読者さんからご質問に多かった内容に「オスの去勢手術」があります。生殖器に病気が現れるのが老齢期のケースもあり、若いうちに予防として施すことをためらう方もおられます。東京・台東区の佐野動物病院院長・佐野晋院長に教えていただきました。
男の子に可能性のある病気
男の子うさぎは生後3ヶ月以降が性成熟の目安です。性周期はなく、常に発情が可能です。オスの習性の特徴として飼い主さんの手や足、ぬいぐるみに発情する、攻撃的になる、尿スプレー、うんちをいたるところにするなどがあります。
こうした行為を軽減したい、(多頭飼いなどによる)繁殖防止、生殖器の疾患などの予防を考えた場合、去勢手術を検討することになります。
生殖器の疾患はメスに比べて罹患率は低いですが、精巣炎、精巣腫瘍(潜在的悪性が多い)、陰嚢ヘルニアが見られる個体があります。
去勢手術の内容
うさぎは精巣下降が生後約3ヶ月で見られるため、お腹の中から陰嚢に下りてきているか、必ず確認をしてもらいましょう。下りていない場合は開腹手術になります。ただし正常でも陰嚢からお腹に戻る事が可能であるため、確認には注意が必要です。
正常な男の子の睾丸は左右に離れていて細長い形状をしています。睾丸を引き出して精管と血管を超音波メスなどで止血し、片方づつ摘出し、皮膚は埋没法や医療用ボンドでくっつけます。
手術時間は全身麻酔となり約数十分で、費用は3万円程です。術前に必ず血液検査やレントゲン検査で異常がないことを確認しておきましょう。
手術適齢期
半年以降がお勧めです。体力のない病気のうさぎ、シニア期のうさぎには適さない場合があります。
手術は基本日帰りで痛み止めや抗生剤の薬をもらって帰宅します。術後に一番多いトラブルは傷口の咬傷です。それを防ぐため抜糸までの1週間はカラーを付けて家で過ごします。ただし盲腸糞が食べづらくなるため、飼い主さんが手でひろって与える必要が出る場合もあります。カラーを付けない場合もあるため、担当の先生と相談してください。
術後も1ヶ月くらいは繁殖能力がありますので、メスと一緒にするのは避けましょう。
なお、スプレー行動に関しては90%以上消失するという報告があります。
去勢手術のメリット・デメリットを考える
オスの去勢手術については獣医師側から積極的に促すのはうさぎの発情がひどい、あるいは病気にかかっている時です。
まずは飼い主さんがうさぎのことを何でも相談できる動物病院を見つけておきましょう。事前に健康診断などで病院へ足を運んでおき、うさぎの診察、手術経験が豊富な獣医さんを探しておくことが大切です。
精巣腫瘍=潜在的悪性腫瘍とは、病理検査では良性ですが、将来的に全身転移をし、命の危険がある事を指します。
去勢手術のメリット
病気の予防
- 精巣(睾丸)、精巣上体…腫瘍、炎症
尿スプレー行為の防止または減少
繁殖の防止
去勢手術のデメリット
全身麻酔の不安
術後のケア
太りやすい
手術の費用
手術にあたって
飼い主さん自身が獣医さんとよく話し合い、手術の内容など、気になる点はすべて相談してクリアにした上で臨むことをおすすめします。ただし、飼い主さんが手術を望んだとしてもうさぎの病気の進行していたり、高齢のために体力の低下がある場合、手術が不可能な場合もあります。