診したことのある疾患等に関してはオンライン診療が可能です。また、一定の条件下を除き、原則初診で行うことはできません。ただし、オンラインの「相談」に関しては「はじめまして」の獣医師に対しても相談することが可能です。
オンライン診療を行う病院は全国的に増えていく見込みで、各病院単体で実施しているところもあれば、オンライン治療が可能な病院の紹介を行う企業サイトもあります。条件を満たした人には再診からは処方薬を自宅で受け取れることも可能です。
動物病院専用オンライン相談・診療システムを手掛けている企業には、株式会社みるペットや株式会社セゾンペットなどがあります。
株式会社みるペットは数年前からオンラインシステムを実施するための準備をしていました。コロナ禍で需要が増したこともあるでしょう。
株式会社みるペットが過去に行った動物病院向けのアンケート調査では、52.5%の獣医師がオンライン診療を「導入している」、「積極的に導入したい」、「導入を検討している」と回答されたそうで、別の飼い主さん向けのアンケートでは、69.4%の方が、オンライン診療を「利用したい」、「どちらかというと利用したい」と回答されています。みるペットでは2020年5月よりシステムを開始し、140件以上の動物病院に導入されているそうです。
☆みるペットのHP
利用の仕方:クレジット決済
システム利用料 | オンライン相談・診療を1回ごとに¥300(税抜) チャット相談を1相談ごとに¥100 (税抜) 上記に加え、動物病院に対しての予約料、相談・診療費用等が別途かかります。 |
病院の検索は無料。お住いのエリアと対象動物「うさぎ」を入力すると、病院が検索できるようになっています。閲覧すると基本的に再診の診療を受け付けていますが、受診経験がなくても相談を受けている病院もあります。
まずはかかりつけの先生に聞いてみよう
オンライン診療は、当然ながら獣医師が直にペットの症状や患部を検査・確認する対面診療と比べ、確定をしづらい点が多々あるため、一度対面で診察したことが条件であるのは理解できると思います。また動物病院側の問題で、少人数制の病院などでは対応する人員が避けないなどの問題があり、早急な導入は難しいかもしれません。
それでも自身がすぐに病院に行けない、うさぎをすぐ連れていけない状況にある時、真夜中などで病院がやっていない場合など、獣医師とオンラインで相談をすることで、大切な命を救うための一つ手段にはなるのではないでしょうか。
※みるペットでは、夜間20:01~7:59の時間帯に対応している病院検索も可能です。
うさぎの獣医療は残念ながら飼育頭数に対し、犬猫ほど獣医師が充実していないのが現状です。飼い主さんもそうした点で病院探しにご苦労が絶えないと思います。
一番おすすめなのは「かかりつけの動物病院」に「オンライン診療を導入予定ですか」と尋ねてみるとよいでしょう。その病院が導入していなくてもお知り合いを紹介してもらえたり、今後の展開など、意外とよい話が伺えたりします。
筆者もかかりつけの動物病院3件に聞いたところ(現地での診察経験がある病院)、真夜中の対応は不可でしたが、3件ともリモートなどでのオンライン相談が可能でした。獣医師さん側に負担になるような気がしましたが、その時間も予約で行うので、異口同音「全然OK」とおっしゃっていました。
うさぎが元気な時から、オンライン診療をご存知の病院が行っているか、調査しておくとよいでしょう。セカンドオピニオンやすぐに行けない場合の対策として、利用するのもよいかと思います。
こうしたシステムはどこもまだスタートしたばかりですが、ゆくゆくはうさぎを診てくれる獣医さんがいないと嘆く地方の飼い主さんにとっての光明になるのではないでしょうか。うさぎ診療の地域格差が解消していくことを願いたいです。
※こちら今後本誌でも導入されている病院などを取り上げていきます。