うさぎの基本

【うさぎの雑学④】世界の民話 その2

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奥深いうさぎの世界…。うさぎを愛する皆さまでも、まだまだ知らないことがあるかも?! うさぎに関する豆知識をご紹介。今回のテーマは「世界各国に伝わるうさぎが登場する民話」をご紹介します。少々残酷なストーリーもあるので苦手な方はスルーして下さい。

中国の民話

うさぎの知恵

1匹のうさぎが神様のもとを訪ね、願い事をしました。
「神様、どうか私をウマのような大きさにしてください」
神様は、うさぎに問い返します。
「お前はすでに、ウマよりも速い脚をもっているではないか。この上、何が不足でそのように望むのか」
うさぎが答えて言うには、
「わたしは、もっと速く走りたいんです。こんな小さな身体でさえ、誰よりも誰よりも早く走ることができるのですから、ウマほどの大きさともなれば、風のように走ることができるに違いありません」
「はたしてそうかな。やめておいた方がよかろう」
神様はそう言ってうさぎを止めます。しかし、どうしてもうさぎはあきらめず、何度も願いを繰り返したので、神様もついに承諾しました。
「そうまで願いのなら仕方がない。だが、後悔しても知らんぞ」
やがてうさぎはムクムクと膨れ上がり、ウマほどの大きさとなりました。喜んだうさぎは、早速風のごとく駆けようとしましたが、すっかり重くなった体は、のっそりとしか動けませんでした。

思想書『淮南子(えなんじ)』より

うさぎは体が小さいから、それを克服するためにウマよりも速く走れるように進化しました。そこでウマのような大きさになってみたとしても、あまり意味がなかったという教訓があるようです。

うさぎを待つ男

男は熱心な農夫でした。
ある日、男がいつものようにせっせと畑を耕していると、不意にどこかの茂みから、うさぎが飛び出してきました。
よほど慌てていたのでしょう、うさぎは飛び出したはずみで、そばにあった切り株に、思い切り頭をぶつけて死んでしまいました。
思いがけない獲物を手にして、男は大喜び。しかし、何やら思うところがあったらしく、翌日から男は鍬を捨て、切り株の前に座り込んで一日を過ごしはじめました。
そこへ通りかかった百姓仲間が、不審に思って男に尋ねます。
「おまえ、そんなところに座って、いったい何をやっているんだ?」
すると男は、慌てて声を潜めて言いました。
「しっ! 大きな声をたてるんじゃない。俺は今、この切り株にうさぎがまたぶつかるのを待っているんだからな」

思想書『韓非子(かんぴし)』より

この話から「株を守りて兎を待つ」あるいは「守株の愚」= 古い習慣にこだわり、改善しようとしない愚かさを指す言葉が生まれました。また日本では、北原白秋作詞・山田耕筰作曲で『待ちぼうけ』という陽気なリズムが印象的な歌になっています。

日本の神話・民話

因幡(いなば)の素兎(しろうさぎ)

日本最古の現存する書物『古事記』に登場するのが因幡の素兎です。素兎とは裸のうさぎの意か、白うさぎの意か、諸説あるそうです。
大国主神(おおくにぬしのみこと)は、八十神(やそがみ)といわれる大勢の兄弟神とともに、因幡の八上比売る(やがみひめ)に求婚するため、当地に赴きました。兄弟神は荷物を入れた袋を大国主に押しつけたので、彼はまるで召使いのようでした。
一行が、気多(けた)の岬に差し掛かった時、海辺に皮を剝かれたうさぎが横たわっていたので、兄弟神たちはこう言いました。
「海水で身を洗って風に当て、高い山の頂上で寝ているがいい」
うさぎは言われた通りにすると、塩が乾くにつれて、皮膚は風に吹き裂かれ、あまりの痛みに泣き伏していると、大国主がやってきました。
うさぎに涙のわけを問うと、
「わたしは隠岐(おき)の島のうさぎです。こちらへ渡ってこようと思ったのですが、その方法もなく困っていました。そこで海のワニに『お前たちの一族と、俺たちの一族でどっちが多いか比べよう。お前は仲間を気多の岬(さき)まで、一列に並んでくれ。俺がその上を踏んで数えるから』と誘いかけたのです。だまされたワニたちが、ずらりと一列に並んだ上を気持ちよく跳んでいたのですが、もう一歩で対岸の地だというその時に、我慢できずに叫びました。『や~い、だまされやがって』
その瞬間、最後尾のワニに捕まって、着ているものをことごとく剥がされてしまいました。おまけに、通りかかったあなたの兄弟たちの助言を、真に受けてやってみたらこのざまです」
大国主は、うさぎにこう教えました。
「ただちに河口へ行って、真水で体を洗いなさい。そして、川辺に咲くがまの花を敷いて寝転びなさい」
言われたとおりにすると、うさぎの体は元通りに回復しました。
そこでうさぎは、大国主にこう告げます。
「あなたの兄弟たちは、八上比売を妻にできません。あなたこそ比売にふさわしい方です」
その言葉通り、八上比売は大国主と結ばれることになり、うさぎは神となってまつられました。

マレーシアとインドネシアの昔話には、子鹿がワニをだまして川を渡った話があるそうで、共通して「知恵のある者は生き残る」という教訓がある…のかしら。それにしても昔話はうさぎが痛い目にちょこちょこ合うのでヒーッとなります…。

ちなみに鳥取県鳥取市の白兎(はくと)神社は「因幡の白うさぎ」の舞台となっている由緒ある古社です。神話にちなみ、皮膚病ややけどなどに効く神社として信仰されています。こまうさぎもいるのでぜひお出かけください。

白兎神社の絵馬

カチカチ山

昔あるところに、爺(じじ)と婆(ばば)がおりました。ある日、山のタヌキがしつこく爺の畑仕事をからかうので、怒った爺は鳥もちでタヌキを捕まえました。
爺がタヌキを縛って家に帰ると、婆は粉をついていました(料理の支度)。爺はタヌキを軒に吊るすと、今夜はタヌキ汁だと言い置いて、再び出かけます。
タヌキは婆に、手伝うからといって縄を解かせ、杵でつき殺してしまいます。さらに婆汁を作り、婆の皮を被って爺の帰りを待ちます。
やがて帰ってきた爺に婆汁を食わせ、タヌキは山に逃げました。すべてを知った爺が泣いていると、うさぎが現れ、仇討ちを誓います。
うさぎは山へ入り、タヌキと萱(かや)を刈ります。そして背負わせた萱に火打ち石でカチカチと火をつけました。タヌキが「何の音だ?」と尋ねると、「あれはカチカチ山のカチカチ鳥の声だ」と答えます。
やがて萱はボウボウと燃え上がります。またもタヌキが「何の音だ?」と尋ねると、うさぎは「ボウボウ山のボウボウ鳥の声だ」と答えます。
翌日うさぎは別のうさぎのふりをして、背中に大火傷を負ったタヌキの見舞いに訪れ、薬と称して唐辛子味噌を背中に塗りました。
また別の日も別のうさぎのふりをして、今度は魚捕りに誘います。自分は木の舟を作り、タヌキには泥船を作らせました。そしてふたりでこぎ出すと、やがて泥船は溶けて沈み、タヌキは溺れ死んでしまいます。

こちらも自分の身を助けるためには知恵が必要だという教訓が込められているようですね。

モンゴルの民話


うさぎの知恵

昔あるところに、年老いたウマとまだ幼い子ウマがおりました。2頭は遠いところへ売られることになったが、運ばれる途中で逃げ出しました。しかし、運悪く年老いたウマは力尽きてしまいます。そこで子ウマに、
「おれはもう長いことはないから、お前はひとりで行け。だが、くれぐれも知らない道を通るな。そして怪しいものに近寄ってはならない。特に、何か入っている袋を見ても、決して口を開けるなよ」
と言い聞かせました。子ウマは泣く泣くひとりで歩き始めたが、あんまり悲しかったせいか、いつの間にか知らない道へ迷い込んでいました。
ふと見ると、道端に真っ黒な物が置いてありました。近づいてみると、それは口を縄で縛ってある袋でした。中に何か入っているのか、ゴソゴソと動いていました。子ウマは中身が見たくなり、縄を解いてしまった。すると中から一匹のオオカミが飛び出しました。
「出してくれてありがとうよ。お礼にお前を食ってやる!」
その時、一羽のうさぎが現れました。
「オオカミさん、いったい何をしているんですか?」
「人間に捕まって袋詰めにされたのを、このウマが出してくれたんで、お礼にこいつを食おうというのさ」
するとうさぎは、疑り深そうな顔をしました。
「またまたご冗談を。あなたのように強いかたが、人間に捕まるなんて。もしそれが本当なら、私の命も差し上げます」
それを聞いたオオカミは、しめたとばかりに袋を示しました。
「本当だとも。俺はたった今、この袋から出てきたばかりなんだ」
うさぎはますます疑り深そうに言いました。
「こんな小さな袋に? まさか。入りっこないでしょう」
「そんなに疑うんなら、見せてやる」
オオカミはそう言って、袋の中に入りました。その瞬間、うさぎは急いで袋の口を縛ってしまいました。

スコットランドの民話

牛乳を飲んだうさぎ

ある夏のこと、よく晴れた日の午後に農家の妻が、雌ウシを1頭を野原に連れ出し、草を食べさせていました。しばらくしてウシの様子を見ると、ウシの足元に何かの影が寄り添っています。不審に思った妻は、夫と息子を呼びました。2人がウシに近寄ると、足元ではなんと大きなノウサギが立ち上がり、さかんに乳を飲んでいたのでした。

人間の気配に気づいたノウサギは、大慌てで逃げ出しましたが、親子は連れてきたイヌとともにその後を追います。するとうさぎは、村はずれの山小屋に飛び込みました。そこは、独り暮らしの老婆メイベルの家でした。中に入ると、彼女は息も荒い状態で横たわり、着ている物は泥だらけでした。ノウサギの正体はメイベルが変身した姿だったのです。

「メイベルは魔女だ」という噂はたちまち村中に広がります。気の毒な彼女は、ほどなく捕まって火あぶりにされてしまいました。

このお話しは教訓はあるんでしょうかね…?

世界中にうさぎにまつわる民話があって、うさぎのとらえ方もシニカルなものから賢い知恵を持つもの、といろいろです。ご興味を持たれた方は市販の書物には非常に少ないですが、国会図書館などで世界の民話とかうさぎの民話といったフレーズで調べてみてくださいね。

参考文献:『百分の一科事典・ウサギ』(小学館文庫)